WAVE カルチュア・コンビニエンス・クラブ ビジネスの源は感性。自ら判断し、 動く人材へ、新入社員を磨き上げる

レンタルビデオに市民権を与え、生活の一部としですっかり定着させたTSUTAYA。この一大チェーン店を運営するのは、エンターテインメント業界で一人勝ちのカルチュア・コンビニエンス・クラブだ。その新入社員研修は、優秀な人材を鍛えに鍛える「感性を磨く」研修だという。
“生活提案業”にとって感性こそが成功の鍵
映像ソフトのレンタル市場でダントツのシェアを占める「TSUTAYA」。会員数は1,500 万人、店舗数は1,000 店を突破した。 TSUTAYA をフランチャイズ展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC) は、1983 年創業。2000 年4 月には株式を公開。多くのエンターテインメント産業が苦戦するのを後目に、いま、まさに上り調子の企業である。興味深いのはその新入社員研修で、「感性を磨くプログラム」を実施していることだ。一体なぜ、新入社員に対して「感性」なのだろうか?
「『わが社はレンタルビデオ店でも、CD ショップでも、ゲームソフト店でもない。世界一の企画会社だ』というのが、社長・増田宗昭の考えです」と、人事面を預かる執行役員・桐山大介氏は語る。近年、主に小売業の分野で、自社を「生活提案業」と表現する企業を目にするようになった。無印良品、東急ハンズ、そしてCCC も同様である。単に商品を売る「小売業」の枠を越え、消費者に向けて「ライフスタイル」という大きな枠組みから働きかける。そのことで、自社のカテゴリーを拡大しようとする…… 「生活提案業」という言葉には、そんな姿勢が示されている。
増田社長の言う「世界一の企画会社」という表現は、「生活提案剿という姿勢と一軸上にある。例えばT SUTAYA のネット店舗ともいえる「TSUTAYA online 」は、会員数400 万人。休眠会員を再来店させ、売り上げアップに大きく貢献している。これは、消費者により能動的に働きかけることで、新たな市場を創造していくという戦略が見事に“当たった”結果だといえる。
TSUTAYA online の成功は、消費者がどんなものを欲し、何に興味を示しているのか、そういった動向を敏感にキャッチする[感性] こそが、成功の鍵であることを証明した。
「いろいろな歌手やグループが出てきても、名前どころか顔の区別もつかない。そんな“年寄り”より、まさに彼らと同年代の若い世代のほうが、消費者のことを理解できるに決まっている」と桐山氏。つまり新入社員は、CCCのなかで消費者に最も近い場所にいる人材であり、だからこそ鍛えて活かせ…… ということなのだろう。
ビジネスに必要な感性とは

だが勘違いしてはならないのは、ここでいう感性とは、単に“流行に敏感”といったことだけを意味するのではない点である。その中身について、桐山氏はいくつかのシーンをあげながら説明した。
「店というのは面白いもので、膨大なデータを基に店をつくっても、魅力的な店にはならない。統計的資料や地域的特性をコンピューターで割り出し、ある程度の“ひな形”をわれわれは提出していますが、それをそのままなぞっただけでは、ダメなのです。そこで、何か違うのか、どこをどう変えるのか。店に入った瞬間に、『これは違うだろう』『何か、しっくりこない』といったことを感じる力。例えば“この店ならフロア真ん中の吹き抜けに、トーンとオブジェやポスターを飾った方がいい”・……そう感じる心や判断力。そんな感性が店づくりには必要なのです」
さらに大切なのは、「人間に対する感性」だという。「相手のことをおもんぱかったり、感じ嗷る気持ち。そういった『人への感性』は、実は『市場への感性』と同じものだからです」と、人事グループ育成・評価チームリーダーの永井敦氏が続いて説明する。
「CCCの主要業務はフランチャイズ経営です。つまり加盟企業さまを募り、スーパーバイザーとして適切なアドバイスや改善案を提案して利益を出していく。そこで必要なのは、コミュニケーション能力、ジャッジメント能力、そしてマネジメント能力。これらの基盤となるのは、人に対する感性であり、同時に市場への感性です」(永井氏)