特別企画 第22回 能力開発優秀企業賞 受賞企業 事例報告 日本ベーリンガーインゲルハイム 行動指針ベースの 人材育成施策が企業成長に貢献
日本能率協会は、優秀な能力開発活動を行った組織を表彰することにより、産業界に有効な能力開発のあり方を普及させることを目的に、1988年「能力開発優秀企業賞」を創設した。
第22回となる今回は、日立建機、東京海上日動システムズ、日本ベーリンガーインゲルハイムが受賞。そこで3号にわたり、この順序でその取り組みを紹介する。
日本ベーリンガーインゲルハイムは、“Value through Innovation”(革新による価値のクリエーション)という同社のビジョンを実現させるため社員が共有する道標“ Lead & Learn”に基づき、人財開発に取り組んだ。その努力が“ 業界の成長率1位3年連続達成”という大きな成果に、寄与していることは間違いなさそうだ。
心の支えである“Lead & Learn”
ベーリンガーインゲルハイム(以下、BI)は、1885年にドイツ・インゲルハイムで設立された製薬会社。世界50カ国約140の関連会社があり、グループ全体の従業員数は4 万1000名を超える。
日本市場への進出は1955年で、日本法人は1961年に設立された。現在、日本におけるベーリンガーインゲルハイムグループ企業(以下、BI ジャパン)はグローバルな研究開発の一翼を担う神戸医薬研究所や、国内向けの生産拠点である山形工場を擁し、呼吸器、循環器、中枢神経などの疾患領域で有用な医薬品を提供。2008年には、本社を兵庫から東京へ移している。
BI ジャパンが構築している人財開発制度において、重要な位置付けにあるのが“Lead & Learn”。これをドイツの本社が創案したのは、同社が大胆な経営改革を開始した翌年、2005年のことだ。
「 BIグループは、“Value through Innovation──革新による価値のクリエーション”を世界共通のビジョンとして掲げています。このビジョンを実現するための、道標となるのがLead &Learn です。Lead は“自らが確信していることに対して信念を持って行動し、他者も同様な行動を起こすよう導いていくこと”、Learn は“知識や着想を社内外から学び取り、従来のやり方をより新しい優れた方法へと練り上げていくこと”を意味しています」──そう語るのは、取締役人事本部長の大谷啓介氏だ。
“Lead & Learn”は、主に以下の4つの問いかけから成っている。
●率先して行動していますか?
●お互いのネットワークを作り上げていますか?
●共に成長していますか?
●結果が得られていますか?
この4 つの問いかけと、それらをより深く理解するための解説文は、和文・英文併記で1 冊の本にまとめられ、BIジャパンの全社員に配付されている。
そして、新たな行動を起こす時、何かの問題に直面した時、チームで戦略を決める時など、ビジネスのあらゆる局面で、BI の社員たちはこの4 つの問いを自分自身に、あるいは同僚やチームに問いかけながら、成功への正しい方向を選択するのだという。
この“Lead & Learn”を浸透させるため、国内での研修や会議の席はもちろん、グローバルな会合でもこの冊子を元にしたディスカッションが数多く行われている。こうした努力もあり、4 つの問いかけは、もはや全世界の社員にとって共通言語となっている。