J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2017年01月号

若者の傾向から見る未来  “まったり派”のハートをつかみ、 超エリートを狙い撃て

未来の企業の中核を担う若者たち。
中でも「不可解」とされるのは、10 ~ 20 代くらいの「さとり世代」だ。
若いのに悟ったような言動が目立つことから、こう呼ばれるようになった。
彼らが望む働き方とは。人事は彼らにどう向き合うべきなのか―。
現代の若者の心理に詳しい原田曜平氏に聞いた。


原田曜平(はらだ ようへい)氏 博報堂ブランドデザイン 若者研究所 リーダー
1977 年、東京生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、広告代理店に入社。若者研究所リーダー。2003 年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。世界の若者研究家 兼マーケッター。「マイルドヤンキー」、「さとり世代」、「伊達マスク」、「パリピ経済」などの流行語を生み出す。主な著書に『さとり世代』( 角川書店)、『ヤンキー経済』( 幻冬舎)などがある。

[取材・文]=崎原 誠 [写真]=吉田 庄太郎

「若者不足」で倒産する時代

―未来の日本企業を担うのが、今の若者世代です。彼らとの向き合い方を教えてください。

原田

少子化が進み、若者の数が圧倒的に減る現実を認識すべきです。大恐慌にでも見舞われない限り、2030年には、彼らはどこにでも就職、転職できるようになっているでしょう。

労働力の争奪戦が激化すれば、多くの企業で、若者に望まれるよう体質改善する必要が生じます。若手人材の確保が難しい運送業などは、かなり前から対策を講じていますが、これからは業界を問わず、どれだけ若者のニーズを人事戦略・人事制度に取り入れられるかが重要になるはずです。

―企業としてどんな人材が欲しいかより、いかに若者に合わせるかを考えるべきなのでしょうか。

原田

どんな人材が必要かはその会社の事業戦略によるので、それぞれの会社が考えればよいことです。しかし、求める人材像を決めるだけで終わってしまっては採用につながりません。これまではそれで済んだかもしれませんが、人が採れなくて倒産する時代はすぐそこまで迫っています。

消費より“まったり”が好き

―では、今の若者のニーズとは。昔の若者とどんな点が違っているのでしょうか。

原田

2013年に「さとり世代」という言葉が新語・流行語大賞にノミネートされました。なぜこの言葉が注目され、世の中に広まったかというと、彼らがこれまでの若者とは異なる“不可解”な若者だったからです。

いつの時代も「最近の若者は分からない」などといわれますが、分からない度合いが高くなった、あるいは“分からなさの質”が変わってきた、といえるでしょう。

戦後の歴史を振り返れば、どの世代の若者も物欲、サービスに対する意欲を持っていました。団塊世代もしらけ世代もバブル世代も、「カラーテレビが欲しい」、「車が欲しい」など、対象は違っても、一貫して消費への興味はあったのです。

ところが、さとり世代と呼ばれる今の20 代は違います。ブランド品にも海外旅行にも関心がなく、地元で“まったり”するのが好き。消費のみならず、恋愛その他、何に対してもあまりエネルギッシュでない。マーケティング的に言えば、不可解なだけでなく、“不都合な世代”です。

こうした若者が生まれた背景には、やはり経済不況があります。彼らはデフレ経済、不景気しか知らずに生きてきました。最近になって多少、景気が持ち直したといっても、非正規雇用率は依然として高く、長期的な昇給は期待できません。

同時に彼らは、経済不況を経験しているとはいえ、生まれた時からモノやサービスが溢れる成熟社会で育っています。そもそも物欲が乏しいのも仕方ありません。同じ現象は日本のみならず、先進諸国で広く見られます。若者が“まったり”するのは、歴史的必然と言っていいかもしれません。

共感力が強み

―彼らの長所は、どういうところでしょうか。

原田

自分中心主義の“ ゆとりモンスター”は減り、指示されたことはそつなくこなせる人が増えています。全体的に物足りないかもしれませんが、能力の平均値は上がっているのでは。

注目したいのは、今の若者を形作っている重要な要素がインターネット―もっと言うとSNSだということです。上の世代もこれらを使いますが、やはり、小さい時から使い続けている彼らのネットワークは、広がりや奥行きが違います。

SNSでは、さまざまな立場の人とつながることができます。かつては多くの人が生活環境や価値観の似た者同士でコミュニティーを形成していました。しかし、SNSでは、貧乏人と金持ちもつながるし、学歴の違う人同士もつながる。そのため、自然とみんな、異なる立場の人の気持ちが分かるようになります。

「裕福な家庭に育った東大卒の官僚がリアリティーのある貧困対策を立てる」といったことも、SNS世代ならばおおいに起こりうることです。

―コミュニケーション能力が向上したということですか。

原田

SNSによって大勢の人の意見や情報が入ってくる、自分と違う立場の人に共感できる、といった意味では、確かにコミュニケーション能力は高まっています。

しかし、企業の言うコミュニケーション能力とは、「“タテ社会”における自分の役割を察知する力」を指すことが多いのです。例えば若手であれば、細かく指示されなくても、自ら上の人の考えを汲み取り、実践する、といったスキルですね。こういうことが不得意な若者はむしろ増えているようです。

というのも、SNSは全員対等な“ヨコ社会”で、上から目線でものを言うと、すぐ周囲から叩かれてしまいます。ですから、上下関係のやり取りに慣れていない人が多いのです。

ワークライフバランスは絶対条件

―そうした人たちに企業で活躍してもらうには、どうすればよいですか。

原田

まず、ワークライフバランスの充実は絶対条件です。今の若者はもともと満たされているので、「10 万円あげるから、徹夜で働いて」と頼まれても、「いりません、やりません」と断ります。「中国や東南アジアの若者はバリバリ働くのに……」と不満を漏らす人もいますが、時代が見えていないのではないでしょうか。

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