J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2017年02月号

人材育成を“可視化”する! 第2回:必要な人材を見極める方法

現場力を高め、変革をリードする人材の育成に欠かせないものは何か。
それは可視化できるような人材育成の「仕組み」をつくることである。属人的にならない仕組みを構築し、共有・運用していくことは、人材育成における基本ともいえるが、果たしてどれほどの企業でこれが確立されているだろうか。本連載は、経営と現場の視点で、人材育成の仕組みづくりについて解説する。


遠藤裕隆(えんどう ひろたか)氏
富士ゼロックス クラウド&メディア事業開発部事業開発センターシニアコンサルタント。電気・電子系CADシステムの開発を経て、2000年度からソフトウエア技術者の人材育成を担当。「人材育成の仕組み」の構築に取り組みながら、学習管理システムやスキルアセスメントを独自に開発した。2005年に日本e-Learning大賞(経済産業大臣賞)を受賞。

●人材育成フレームワークの狙い

前号は、人材育成のグランドデザインの全体像について解説した。今号は、人材育成のグランドデザインのエンジン部分に相当する人材育成フレームワークについて解説する。

人材育成フレームワークは「人材の可視化(人材戦略策定)」「成長の可視化(育成戦略策定)」「伝承の可視化(育成戦略実行)」で構成される(タイトル下図)。

「人材戦略策定」とは、事業戦略実現に必要な人材ニーズから、人材モデル(人材の質)を明確にし、中長期的に人材調達戦略(採用戦略、外部活用戦略、人材育成戦略)を企画するということ。「育成戦略策定」とは、組織の人材強化(質と量)のために、キャリア開発計画とこれを実現するための育成ガイド(育成体系図)を策定すること。「育成戦略実行」とは、能力開発を実現するために、育成手段を設計して教育を実施することである。

今回は特に、「人材の可視化」「成長の可視化」について解説する。これは、具体的には、企業の「事業戦略実現のためには、どのようなことができる人材が必要か分からない」、社員の「自分がどう成長すべきか分からない」という疑問に対する解決策であり、「どのようなことができるか」(能力モデル)、「どのような人材が必要か」(人材モデル)を明らかにするものである。事業戦略を実現する人材モデルを明確にして、短期的かつ中長期的に社員の能力を育成することが狙いだ。ここでいう能力とは、よく「能力の氷山モデル」で表現される資質(性格、才能)、情意(態度)、知識、スキル、行動(コンピテンシー)をさす。

この人材モデルが決まれば、企業は、どのように人材を調達するか(人材調達戦略)、どのように人材を育成するか(育成戦略)を具現化できるようになる。さらに社員は、人材モデルをベースにキャリアパスを検討できるので、自分がどう成長できるかが分かる。

●「 人材」を可視化する!

■仕組みの要「タスク分析」

まず、「人材戦略策定」における人材モデルの策定法から考えたい。人材モデルを明確にするために必要なのが、タスク分析である(図1)。タスク分析の狙いは、現場での業務遂行に必要な業務遂行要素として、業務機能、能力(能力モデル)、職種(人材モデル)、組織、職場環境(インフラなど)、タスクの入出力(業務の始まりと終わり)情報、目標値(KPI)、などを明確にすることである。

(1)業務プロセス分析

タスク分析の第一ステップは、業務プロセス分析だ。業務プロセス分析は、組織の業務規程などを参照して、業務全体の流れ(業務フロー)を分析し、業務機能、タスクの入出力情報、各機能の目標値(KPI)、担当者、などを明確にすることが目的。一般的に、業務はPDCAサイクルで構成されるので、この視点で業務プロセスを分析する。

(2)業務機能分析

次に、比較的日常的で、うまく流れている業務機能を抽出する。機能は、階層構造になっている場合が多いので、必要に応じて第一階層、第二階層などに展開する。分析対象が支援業務の場合には、基幹業務の工程に現れない場合があるので、この要素も必要に応じて考慮する。

(3)能力分析(能力モデル構築)

能力分析は、業務に携わっているハイパフォーマー(高業績者)を対象に実施する。最初のステップは、「行動分析」である。該当する機能を実現するために、ハイパフォーマーが「どのようなことを実施しているか」を分析する。次に、スキル分析を実施し、ハイパフォーマーの行動を実現するために必要なスキルと知識を抽出していく。必要に応じて、情意(態度)や資質(性格や才能)についても分析し、「能力モデル」を構築する。

(4)職種定義(人材モデル構築)

(1)~(3)までを分析すると、「業務機能と能力」の関係を明確にできる。この情報から、職種(人材モデル)を決める。その方法は、意味的につながりのある機能をまとめてひとつの職種にする方法(クラスター化)が一般的である。

このようにして構築された「人材モデル」から、「役割と能力要件」を抽出する。役割は、人材モデルごとに、責任範囲(何に対して責任を持つのか)を明確にしたもの。能力要件は、職種ごとに必要となる能力を明確にしたものであり、「能力マップ」と呼ぶ。

(5)組織設計

次に、関連する職種(人材モデル)をまとめたものが、組織となる。これを明らかにすると、組織の中に存在するいくつかの職種(人材)、そしてこれらの人材に必要な能力を可視化できる。

■人材モデルの構築事例

以上を踏まえて、人材開発部門の人材育成を例にとり、人材モデルの具体的な構築法について説明していく(図2)。人材開発部門に必要な人材モデルの大分類としてHRDプロデューサー(プロデューサー)、HRDデザイナー(デザイナー)、HRDファシリテーター(ファシリテーター)の3つの人材モデルで構成される「HRDプロフェッショナル」を例とする。

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