連載 調査データファイル 雇用・人事システムの構造改革 第42回 成果主義を問い直す②
過去10年間と比較して賃金水準はどう変化しているのだろうか。統計調査によると、賃金水準は低下傾向にあり、その過程で賃金の分散も拡大してきている。しかしながら、こうした変化は成果主義賃金の浸透によるのではなく、非正規社員の増加が原因であることがわかる。
1. 年収の変化
成果主義賃金の浸透に伴って、「年収300 万円の生活」といった本が売れていることが示すように賃金が低下してきたような実感を抱くO 実態はどうなっているのであろうか。厚生労働省「毎月勤労統計調査」によれば、時間当たり実質賃金水準の推移を見ると、長期的な上昇を続けた後、1997 年以降下落傾向となっている。 97年秋には山一證券の経営危機が顕在化して金融危機が現実味を帯び、その後失業率が急上昇するとともに大企業も含めてリストラが本格化している。このころから産業界では、成果主義賃金改革を実施する企業が相次いで現れている。
図表1は、1992 年と2002 年の年収階級別雇用者割合の変化を比較したものであるが、最近10 年間で150 万円未満層が3.6 ポイント上昇、150 ~299 万円が2.6 ポイント低下、300 ~699 万円が2.8ポイント低下、700 ~999 万円がL6ポイント上昇、1,000 万円以上が0.1 ポイント低下となっている。
平均的な年収の推移を見る限り、年収150 ~699 万円層がかなり大幅に減少し、その減少分の多くは150 万円以下層に移行し、他方で一部は700 ~999 万円層に移行したものと思われる。つまり、最近10 年間における年収階級別に見た雇用者の変化は、中所得層の分解という形で顕在化している。