連載 実践シャドーコーチング 第3 回 フィードバック面談での対応(1)

本企画は、読者と一緒にシャドーコーチングをライブで体感するコーナー。前回、最後の行動目標の設定に当たり一悶着があったものの、最終的に井戸川氏が前向きなチャレンジを決意してくれたことで、何とか次のステップへと移ることができた。実践編の2回目はその進捗状況をチェックするとともに、具体的に井戸川氏の行動がどう変わったのか、部下に対してのフィードバック面接を通して見ていくことにしよう。

【クライアント】
井戸川寿義氏:某中堅メーカーの総務部人事グループのグループリーダー(課長職)。「まじめ」を絵に描いた実直な人物。部下は二人(男性一人、女性一人)。44 歳既婚、子供二人。
「行動目標」を設定したものの、急な部下の異動、体調不良と予期せぬ出来事が

今回の実践編では、井戸川氏の部下2人との面談場面に同席させてもらい、そこで取られた行動に対して私がフィードバックとアドバイスを行っていくわけだが、ここで早くも難題が出てきた。実は、井戸川氏の片腕として活躍していた男性部下が急きょ、異動してしまうことになったのだ。残るのは、昨年中途採用で入ってきたばかりの女性社員だけ。しかも、彼女はまだ1年間を通して人事実務を経験したことがない。井戸川氏がいくら人事のスペシャリストだとはいえ、例えば、彼女が担当する人事ソフトを使ったPC 作業の実務にまで詳しいわけではない。

加えて、ここにきての井戸川氏の体調がよくない。前回、「行動目標」(図表1)を設定してもらった後、39度の熱を出して、2~3週間もの間体調不良に陥ってしまった。予想しない出来事が続き、正直、この先行きが心配だ。なおこの間、井戸川氏とのメールのやり取りを何度か行ったが、その内容の一部を図表2に示しておいたので参考にしてほしい。

「前回掲げた目標について、忘れることはありませんでした。特に、気持ちを大切にするという点を、常に意識として持っていました。眉間にしわを寄せないで穏やかな雰囲気を出そうとか、積極的に話しかけるということを心がけたつもりです。ただ、体調があまりよくなかったので、笑顔を振りまくまでにはいきませんでしたね」
以前にも指摘したことだが、これまで井戸川氏に「話しかけないでオーラ」
が出ていたのは、多分に仕事に集中していたからのことだった。そういう時には、周囲の冗談には反応できないし、何より聞こえない。もちろん、決して無視しているというわけではない。ただ井戸川氏は私との話し合いのなかで、このままではいけないと感じてくれた。少なくとも、これでは状況は何も改善されないと。やはり、周囲との円滑なコミュニケーションを構築するためにも、それなりの雰囲気をつくることが必要だと思ったわけである。