連載 サービス品質・業務品質向上のための教育① サービス品質・業務品質を見直す
お客様の満足を獲得するためには、サービス品質の向上が欠かせない。
業種ごとに必要なサービスは異なるだろうが、その根幹には共通する点も多い。そこで、サービス品質向上教育の必要性と着眼点を今号より4回連載で提示。
第1回では、お客様にとってのサービスとは何かを考え、サービスの根幹に必要な考え方をみていく。
1. 私たちの常識は、世の中の非常識
「私たちの常識は、世の中の非常識」という、非常に意味深い言葉がある。筆者もいろいろな業界のコンサルティング支援や教育を通じて、よく耳にしてきた。振り返ってみると、規制で守られてきた通信・金融・電力業界などで、よく聞いた言葉である。
現実として規制に守られてきた業界では、この問題意識を解決していくために、企業の体質転換など、さまざまな取組みが行われている。しかし、規制で守られてきた業界だけのことであろうか。もう少し幅広く考えてみると、どの業界でも、ある意味では共通にあてはまる言葉としてとらえることもできる。今、「世の中の常識」に向けて「私たちの常識」を変えていき、お客様の立場からみたサービス品質や業務品質の再構築が求められている。
これまでのような、理念やスローガンだけを旗揚げしたサービス向上ではなく、社員の意識改革と業務改革がセットとなった、サービス再構築が必要となってきている。
2. 保険会社の不払いが意味するもの
先日、保険会社の不払調査の中間結果が出た。「まさか」に備え安心のために加入している保険で、「特約」という手厚い保障が機能していない。つまり、すべて支払われていないことが、損害保険会社に続いて、生命保険会社でも明らかになった。
昨年、損害保険業界で、自動車保険など不払い問題が大きくクローズアップされた。今年は生命保険業界での、保険金や給付金の不払い問題が話題になっている。これは、「保険金の支払いは、まず契約者の請求ありき」という保険業界の常識だけで、今後通用するのかを意味している。
この問題は一言で言えば、「保険会社はお客様に払える保険金を案内せず、またお客様も受け取れる保険金に気づかずに請求していなかった」のである。そもそも、保険商品とは、お客様が万が一の時に支払われるという頼りになるサービス。それが支払われていなかったとなれば、大きな信用を失う。
不払いの内容としては、三大疾病、通院など主契約に上乗せする、いわゆる「特約」に関する不払いが多かった。契約者から保険金の請求があったにもかかわらず、事務作業のミスなどで、支払いが不足していたケースである。
たとえば、保険会社は入院給付金を払ったが、診断書の手術の記載を見落とし、手術給付金を払わなかったなどは典型的なケースといえる。三大疾病特約や通院特約に共通することは、契約者が加入している保険で受け取れる保険金をすべて覚えていないため、生命保険会社へ請求することを忘れていることにある。
生命保険商品は、死亡保障や医療保険の主契約に、保障を上乗せする「特約」が加わる構成となっており、保険金の種類もさまざまである。契約者の中には、1通の請求書で、すべての保険金をもらう手続きが済むと勘違いをしている人も多い。しかし、三大疾病特約などは、保険金の種類ごとに請求する必要がある。
筆者も正直言って、自分の保険内容を、保険証券を見ないと覚えていない。さらに言うと、保険証券を見ても、半分ぐらいしか理解していないのが現実である。読者の中で、保険業界の方々を除いて、すべてを理解している人はいるだろうか。このほかにも、失効した保険契約を解約すると戻ってくる失効返戻金や、保険金の支払いが遅れた場合の遅延利息金の支払いモレなどもあった。
原因はいくつか考えられる。