J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2016年11月号

TOPIC-2 脳を知り、感情制御や行動に活かす リーダーシップ開発と 神経科学・マインドフルネス

近年、神経科学が注目を集めている。なぜなら、私たちの行動には、脳内の神経反応が密接に関わっており、それを知っておくことで、仕事での振る舞いや心身のケアに活かすことができるからである。
具体的には、何を知っておくと、何に活かすことができるのか。
特にリーダーシップ開発との関係に着目している、米国のリーダーシップ専門教育・研究機関CCL(Center for Creative Leadership)客員研究員のキャスリーン・クラーキン氏に聞いた。


キャスリーン・クラーキン(Cathleen Clerkin)氏
2 0 1 3 年よりC C L ( Center for Creative Leadership)の活動に参画。専門は、組織心理学・社会心理学・ポジティブ心理学・政治学・応用社会認知神経科学など多岐にわたる。カリフォルニア大学バークレー校を卒業後、ミシガン大学アナーバー校にて心理学の博士号取得(Ph.D)。

[取材・文]=堀尾志保・小菅 啓・永國幹生(JMAM) [写真]=CCL提供

リーダーシップ開発への活用

――なぜ、神経科学をリーダーシップ開発に活用しているのですか。

キャスリーン氏(以下キ)

神経科学とは脳の働きを研究する学術分野で、これまでは主に医療領域に活用されてきました。しかし最近では、より広い領域で活用されるようになっています。というのも、脳内の神経反応は、人の行動全般と密接に関係しているからです。

CCLでは、リーダーシップを開発する手法のひとつとして、360度診断などを使って、受講者の行動面の強みや弱みをフィードバックし、行動改善を促す方法を用いています。これは、受講者が自分の行動傾向への理解を深めるうえではとても有用です。

一方、表出している行動の大元についても理解することが重要です。人の行動は、感情やストレスによる脳内の生体反応と深く関係していて、こうしたメカニズムを理解することで、さらに行動変容を促進させることが可能になるからです。

そこでCCLでは数年前から、神経科学分野の研究知見を、リーダーシップ開発へ活用する取り組みを始めました。

脳の苦痛を回避する方法

――具体的には、何を知ることで、どう対処できるのでしょうか。

例えば、人の脳は、脅威を感じると、反射的に「闘争-逃走」反応が引き起こされ、コルチゾール(註:ストレスホルモンとも呼ばれる)を分泌します。すると、「サバイバル・モード(生命保存を第一義とする状態)」に陥り、脅威の元となった相手への攻撃、あるいは相手からの逃走に注意が集中します。その結果、「課題」そのものへの集中力は低下し、大変非効率な状態になってしまうのです(図)。こうした生体反応を理解し、自分の状態に意識を向けられるようになると、より適切に対処することが可能になります。

具体的には、脅威に直面しても、「解釈(認知)の仕方を変える」ことで、脳内の反応を変えることができるのです。

心理学の分野で、「サイバーボール」と呼ばれる実験があります。この実験では、被験者にキャッチボールのコンピューターゲームをしてもらいます。3人でプレーする設定になっており、被験者には「残りの2人のプレーヤーは別の部屋でゲームを操作している」と伝えます。最初のうちは、ゲームの中で、3人でキャッチボールをしているのですが、途中から被験者だけ、“のけ者”にされ始めます(註:あらかじめ被験者だけが仲間外れにされる設定になっているが、それは伝えない)

この時、ほとんどの人の脳内では、苦痛を感じる部分が反応します。その部分は、身体的な苦痛を感じる場所と同じです。人の脳は、身体的な苦痛と精神的な苦痛を区分して感じることができないのです。

しかし、ごくわずかですが、苦痛を感じる部分が反応しない人がいます。そうした被験者に状況をどう解釈したかを確認すると、「自分が他の2人から阻害された」のではなく、「ゲームの設定エラーで状況が変わったのだろう」と解釈していました。

これらの調査結果から、同じ状況に直面しても、解釈や認知の仕方を変えることで脳の反応も変わることが分かったのです。

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