J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2017年05月号

人材育成を“可視化”する! 第5回(最終回):成果を可視化する方法

現場力を高め、変革をリードする人材の育成に欠かせないものは何か。
それは可視化できるような人材育成の「仕組み」をつくることである。属人的にならない仕組みを構築し、共有・運用していくことは、人材育成における基本ともいえるが、果たしてどれほどの企業でこれが確立されているだろうか。本連載は、経営と現場の視点で、人材育成の仕組みづくりについて解説する。


遠藤裕隆(えんどう ひろたか)氏
富士ゼロックスクラウド&メディア事業開発部事業開発センターシニアコンサルタント。電気・電子系CADシステムの開発を経て、2000 年度からソフトウエア技術者の人材育成を担当。「人材育成の仕組み」の構築に取り組みながら、学習管理システムやスキルアセスメントを独自に開発した。2005 年に日本e-Learning大賞(経済産業大臣賞)を受賞。

●成果把握フレームワークの役割

人材育成活動の難しい点は、「何がどう良くなるか」「何がどう良くなったか」というのが見えにくいことだ。人材育成の重要性は理解していても、成果が分かりづらいため、教育費用が経費削減の対象になってしまったり、教育投資に二の足を踏む、という企業は少なくない。

私が外部講演を行う際のアンケートでも、「成果把握」は常に人材育成における課題の上位に挙がる。そこで、今回は成果把握を効果的に実現するフレームワークの考え方と進め方について解説する。

成果把握フレームワークの主な役割は、人材育成のステークホルダーに対して、人材育成の意義について説明責任を果たすことである。一般的に、人材育成(教育)が売り上げに与える影響を明確にすることは容易ではないが、成果把握フレームワークを活用すれば、「何がどう良くなるのか、何がどう良くなったか」を段階的に可視化することができる。そのため、ステークホルダーの納得感を得ると共に、迅速で効果的な人材投資につなげることができる。以下に、成果把握フレームワークの具体的な役割を解説する。

(1)目に見えない成果と見える成果のつながりを可視化

プロセスや人材、組織の能力など目に見えづらいものが、財務諸表など目に見えるものにどう貢献するかを具体的に説明できる。

(2)短期的成果と中長期的成果の整合化

財務諸表に関連する短期的な成果と、人材の成長といった中長期的な成果など、時間軸が異なる成果を考慮に入れた、全体最適な育成活動を検討できる。

(3)社員のモチベーション向上

成果把握フレームワークを活用することにより、企業(財務)→ 組織(現場)→個人(学習と成長)という図式で、個人は企業の戦略を見据えたうえで自身のキャリアパスを把握することができる。それがモチベーション向上につながる。

●成果把握フレームワークの構成

成果把握は人材育成の最終工程となるので、人材育成を構成する全要素が集約される。そこで、人材育成の全体像を俯瞰するために、BSC戦略マップを活用した成果把握フレームワークについて解説する(図1)。

(1)企業(財務)の視点

事業戦略を実現するうえで発生する「問題/課題」の解決が目的である。具体的な成果には、売り上げ向上やCS向上、ヒューマンキャピタル強化などが当たる。

(2)組織(現場)の視点

「問題/ 課題」を解決するために、組織(職場)、人材(人)、仕組みの3つの要素で分析を進める。ここでの「成果」は、「QCDM」を想定している。詳細については、次章で紹介する。

(3)プロセスの視点

必要な人材を獲得するためには「人材育成プロセス」が重要である。これにはキャリア開発、能力開発、評価が含まれる。

(4)個人(学習と成長)の視点

人材育成の育成施策を担う部分であり、人材開発、組織開発、インフラ整備で構成される。この中で、組織開発とインフラ整備は、人材育成を効果的かつ効率的に運用するために必要な要素である。

・人材開発……個人の能力強化(増力化)が狙いであり、OffJT、OJT、SD(自己啓発)により行われる。

・組織開発……職場の活性化を図ると共に、中長期的な人材育成のためのキャリア開発を実施する。

・インフラ整備……人材育成活動の効率化が狙いであり、モノ(ツール)、コト(プロセス/手法)、場(育成の場)で構成される。

●成果指標

次に、成果を図る「ものさし」となる、成果指標について説明する。成果指標は、最終成果である問題/ 課題解決を構成する要素として、知的生産性の向上と業務生産性の向上に大別できる(図2)。

成果指標は、さらに「QCDM」の4つの要素に分類される。Qは人材(能力)の質(Quality)と量(Quantity)、Cは費用(Cost)、Dは育成期間(Delivery)、Mは動機(Motivation)である。

(1)知的生産性の向上

①動機づけ(M)

ここは、能力の氷山モデルの「情意(やる気)」に相当する部分である。どんなに潜在能力が高くても、主役である人(社員)がやる気にならなければ、能力の発揮にはつながらない。

②増力化(Q)

増力化の対象は、能力と人材(力)である。ここでの能力は、能力の氷山モデルの行動、スキル、知識を指す。人材(力)は、人材の質(どのような能力を持つか)と量(人数)を指す。

(2)業務生産性の向上

③早期化(D)

人材の「早期育成」を実現し、育成期間を短縮することにより得られる成果である。昨今、外部環境の変化が激しい中で、多くの企業で人材の早期育成が求められている。

④省力化(D)

プロセスやインフラを整備することにより、プロセスの整流化を図り、ムリ・ムダ・ムラを削減することにより得られる成果である。

⑤最適化(C)

知的生産性と業務生産性向上から生まれる成果を金額換算した内容と、人材育成に投資した費用からROIを計算し、最適投資を検討する。

●代表的な成果把握モデルの紹介

代表的な成果把握モデルとして、カークパトリックモデルが挙げられる。カークパトリックモデルは、成果把握フレームワークの中で、主に人材(人)に関する成果をシンプルに把握できるモデルであり、L1~L4の4つのレベルで構成される(図3)。

・L1(レベル1)……アンケートで研修終了時の出口調査を行い、受講者の研修に対する満足度を評価

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