連載 ユニオンルネサンス 第7回 Part 1 全日本自治団体労働組合( 自治労) 中央執行委員長 人見一夫氏に聞く 常に原点を忘れず活動し、 労働組合の再生を図る

全国の自治体および公共サービスで働く人々で構成される全日本自治団体労働組合(自治労)は、日本最大の産別労働組合として日本の労働組合運動をリードしてきた。現在、構造改革論議が進むなかで、地方行政や公務員制度改革がクローズアップされているが、労働組合としての自治労はどのように対応しようとしているのか。今回は、人見一夫・中央執行委員長にご登場いただき、労働組合運動についての現状認識とあるべき方向性について話を伺った。
多様化・個別化時代に対する明快な解なき現在
現在、労働組合の求心力の低下が指摘されています。また、雇用・賃金・労働条件についても多様化・個別化が進んでおり、労働組合を取り巻く環境は以前とは随分は変わってきたように思われますが。
人見
そうですね。私か公務員として勤め始めた35 年ほど前は、賃金・労働条件も十分ではなく、週休2日制をどうするといった労働条件の問題が常にクローズアップされてきたように思います。しかし今日では、権利を行使できる環境か否かはともかくとして、一定の水準にまで賃金や労働条件が達してきたことは事実であり、それに伴って組合員の意識・ニーズの多様化が進んでいるのが実情です。現在、労働組合運動に閉塞感があるとすれば、そうした多様化・個別化時代に対応できる明快な解を提示できていないことが要因で、その意味では大きな転換期に差し掛かっていると考えます。
同時に、われわれの世界、公務員の問題でいえば、小泉構造改革のなかで公共サービスが次々と民営化されており、そうした流れにどのように対していくかが問われています。行政や公務員制度にはさまざまな問題が存在するのは事実としても、公共サービスをすべて民営化してしまえというのは乱暴な論理であり、公共サービスを担う労働者で組織される自治労の責任・役割は非常に大きいと考えています。
確かに内容の検証もなく、「官から民へ_ という叺渤が強まっていることには危うさを感じますね、しかしその一方で、国民の意識に公務員に対する反発のようななのがあるのは紛れもない事実だと忌われます。そうした状況を対してはどのように取り徽まれていくのでしょうか。
人見
公共サービスの民営化は、世界的にも共通した風潮だといえます、例えばアジアにおいては、フランスの水道事業者が参入することで、必要最低限の飲料水さえ有料化されているわけですが、人々が生きるうえで最低限必要なものまでを民営化してしまうのは問題です。公共には公共の、民間には民間のサービスのあり方があるわけで、一人ひとりの暮らしを大切にするためにも、ユニバーサルサービスを充実させていくことが必要でしょう。
自治労が加盟する国際組織、PSI(国際公務労連)では、2002 年度から「質の高い公共サービスのためのグローバルキャンペーン」を行っていますが、その基本になっている考え方は「公共サービスは人権である」というもの。人々が生きていくうえで最低限必要なものは、社会の責任において確保・提供されることが重要で、自治労としても、自らの社会的役割・責任を果たす観点から、良質で安価な公共サービスを提供していきたいと考えています。