J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2017年05月号

社労士が斬る イマドキお悩み相談 第26回 女性管理職の妊娠

働く人の価値観の多様化から「働き方」も変化し、現場の管理職の悩みも“イマドキ”なものになってきています。
そんなイマドキな悩みの解決方法を、社労士の藤原先生が紹介します。


藤原英理(ふじわら えり)氏
あおば社会保険労務士法人代表。東京大学大学院修了後、大手製薬会社で研究職に従事。93 ~97年米国在住。帰国後、2000年大手証券会社に入社。社会保険労務士、CFPの資格取得。03年に独立、04年から現職。

[文] = 柳本友幸 [イラスト] = 秋葉 あきこ

第26回 女性管理職の妊娠

管理職としてバリバリ働いている優秀な女性社員から、妊娠したという報告を受けた。本人は、できる限りこれまでと同じように働きたいと希望している。会社としてはうれしいが、今まで通りハードに働くというのもそれはそれで心配になる。本人の申し出に反して、管理職から外したり業務負荷の低い仕事をさせるといった配慮が必要だろうか。

待遇と安全のジレンマ

男女の雇用機会均等が進むにつれ、妊娠中の女性社員の業務負荷をどう捉えるかが課題になっています。妊娠・出産というライフイベントは、業務とは関係なく発生するものですが、対象の女性社員の希望に合わせながら、うまく組織の業務に当てはめる必要があります。ポイントは、①不利益取扱の禁止と、②安全配慮義務です。

①に関しては、労働基準法や男女雇用機会均等法で、妊娠・出産を理由とする不利益的取扱が禁止されています。また、対象者本人から請求があった場合には、時間外・休日・深夜労働をさせてはいけない、身体に負担をかけないような軽易な業務へ異動させなければならない、などと定められています。

つまり、妊娠・出産を理由として、業務負荷を一定程度減らすことが求められながら、出世の機会が失われたり評価が下がったりするといった不利益な取扱は認められないということです。これは運用する雇用者にとっては、難しい問題です。「これまでと同じように働きたい」と申し出ているにも関わらず、会社側がその申し出を断って管理職から外すなどした場合、不利益取扱と見なされる可能性もあるからです。

一方、雇用者には職場で働く従業員に対する安全配慮義務があり、従業員一人ひとりの健康事情に応じて業務を割り振る必要がありますので、妊娠しながら働く従業員の健康を害さないように配慮しなくてはなりません。妊娠中の労働時間が長いと早産・流産のリスクが高まるといったデータ(2015 年日本労働組合総連合会調べ)もあります。したがって会社としては、対象者からの請求がなかったとしても、時間外・休日・深夜労働をさせるべきではありませんし、積極的に肉体的負担の少ない業務へ異動させるべきという判断も必要です。

この不利益取扱の禁止と安全配慮義務の関係が、雇用者にとってのジレンマになるのです。

職位・職責は変えられない

今回のように、仕事内容をできるだけ変えたくない従業員についてはどうすればいいでしょうか。深夜業務が避けられない、身体的な負担の多い業務があるなど、明らかに安全配慮義務上問題がある場合は配置転換が可能ですが、デスクワークが多く自分で時間管理もしやすい管理職であれば、妊娠を理由に職位や職責を変更することはできません。本人が継続を希望しているのであれば、「会社には安全配慮義務があるので、業務負荷が高くなりそうな時は相談してほしい」と伝えたうえで、業務負荷が上がらないよう定期的なフォローが必要になるでしょう。

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