連載 人事制度解体新書 [第11回] ソフトウェア業界は、ヒトの「価値」がすべて。 手間隙とカネをかけて 「専門性の向上」を実現していく
![連載 人事制度解体新書 [第11回]
ソフトウェア業界は、ヒトの「価値」がすべて。
手間隙とカネをかけて
「専門性の向上」を実現していく](/wp-content/uploads/temp_image/5331/1551374632.png)
ソフトウエア業界は、その技術やスキルが日進月歩の勢いで変化していく。それと同時に、国内の同業者だけではなく、中国やインドなどの海外企業との競争も激しさを増している。それを勝ち抜くためには、エンジニアを中心としたヒトの創り出す「価値」を上げていくしかない、とアクシスソフトは言い切っている。その人材育成と活用の仕組みを、経営トップ自らが語ってくれた。
ヒトの「価値」を売るビジネスだから、メリハリのある処遇を行う

アクシスソフトのホームページを見ると、「社長からのメッセージ」ということで、以下のような“くだり”が記してある。
『AXISSOFT は真にプロフェショナルな技術者集団として、少数精鋭主義を貫きます。また、1人ひとりの創造力と実行力を大事にします。そのうえで、会社全体のベクトルを統一するためにAXISSOFT バリューを大事にし、そのなかで自分の技術力、剔造力を高めていきたい技術者にとって、最高の仲間のいる会社だと自負しています。特徴のある人たちが集まり、世界をターゲットとしたソフトウエア集団として面白く、付加価値の高いビジネスを一緒に創造していきたいと考えています』
「ソフトウエア業界は、人材がすべてですから。そのためにも、社員1 人ひとりが常に顧客の満足度やそのニーズを最大化することを念頭に置かなくてはなりません。そのうえで、最新の高度なテクノロジーを提案し、それを駆使することによって創造性の高い仕事を行うことを心掛けています」と、剔業者であるCEO(最高経営責任者)大塚裕章氏の「想い」を語ってくれたのがC00 (最高執行責任者) を担う登坂忍氏である。それは、図表1 に示した「AXISSOFT Seven Value 」にはっきりと見ることができる。
事実、創業から十数年を経た同社だが、当初から「付加価値」のある人材を剔出することに力を注いできた。例えば、1998 年に導入した「年俸制」が代表的なものだろう。同じ年齢であっても、そのヒトの持つ能力のいかんによって成果・業績の差は、明らかに違ってくる。ソフトウエア業界ならなおさらだ。数倍、いや数十倍もの差が出てくるのではないか。そうした考え方を、給与に反映していかなくては、働く者のやる気は出てこない。しかし、同社の凄いところは、新入社員から「年俸制」を適用していること。もちろん、最初のころは劇的な差は生じないが、働く側の意識のありようとして大きく違ってくるのはいうまでもない。
社外からヘッドハンティングされるような人材を育てたい

その年俸制を支える「評価」の仕組みだが、基本的なフレームは図表2にある通り。毎年1回、自分の目標を考え、それを上司との話し合いで決め、前年度の実績(技術力、専門知識、顧客満足度、コスト意識など)と当年度の年俸を上司および役員との話し合いのうえで決定するというMBO を実施している。「成果」に対する評価・査定は、本人・社員相互間・上司・役員・顧客というさまざまな観点から行っている。また、年に2回の個別面接によって、社員は自分の仕事についての意見や考えていることを上司に直接伝えることができる。そこで上司は、部下にどういう目標を持って欲しいか、どうしたらレベルアップが図れるかアドバイスを行う。
基本的に年俸制の評価は、「コンピテンシー(行動特性)」と「目標管理(MBO)」、そして「プロジェクトの評価」で決まる。ちなみにコンピテンシーは職種別に3項目、全社共通3項目の合計6項目を設定している。そして、等級別に求められるコンピテンシー水準の充足レベルに応じて、5段階で評価していく。図表3にその概要を示しておいた。
このような方法によって、実力と成果に準じた給与を得ることと、高度な技術力と顧客意識およびコスト意識を兼ね備えた人物を育成することを狙っているのだ。
「いわゆる従来型の手当に相当する部分を毎年減らしていき、制度的には年俸制は3年で完成させました。また、残した手当についてもマイクロソフト、オラクルなどIT 系でグローバルに通じる資格にシフトしていくなど、視野をグローバルスタンダードに置くようにしています。それは何よりも、当社をスペシャリストの集団としたかったからにほかなりません。それこそ、社外から引き抜きされるような人材が数多くいる会社を実現できたらと。そのためには、アクシス自体も優秀な人材を引き止め得る会社でなくてはなりません。だから、従業員がぜひともアクシスにいて働きたいと思うような処遇を実現していくことが、われわれの役割だと思っています。でも、ヘッドハンティングされるレベルの人材はまだまだ少ないですけれど(笑)」(登坂氏)
そんなことはない、と思った。それは、同社の評価システムのありようもあるが、取材前に何人か偶然会ったエンジニアの立ち居振る舞いが、私の予想とは違ったからだにれについては、後ほど述べることにする)。