連載 ベンチャー列伝 第19回 “人間至上主義”経営を 環境づくりと評価制度で実現
ライフスタイル関連雑貨の製造・販売や、空間デザインなどを行うイデアインターナショナル。「人間至上主義」を経営理念として掲げ、その実現のためにモチベーションを高める仕掛け──意義のある仕事をつくり、働く環境を整え、独自の基準による評価を行っている。
事業展開の基軸となる「人間至上主義」
イデアインターナショナルは、デザイン性の高いインテリア雑貨やオーガニック化粧品の製造・販売でよく知られている。その経営理念は「人間至上主義」。株主だけでなく、従業員や取引先、消費者など、会社のステークホルダーすべての幸せのために会社は存在しているという考え方である。「イデアインターナショナルという会社のために働くのではなく、会社を使って、より多くの価値を創造し、社会に貢献できることを喜びにする、ということなのです」と経営理念を語るのは代表取締役社長・橋本雅治氏。1995 年の創業以来、この経営理念を貫き通している。
この経営理念に基づいて展開される同社の事業は多岐にわたる。メーカーであり小売りであり、さらには空間のプロデュースやデザインも行うなど、さまざまな顔を持っている。
このような事業を生み出すうえで、橋本氏がこだわり続けてきたことは、「意義があるかどうか」だ。その意義とは、「人を幸せにするか」、そして「新しいかどうか」である。「当社の存在価値というのは、オンリーワンであること。他社ができないことをやるからこそ存在価値があるのです。もともと当社は時計メーカーでしたが、家電、オーガニックコスメなど、まったく違ったジャンルに参入していきました。そうした多様な事業展開が、社員1 人ひとりのやりがいを生んでいるのです」(橋本氏、以下同)
社員が楽しく仕事をできなければ、事業の意味はないとさえ言う。そして、社員が楽しく仕事をした結果が、いろいろな人の幸せにつながっていく──このサイクルを実現したいという独自の考え方の下、同社ではNGO、NPOを支援し、事業の中に組み込んでサポートしている。
「世の中にこれまでにない新しいものを提供できる、多くの人たちを幸せにできる、まず、そういった意義があるかどうかが新規事業の重要なポイント。それを、利益が出る事業に育てていくものこそ、社員の創造性です」
では創造性を育み、保つために大切なのは何か──橋本氏は「モチベーション」であると答えた。そう考えるに至った背景には、橋本氏自身のこれまでの経験がある。
現場で学んだ人材活用のあるべき姿
橋本氏は大学卒業後に就職した会社ではトップセールスを記録。一方、実家の家業の法的再建に携わるなど、組織経営における“修羅場”や“光と影”を経験してきている。