ケース2 楽天 コミュニケーション能力と 会社に対するしっかりした 認識を持った人材を採用

2003 年、ビジネスモデルの変更に伴い、営業職(EC コンサルタント)を中心とする大量の中途採用を行った楽天。採用に当たって重視する点はコミュニケーション能力。それはプロジェクト遂行のためだけではなく、出店者と楽天をウィンーウィンの関係に導く目標共有を進めるためにも必須のものなのだ。
出店者とウィンーウィンの関係構築を目指すEC コンサルタントの大量採用
楽天は2003 年実績で160 人の大量採用を行い、業界内外で話題を呼んだ。急成長を遂げたベンチャー企業の「積極経営」は、「人材の強化」によって、さらにパワーアップしようとしている。
「160 人の採用の内訳は、いわゆる営業職であるEC コンサルタント、エンジニア、そして管理部門スタッフです。なかでも特に力を入れて採用したのは、楽天のクライアントである出店者様の売り上げ向上をコンサルティングするEC コンサルタントでした。楽天では2002 年から出店契約の内容が変わりましたので、出店者様と楽天がウィンーウィンの関係を構築できるコンサルタントの役割が非常に重要になっているのです」
そう語るのはぴーぷる部部長の尾上竜一執行役員である。ぴーぷる部という名称はあまり一般的になじみがないが、人事部と、通常総務部の業務と思われるものも一部含めた業務を担当しているセクションである。
出店者と楽天がウィンーウィンとなる出店条件の変更とは、いったい何だろうか。
「楽天への出店形式は“楽天スタンダード”、“楽天ライト”、“楽天プレミアムライト”の3タイプがありますが、なかでも契約数が多い“楽天スタンダード”は、従来は月額ごとの基本出店料(固定費制) として5万円をお支払いいただくものでした。そして2002 年からは、新たに“超過料金システム”として従量制の課金を採用しました。このシステムは、日100 万円を超える売り上げがある出店者様はその売上金額に応じて、楽天にシステム利用料をお支払いいただくものです」(ぴーぷる部採用リーダー
中楯健氏)
新システムの採用によって、店の売り上げが上昇するごとに、システム利用料収入が楽天に計上されることになった。店の売上金額が100 万円までの場合は固定の基本出店料だけだが、100 万1円以上200 万円以下、200 万1円以上300 万円以下、300 万1円以上500 万円以下といった具合に、店の月額売り上げが上がるたびに、システム利用料が楽天に支払われる仕組みである。
出店者の売り上げが増大すれば、楽天の収益も増加する。そして楽天は、その出店者から得た新たな資金を、安定的なシステム構築・運用や集客のための積極的なマーケティング施策へ振り向け、さらに出店者の売り上げを拡大する。出店者とのウィンーウィンの関係構築が期される背景には、そうした“利益構造の変化”があったのである。
現在、楽天への出店数は約1万4,000店に達しており、そのうち約半数の7,500店が物販を目的に「楽天市場」に出店している。
「EC コンサルタントは出店者様の取扱商品によってファッション事業部、IT 事業部、グルメ事業部、ライフ事業部など、10 の事業部に分かれて所属しています。ただし所属部署は長期間固定しているわけではありませんので、事業部問の異動はかなりあります」(中楯氏)