調査レポート「2007 年度(第29 回)当面する企業経営課題に関する調査」から 「人材強化」が最重要課題に浮上! 持続的成長を実現する施策とは
社団法人日本能率協会(JMA)では、産業界における企業の戦略立案や経営課題解決に役立つ情報を提供するために、1979 年より毎年、日本企業の経営課題に関する調査を実施している。
今年も2007 年6 月から7 月にかけて、主要企業7000 社の経営者を対象に調査を実施し、848 社から回答を得た。本稿では、今回の調査結果のうち、特に人材育成に関連する部分について報告する。
「収益性向上」を上回り「人材強化」が最重要課題に
本調査においては、企業が当面する重要課題について調査を行っている。図表1の通り、2007 年度の課題認識として、第1 位は「収益性向上」であるものの、「人材強化(採用・育成・多様化)」が昨年の第3位(35.0 %)から第2位(40.0 %)となり、企業の重視度がますます高まっているという結果となった。さらに、3年後(2010年頃)の課題認識をみると、「人材強化」が「収益性向上」を上回り、最重要課題として位置づけられている。「人材強化」の重視度は、この3年間で上昇傾向にあったが、第1 位となったのは1979年に本調査を開始して以来、初めてのことである。
このように、企業の経営課題認識として「人材強化」の重視度が高まっているという結果となったが、背景として、産業界が一時期の厳しい局面を乗り越え、景気が回復・成長基調にある中で、改めて人材に対して重点的に投資を行う環境が整ってきたことがあげられる。それと同時に、社員や組織を取り巻く現象として、若手層における離職率の高まり、職場における雇用形態の多様化、ミドル層にみられる疲弊感、IT化の一方での社内コミュニケーション不全、心の病の増加、団塊世代の退職に伴う技能・経験の伝承など、「人材」に関する課題や問題が一度に生じており、これらも「人材強化」の重視度が高まる要因となっているのではないかと思われる。
調査では「個々の社員が持つ能力や価値を十分に引き出せているか」についても聞いている。図表2の通り、「ほぼ引き出せていると感じる」企業は2.8%にとどまり、「ある程度は引き出せている」が60.0 %、「十分には引き出せていない」が35.4 %となり、多くの企業において、社員の能力を十分に引き出しきれていないと感じられているという結果となった。
以上、企業において「人材強化」が最重要課題となってきている反面、社員の能力を引き出しきれていないという状況が浮き彫りになった。「人材強化」に注力することができる環境となっている今こそ、個人の能力を引き出していくために何をなすべきかを考えていかなければならない。
以下では、「人材強化」に対して、企業において具体的にどのような取り組みが行われているのか、採用、育成、OJT、組織風土の把握といった視点から、詳しく調査結果を見ていきたい。