グローバル調査レポート 第9回 「グローバル人事トレンド2014」調査結果からの考察 出遅れた日本企業の人事部はグローバル人事課題にどう対峙すべきか
経営と人事の相関性がますます高まる今日、日本企業のグローバル展開においても、組織・人事課題にいかに戦略的に対処できるかが事業成長のカギを握る。こうした背景を踏まえデロイトトーマツコンサルティング組織・人事コンサルティングは、「グローバル人事トレンド2014」と題した調査を実施し、グローバルな視点から組織・人事動向を包括的に捉えることを試みた。そこから見えてきた日本企業の課題とは。
1.世界人事動向を包括的に調査
グローバルビジネス展開の加速、活発なM&A、イノベーションへの期待等、ビジネス環境が大きな転換期を迎えている昨今、グローバルな視点ではどのような組織・人事課題があるのか──その課題整理と解決の方向性を明らかにするため、デロイトの組織・人事コンサルティング部門は「グローバル人事トレンド2014」と題して調査を実施した。
本調査の特徴として、幅広い地域・国からの回答を集約し、分析したことが挙げられる。具体的には、世界94カ国、2532名のビジネスリーダー・人事部門メンバー(このうちアジアパシフィックで465名、日本からは103名)からの回答を得ることができた。これにより、世界的な最新動向を把握できたことに加えて、日本とグローバル、日本とアジアパシフィックといった対比で日本企業の人事が置かれている立場を把握することも可能となった。
本調査では、組織・人事領域を「リーダーシップと能力開発」、「人材獲得とエンゲージメント」、「変革と再構築」の3つのカテゴリーに分類し、計12領域のトレンドを調査した(図1)。その際、以下に掲げる10の重要な示唆が得られた。
①世界共通の最優先課題
グローバル全体の傾向として、次の4点が最優先課題と位置づけられる。
1点目は「グローバルに活躍できるリーダーの確保・育成」である。身につけておくべき情報や知識はこれまで以上の速さで進化しており、それに対応できるリーダーの育成が急務となっている。
2点目は「リテンション(人材の確保・引き留め)」だ。経営陣、ビジネスリーダー、人事部門が一体となって取り組むべき課題であり、企業はリテンション戦略を「人材を維持する」ことから「人材を魅了し、個人の持つ熱意を共有できる職場をつくる」ことへ切り替える必要がある。
3点目は「人事部門の専門性」。人事部門の位置づけは「人の管理」から「組織や個人の業績向上への貢献」に変わりつつある。この変遷は人事部門の組織再編、人事機能改革の必要性を意味している。
4点目は「採用戦略」。グローバル化に加えて、ソーシャルメディアの出現、既存のビジネススキルの陳腐化等により、採用戦略は大きく変わろうとしている。採用はマーケティングやブランディング的な要素に加えて、新しいコミュニケーションツールを用いた戦略的な取り組みになりつつある。