連載 調査データファイル 【第27回】 雇用・人事システムの構造改革 キャリア開発の今後②
ビジネスのスピードが早まり、リーダーシップを発揮する経営者の育成が不可欠となった。しかし、年功的な人材育成を進めてきた日本企業ではリーダーシップを発揮するトップダウン型の経営者育成は難しく、中間管理職と同じボトムアップ型の経営者しか育成できない。いま、経営者育成システムの改革期に差し掛かっている日本企業。フランス企業の例を交えながら、改革の方向性を見出していきたい。
1. 問題の多い日本企業の経営者育成システム
これまでの日本型経営システムは、キャリア開発の頂点に位置する経営トップを育成することに関しては、優れているとはいえない。日本企業の内部育成・内部昇進による人材育成システムは、中間管理職を育成するには大変優れたシステムであるが、経営者を育成するには、問題の多いシステムである。
問題は、あまりにも遅い昇進・選抜システムと経営トップの裁量権が大き過ぎることである。経営トップの裁量権が過大に設定されると、ワンマン経営者が誕生する余地を大きくするとともに、経営トップの暴走に対するチェックシステムが機能しない可能性が大きくなる。こうした日本型経営システムの欠陥によって経営危機に陥った企業は、百貨店のそごうを始めその数は実に多い。
また、年功制に基づいた内部育成、内部昇進による経営者の育成システムは、株主や社外重役によるチェック機能が慟かなければ、前例踏襲型の戦術家タイプの経営者が、量産されることになる。後継者を選び指名するのは、専ら社長の権限であるから、後継者は退任する社長の息のかかった人材が選ばれるケースが多い。
しかも、社長を退任しても、会社を去るわけではなく、会長や相談役として人事に強い影響力を行使し、後輩のやることに目を光らせる。それゆえ新社長は、前任者の経営路線を踏襲せざるを得なくなる。年功的な内部昇進による経営者の選抜方法を維持している限り、大胆な企業改革は困難である。
大胆な企業改革を推し進める新社長が誕生するのは、前任者の社長が見識者で、保身に走ることなくその必要を認識して人選するといった個人的資質に依拠するか、これまで経験したことのないような赤字決算を出し九時か、経営トップが違法行為に連座したといった企業不祥事が発覚し九時など、きわめて隕られた場合においてである。
しかし、それはあくまでも可能性であって、システムとして機能することが担保されているわけではない。経営トップの育成・選抜方法は、今後抜本的に改革していく必要がある。改革の方向としては、人材の早期育成、経営トップの人選を行う委員会の設置、経営のプロとしての適任者を社外も含めてより広く抜擢することなどが考えられる。