連載 セルフ・アサーション・トレーニング 【第4回】 人に操られない、人を操らない生き方のトレーニング 権利主張のアサーティプ行動
                                                                    自分がこの世の中に生まれ、生きていくということは、だれからも文句を言われることなく、保障されている権利だ。自分も相手もありのままの存在であることを保障するアサーション権を大事にするために、今回は権利主張のアサーティブ行動をトレーニングしていきたい。
はじめに
1970 年、心理学者のロバート.E.アルベルティとマイケル.L.イモンズの2人ぱYour Perfect Right" というI 冊の本を出版しました。これは、アメリカで大変な衝撃をもって迎えられました。なぜかというと、それまで神経症者の治療技法と認識されていたアサーション・トレーニングが健康な人の自己成長に役立つ理論と技法であることを伝えた最初の本だからでした。この本によって健康な人々にとってもアサーション・トレーニングが必要であることが広められたのです。
彼らが伝えた “Right” の背景には「基本的人権」の考え方があります。基本的人権とは、国際連合の第2回総会で批准された国際法であり、全文は30 条からなっています。例えば、宗教の自由、職業選択の自由、あるいは移住の自由などです。つまり、人間は生まれながらに何人からも侵すことのできない、揺るがしようのない権利というものを与えられて、この世に生まれてきているのだということを具体的な条文にまとめたものなのです。この基本的人権を基にして、アサーション権という概念を2人の心理学者が創っていったというわけです。
“Your Perfect Right" では、アサーション権として3つのことを述べております。アサーション権の第1番目は、「自分自身である権利」、第2番目は、「自分自身であることを表現する権利」、第3番目は、「以上のようにすることに無力感や罪悪感なしに満足する権利」です。以後、アサーション権という考え方は、さまざまなアサーション・トレーニングの研究者たちによって、より広められることになります。
今回のテーマは、「権利主張のアサ-テイブ行動」についてです。文献上で確認できるものでは2種類のアサーション権があります。
1つは、M.J. スミスがいっている10 項目のアサーション権です。もう1つは、L.Z.ブルーム、K.コバーン、L パールマンがまとめた10 項目のアサーション権です。ここでは後者が述べているアサーション権について紹介することにします。
ところで、権利主張のアサーテイブ行動は、対人コミュニケーションの4つの場面で捉えるとそれぞれに課題が見えてきます。
1つ目は自分とのコミュニケーションであり、対自的コミュニケーションです。ここでの課題は自己決定です。自己決定とは、人の意見を参考とするが人生の大事な課題については自分で決めるというスタンスにあるということです。
2つ目は他人とのコミュニケーションであり、対他的コミュニケーションです。課題は他者尊重です。他者尊重というのは、例えば、地位や学歴、家柄等という人の属性によって判断するのではなく、その大の存在そのものを認めていくということです。
3つ目は集団場面でのコミュニケーションであり、対集団的コミュニケーションです。課題は共同体感覚です。共同体感覚というのは、相手の立場に身を置いて自分もその人の立場を了解一理解するというスタンスのことです。
4つ目は家族とのコミュニケーション、対家族内コミュニケーションです。課題は保護です。保護というのは、自分の危機管理という意味があると同時に。相手をも守るということでもあります。この4つの課題をエクササイズによって学習し、アサーション権を自覚することで人生に活かすことができるようになれるはずです。
エクササイズ1 アサーション権を活かす
それでは、アサーション権を知ることから始め、日常生活で活用できるようになりましょうレ
(1)目的
アサーション権の存在を知ると同時にそれを自分の人生に活かすことです。
(2 )理論的背景
人間性心理学にあります。1970 年、人間性心理学が登場したことにより、人間の主体性に焦点が当てられるようになり、このアサーション権が導入されたわけです。

(3 )手続き
それでは、図表1のアサーション権宣言リストを読み、自分がどの程度アサーション権を知っているのかチェックをしてください。知っているものに丸をつけてみましょう。
当初、このアサーション権宣言は、それまでにない社会進出を目指す女性たちを対象としたものでありました。けれども、この宣言は女性だけではなく人間すべてに当てはまる内容だといえます。皆さんはこのリストを目にして、どのように思いましたでしょうか。自分が初めて気づいたアサーション権の内容もあるでしょうし、既に気づいているものや活用している内容もあるはずです。こういったアサーション権を知り、そして人生に活かしていくことで、自分には生きる価値と尊厳があるのだということを自覚できましたら、だれにも遠慮することなく。自分の人生を生きられることでしょう。
エクササイズ2 ストロークの授受を行う
次に、他者尊重のエクササイズに入ります。テーマはストロークの授受をすることです。
(1)目的
ストロークを実際に活用することです。

