J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2017年05月号

外国人材の心をワシづかみ! 日本発のマネジメント 第12回(最終回) 自社オリジナルのグローバル研修を開発する

世界の人材争奪戦において遅れをとる日本。
打開策は現地の人々のより深い理解、そして日本企業ならではの育成、伝統にある―。
異文化マネジメントに精通する筆者が、
ASEANを中心としたグローバル人材にまつわる問題の解決法を解説します。

河谷隆司氏
ダイバーシティ・マネジメント研究所代表取締役。異文化マネジメントコンサルタント。マレーシア16 年半在住。マレーシア戦略国際問題研究所研究員等を経て現職。著書に『 WinningTogether at Japanese Companies』他多数。ネットテレビ番組Japan Spiritキャスター。www.diversityasia.com

Antikwar/Shutterstock.com

日本企業発の理論を構築

いよいよ連載も最終回を迎えました。今回は、これまでの筆者の問題提起に基づき、グローバル研修の内製化方法について紹介したいと思います。この方法には、異文化理解研修、グローバルマネジメント研修、海外赴任前研修なども含まれます。     

さて、具体論に入る前に、なぜ内製化が必要なのかを整理しておきましょう。言うまでもないことですが、日本企業から海外へ赴く受講者は、外国人とは全く異なる仕事観や対人行動様式を持っています。グローバル研修は、そのような日本企業文化を背負った人々を支援するためのものです。したがって、欧米の研究者によるリーダーシップや異文化コミュニケーションの理論、スキル演習を行う際は、「自社の社員への適合性」を念頭に置く必要があります。

日本企業向けのグローバル研修である以上、理論構築やスキル指導の方法論の主な素材は、あくまで日本企業から入手するべきだと考えます。その努力をすることは、欧米とは異なる仕事観やスタイルを背負って海外に赴く日本人社員への最低限の礼儀ではないでしょうか。

また、グローバルビジネスへの取り組み姿勢やリーダーシップ行動を指導する際、「常に明確な返答をすることが重要」といった欧米的価値観を唯一の指導基準に置いていたら、日本人に誤った刷り込みをしてしまいます。結果的に、受講者のグローバル意識は委縮するでしょう。  

それどころか、例えば第11回(2017 年4 月号)で述べた日本的な処世術は、複雑で曖昧な“VUCAの時代”を生き抜くうえで不可欠な知恵です。広く知らしめれば国際的な貢献につながるもので、矯正すべきものではありません。

グローバル教育の要件

グローバル(異文化)ビジネス教育の構築は、専門家の資格要件を含めて、教育の中身を改めて問い直す時期に来ています。図1で見ていきましょう。

●CHECK1.日本人だけで企画した「グローバル」研修になっていないか?

⇒研修コンテンツの素材は、日本企業から集めるべきだが、外国人の視点は不可欠。担当者も講師もコンテンツの出所も、全て日本人が日本語で着想したものではないか。看板はグローバルだが、中身はジャパンではないか。

●CHECK2.自社の国内外の組織文化を題材にした内容が含まれているか?

⇒調査結果や事例研究などの素材は、日本人に適したものか。海外の研究者が外国企業の非日本人社員(大学教授による調査では学生アルバイトの場合もある)を被験者にした調査から得られたものも多いので注意したい。

●CHECK3.自社の国内外の組織文化の題材は、更新されているか?

CHECK2.の赴任者アンケートや現地研修のフィードバックなど、自社の海外拠点で得られた情報は、随時更新される仕組みになっているか。

●CHECK4.欧米理論を暗黙の到達学習目標と評価基準にしていないか?

⇒コミュニケーションや自己主張に関わる技術指導をロールプレイ等で行う場合、欧米発の理論を、あたかも(暗黙にせよ)世界標準かつ最先端の評価基準のように捉えていないか。

欧米式の直線的なロジックや即決型の返答力は、国際ビジネスの標準装備として身につけておく必要がある。しかし、同時に日本企業ならではの、全体最適型のビジネス文化の良さについても言及したい。

●CHECK5.異文化理論は賞味期限切れのものではないか?

⇒異文化理論は著名研究者による古典的成果が定番化しているが、文化の多様化が進み、組織がフラット化した現代でも賞味期限を越えていないか、検討が必要である。

●CHECK6.講師に日本型経営や日本文化への一定の知見はあるか?

⇒日本人を対象とするグローバルや異文化の研修だからこそ、講師には日本や日本企業の文化特性を踏まえたグローバル論を講じてほしい。国際業務だからと、急に従来のビジネス文化を捨て去る赴任者などいない。異文化研修講師といえどもPDCAやカイゼン、日本の伝統的価値観などの基本常識に不案内なまま、国際ビジネスパーソンの前に立っていいのだろうか。

以上、タフなグローバルビジネスに受講者を送り出す人事部門、社外コンサルタントのチェックリストになれば幸いです。受講者が早晩遭遇することが明らかな現地課題を常に先取りし、手を打つ実践家でありたいものです。

日本と現地をつなぐ連動教育

図1の項目について振り返ったうえで、具体的にどのような対策を打てばよいのでしょうか。

私が行う研修を基に実施手順を以下の通り示しました(図2)。図1の要件を満たしながら、派遣前と派遣後の教育を連動して実施(リンケージ)する点に特徴があります。

●STEP1.世界拠点で現地マネジメント研修を実施

リンケージ施策の最大の効果は、現地拠点で赴任者と現地社員を対象にした現地マネジメント研修を実施することから得られます。研修で現地のリーダーシップや異文化摩擦の進行中の事例を書いてもらい、課題解決を支援しましょう。ここで得られた生事例は随時、日本の赴任前研修などに還流します。

現地研修と赴任前研修を同一の講師が担当すれば、講師自ら見聞した、鮮度の高いリアルな現地拠点情報を、赴任前の受講者(あるいは国際ビジネス従事者)にビビッドに、ライブ感をもって伝達することができます。

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