STRATEGY 自分の頭で考えられる 自律型人材の育成こそが生き残りのカギ

日本を代表する電子部品メーカーの1 つ、TDK では、昨今の経済環境の変化に対応できる「自律型人材」の育成を戦略的人材育成の根幹に据え、力を入れている。その育成は一朝一夕にできるものではないが、同社では新人の頃から“自分の頭で考える”ことを徹底し、成長のベースとなる自由な職場風土を維持している。TDK で人材戦略の陣頭指揮を執る、執行役員人事教育部長の米山氏に、戦略的人材育成の基本的な考え方と、そのために不可欠な条件などについて聞いた。
変化の激しい時代に指示待ち人間は不要
2008 年暮れに世界を駆け巡った金融資本主義の破綻によるリセッション(景気後退)は、大方の企業に「どうやって生き残りを図るか」という究極の課題を突き付けたに違いない。TDK でも受注の落ち込みが激しかったため、3、4 月くらいから注文が徐々に増えてきた時は安堵したものだ。今はまだ数量的に十分な回復には至ってないが、生産設備の稼働率は概ね70%程度まで回復。中には80%以上の稼働率を回復した製品もあるが、先行きは依然として予断を許さない状況である。
こうした不況は、かつて経験したことがないほどというのは紛れもない事実。しかし、そうした予期せぬリセッションを除いても、近年、当社を取り巻く環境は大きく変わっている。
1 つめは、市場要求の変化、つまり顧客のニーズが多様化し、変化が非常に速くなっていること。2 つめは、グローバル化のさらなる進展を背景にして、TDK でもM&A によって多国籍のグループ会社が増加したことだ。
当社はこれまでも海外販売比率が8割と高かったが、ここ2、3 年でドイツ、中国、タイなどの企業がTDK グループに加わった。それはTDK と違う文化を持った企業がグループ内に一気に増え、グローバル化の傾向にさらに拍車がかかっていることを意味する。
こうした環境の変化に鑑みた時、その変化に対応できうる組織への改革と、人材の育成は急務である。 “指示待ち人間”や“マニュアル人間”は、高度成長期を支えてきたかもしれないが、もはや不要と言わねばなるまい。昨今は、トップマネジメントや組織のリーダーによる号令だけでは対応できない変化が日常茶飯に起きている。組織を構成するすべての人がアンテナを伸ばしてその変化を察知し、俊敏に対応する“迅速な行動力”と“的確な判断力”を持つことの必要性を、最近の危機で痛感させられた。
自分の頭で考える自律型人材育成が課題
当社の創業の原点はフェライトという電子材料にあるが、そうした素材や材料をもとに、地道にコツコツ開発を続けてきた。それだけに開発技術に長けた人材は豊富である。しかし、変化の激しい昨今の状況では、社会の要請や顧客ニーズの変化を敏感に感じ取り、それに沿って適切かつスピーディーな修正を現場で行っていかないと、的を大きく外れた方向の技術開発や商品開発を進めてしまいかねない。開発の例を挙げたが、こうした環境のもとでは 職種を問わず“目的意識を持って自分の頭で考える”人材が不可欠だろう。
当社ではこうした人材を「自律型人材」として、人材育成の根幹に据えている。具体的な自律型人材の定義は以下の通りだ。
•つねに目的意識を持って、自分の頭で考える
•困難な課題にもチャレンジする
•変化を察知して最適化を図る