連載 起業するイノベーターたち [第8回] 「ボーダレス・クリエイティブ」なモノづくり
![連載 起業するイノベーターたち [第8回]
「ボーダレス・クリエイティブ」なモノづくり](/wp-content/uploads/temp_image/5336/1551655975.png)
中小・ベンチャー企業の創業者、後継者の実話から変革への要点を探る
ライフスタイル全般にわたる商品の製造・販売を手がけるイデアインターナショナル。生産、物流機能を自前では一切持たず、外部のクリエーターや海外のデザイナーとコラボレートしながら、独創的な商品開発と販売に特化するという経営姿勢を堅持している。これは橋本雅治社長が長年培ってきたモノづくりに対するトータル・アイデンティティーに支えられるものであり、マネジメントカに活路を見出したベンチャー企業といえる。
若者に人気の商品がずらり
今日のボーダーレス社会では、系列取引といった古い慣習は意味をなさず、強みを持った企業同士がプロジェクトごとに離合集散を繰り返す競争が展開されている。そこで脚光を浴びているのが、ファブレス(Fabless) 企業である。イデアインターナショナルはファブレスで躍進中のベンチャーの代表的な企業である。
ファブレスとは、工場を持だない身軽な製造業のことである。というと、工場の海外移転= 産業の空洞化をイメージする人もいるであろう。しかし同社は一般にイメージするような海外移転を目的としたファブレスとは内容が著しく違う。
時計、電卓、扇風機、トースター、エスプレッソマシン、調味料入れに箸ケース――。デパートの売り場の話ではない。すべてがライフスタイル商品を手がける、イデアインターナショナルの製造品目だ。最大の売りは優れたデザイン性にあるが、品質や価格面でも大手メーカーの製品を圧倒している。
例えばデザインの斬新さが際立つエスプレッソマシンの場合、価格は他社の半値程度の1 万5,000 円。それで本場イタリアの味が自宅で手軽に楽しめるとあって、若い人たちの間で人気を呼んでいる。もちろん、国産品のなかでは抜群の販売実績を誇る。
なぜ、そんなことが可能なのか。「簡単にいえば、高付加価値な商品を創造し、それをファブレスによる軽量経営によって低コストで製造。さらにできた商品を適正価格で売るというものです。お客さんは商品価値と価格の差に納得して購入していただけるし、当社の方は製造コストと販売価格との差で利益を得ることができます」と橋本雅治社長はさらりと言ってのける。橋本氏は、まだ40 代前半の若さである。それでいて、大学卒業後は、販売会社やメーカー、家業の結婚式場など、さまざまな業種や職種を経験してきた。しかも、常にそれぞれの立場で物事を真剣に考え、汗を流してきたという。
橋本氏は「モノをつくる立場、コンセプトを見つけて商品を提案する立場の両方のポジションがわかってこそ、初めて良い商品がつくれる」という。片方の立場からだと「独りよがりの商品になりがちだ」とも。つまり、イデアインターナショナルは、橋本氏がビジネス経験のなかで培ったモノづくりに必要なマネジメントカと持ち前のセンスを存分に発揮するための舞台として設立された会社なのである。
生産も物流も固定せず
モノづくりをファブレスで行うのは、工場という固定費がいらなくなるからである。委託工場は国内のほか、中国、台湾、デンマーク、ドイツなど、まさにボーダーレス。しかも、工場は固定せず、製品ごとに契約を結ぶ。