連載 調査データファイル 雇用・人事システムの構造改革 第48 回 人材育成② 専門職の報酬制度

毎年国税庁が発表している高額納税者ランキング。今年、トップに立ったのはサラリーマンだった。その背景には、成果主義賃金の頂点ともいえる高額成功報酬の存在があげられる。しかし、高額成功報酬が導入されているのはごく一部の企業に過ぎない。専門職の報酬制度の現状を追った。
1. 高額給与所得者の登場
高額納税者が発表されたが、トップに躍り出たのは土地長者でもベンチャー企業経営者でもない、投資顧問会社の運用部長というサラリーマンであった。納税額は約37億円という額であり、推定所得は約100 億円に上る。平均的なサラリーマンが、大学卒業直後から定年まで働いて得る生涯給与総額は、2 ~ 3 億円であるといわれている。ジャンボ宝くじの一等賞金も、生涯所得並みの3 億円である。これらと比較すると、この報酬額はけた外れであり、もはや嫉妬するどころか賞賛に値するものである。
今回発表された高額納税者上位100人の内訳をみると、土地長者は5 人となり、バブル経済の頃と様変わりしている。これに対して、主な所得が給与だったのは26人に達し、このうち給与所得となるストックオプションを行使してランクインしたのは3 人ということであった。なお、投資顧問会社や証券会社といった金融資産の運用に携わる世界から6人がランクインしている。
こうしたけた外れの報酬を、役員ではなく社員に支給するといったことは、これまでの企業社会では考えられないことである。これまでの日本企業の報酬制度は、年功賃金といわれるものであり、製造業を中心に形成・定着してきた。熟練形成、チームワークなどを重視する製造業では、勤続年数に比例して賃金が右肩上がりに上がる年功賃金はそれなりに合理性を持っていたし、今でも生産現場では合理性を維持している。
これに対して、投資顧問会社などの金融業では、チームワークよりも個人の能力が強く問われる専門職の世界であり、情報収集と企業判定力、決断力などが求められる。高額納税者のトップに躍り出たサラリーマンも年金ファンドの運用者であり、無名に近い新興企業の情報を丹念に収集し、将来性のある企業を発掘しては順次投資していくといった投資行動により、1999 年4月の運用開始以降着実に成果を上げ、2003年度には102%という高利回りを達成、元本は6年間で6.4倍に増大した計算になったそうだ。