J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2016年12月号

外国人材の心をワシづかみ! 日本発のマネジメント 第7回 対話型リーダーシップ・プロセスで多文化チームを導く

世界の人材争奪戦において遅れをとる日本。
打開策は現地の人々のより深い理解、そして日本企業ならではの育成、伝統にある―。
異文化マネジメントに精通する筆者が、ASEANを中心としたグローバル人材にまつわる問題の解決法を解説します。
Antikwar/Shutterstock.com

河谷隆司(かわたに たかし)氏
ダイバーシティ・マネジメント研究所 代表取締役
ダイバーシティ・マネジメント研究所代表取締役。異文化マネジメントコンサルタント。マレーシア16 年半在住。マレーシア戦略国際問題研究所研究員等を経て現職。著書に『 Winning Together at Japanese Companies』他多数。
ネットテレビ番組Japan Spiritキャスター。www.diversityasia.com

日本人にできる唯一の行動

先月号でご紹介した「エンゲージメント」のキーポイントは何だったでしょうか。簡単にいえば、導きたい相手に「当事者意識(Ownership)」を感じさせ、主体的な行動変化を促すことでした。エンゲージメントは、部下と対話しながらリーダーシップを発揮するうえで最重要といえる要素です。そこで今回は、エンゲージメントをはじめとする、包括的なリーダーシップを発揮するプロセスについてご説明しましょう。

異文化チームを率いる際に役立つこのプロセスを、私は「対話型リーダーシップ・プロセス: Dialogic Leadershi p Process (DLP )」(図1)と呼んでいます。

DLPは、私が研修やコンサルティングを行っている、世界4極(欧米中ア)の日系企業の現地人管理者向けアセスメント調査に基づいています(※詳細は『アジア発 異文化マネジメントガイド』PHP研究所、『ワーキング・トゥゲザー』アスク出版)。

具体的には、「あなたが能力を最大限発揮するために、日本人赴任者にできる唯一のリーダーシップ行動は何ですか」「日本人赴任者があなたにとってさらに良きリーダーとなるために、彼らがするべき唯一の行動は何ですか」といった質問に対して寄せられた、約900 名の肉声から抽出しました。

部下と向き合う「対話型リーダーシップ」がなぜ今、必要なのでしょうか。世界4極の中でもASEAN+中国、香港の現地人マネジャーの声に耳を傾けて分かったのは、彼らとの深い対話なくして、その思いを実現することはできないということでした。また、日本人赴任者の多くは、「telling(指示)」はできても、「di al ogue(対話)」が苦手なことも明らかです。

対話型リーダーシップのプロセスは全部で5つあります(図 2、3)。以下より順に見ていきましょう。

1.意味を伝える

第1のプロセスは、「Communicating(意味を伝える)」。仕事の仕方、品質の捉え方など前提を明確に定義し、意味を伝達することです。

ゴールを示すことはリーダーの重要な仕事ですから、達成目標については数値的ゴールに加え、質的なイメージを伝える必要があります。比喩を駆使したり、関係者の満足した表情を描いてみせたりと、情感を盛り込んで相手を巻き込みましょう。

高い目標を伝えざるを得ないことにリーダー自身がジレンマを感じているなら、その気持ちも正直に伝えます。もちろん、自己卑下や組織批判にならないよう心掛けることが前提です。感情を伝えるコミュニケーションは影響力を効果的に発揮するうえで欠かせない要素。女々しいなどと避けるべきではない、というのが国際常識です。

なお、仕事の意味・やりがいに共感してもらうには、まず自分が仕事を深く理解していなければなりません。しかし、海外には業務指示以上のことを語れない赴任者が少なからずおり、高度なシナジーの段階へ進むことがままなりません。これは経営上重大な事態であることを、会社は認識する必要があります。

2.当事者意識を植えつける

相手への期待やゴールイメージの意味を深く伝えると、やがて部下との間に共感(empathy)が生まれます。その共感のうえに第2のプロセス、「Engaging(当事者意識を植えつける)」を行います。これが日本人マネジャーの最大の注力エリアです。

当事者意識を植えつけることは、「実態、本音を伝え、相手と同じ土俵に立つこと」と言い換えられます。日本人だけが状況を理解してカリカリしても、相手に伝えられなければ、現地社員の行動はズレたままです。自律的行動は促せません。

詳細は第6回(2016 年11 月号)をぜひ参照いただきたいのですが、ここでは要旨を述べておきます。

エンゲージメントには3ステップがあり、それは、①「バーニング・メッセージ」を語る、すなわち、相手の心にスイッチを入れること、②お互いのニーズを「アライン(すり合わせ)」して納得感を高めること、③面従腹背を避けるために、両者の約束(コミットメント)について合意し、相手をオーナー(主体)にして行動に駆り立てる「ホールド」を行うことです。

いずれもレベルの高いリーダーシップの発揮術ですが、現地スタッフに当事者意識(オーナーシップ)に基づく行動を求める以上、絶対に身につけなければなりません。

経験上申しますが、必ずしも高度な英語力がなければ無理ということはありません。業務への深い理解が3分の1、情熱が3分の1、最後に英語力が3分の1です。

ちなみに、図2 のカッコ内に「現地人上司の協力を仰ぐ」とありますが、対日本人顧客対応など、赴任者には現地人上司には見えにくい独特の業務があるものです。その場合、「このような業務があります、このようなプロセスで現地のビジネスに役立っています」などと説明し、現地人上司の支援を得ていきます。

3.チームで働く

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