J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2016年05月号

常盤文克の「人が育つ」組織をつくる 第11回 自然は我が師・我が友(後編)

元・花王会長の常盤文克氏が、これからの日本の企業経営と、その基盤となる人材育成の在り方について提言する本連載。前回に引き続き、動物や植物たちの習性や生き方から、自然の中に潜む「知」を探り出し、経営や人づくりへの活かし方を考えます。

常盤文克(ときわ ふみかつ)氏
1957年、東京理科大学卒、花王入社。米国スタンフォード大学留学後、大阪大学にて理学博士取得。76年取締役、90年社長、97年会長を歴任。著書に『 新・日本的経営を考える』(JMAM)『人が育つ仕組みをつくれ!』(東洋経済新報社)など多数。

植物の生き方に学ぶ

動物や植物たちが厳しい自然環境下で生き抜いていく姿には、学ぶべきさまざまな“知”が潜んでいます。前回は、サバンナや熱帯雨林の生き物たちが持つ、生態の質や生き抜く力について取り上げました。今回は、より身近なところで、農作物の特性や栽培などから企業経営、人材育成のヒントを探ってみます。まず、いくつか具体的な例を挙げましょう。

厳しい環境でこそ人は育つ

【つるぼけ】キュウリ、スイカ、カボチャなど、蔓つる性の植物は肥料を与え過ぎると、葉や茎ばかりが伸び、肝心の実は大きく生な りません。このような現象を“つるぼけ”と言います。つるぼけを防ぐには、肥料を抑える、時には先端の芽や脇芽を摘み、茎や葉が増え過ぎないようにする。厳しい状態に置いたほうが、生き残ろうとする植物の本能が働き、大きな実をたくさん結びます。【リンゴ】リンゴ栽培といえば、下草を刈り、しっかりと肥料を施し、適時に農薬を散布して育てるのが普通でしょう。ところが、青森のリンゴ農家・木村秋則さんは、下草を刈らず、農薬などに頼らない、自然のままの環境でリンゴを育てる農法を編み出しました。そのような環境にあるリンゴの木々は、他の植物や昆虫と共生しながら生き抜こうという本性に目覚め、却かえって風味豊かな、おいしいリンゴが生るそうです。

この2つの話は、手をかけ過ぎず、自然に任せて作物を育てることの大切さを教えてくれます。人材育成も同様で、居心地のよすぎる環境では逞しい成長ぶりは望めません。程よい厳しさが必要なのです。それには、同質圧力が働かぬよう異質な人材を共存させ、互いに切磋琢磨させることが大切です。

「間を取る」ことの大切さ

【生なり年どしと裏うら年どし】ミカンやリンゴなど果物の栽培では、豊作はいつまでも続きません。たわわに実る年(生り年)と、不作の年(裏年)を交互に繰り返しています。裏年には、果樹は次の生り年に向けて力を蓄えているのです。

この現象は、人も企業も常に成長し続けるのは難しいことを私たちに教えてくれます。時にはひと息入れてエネルギーを蓄え、次の成長に備えることが必要です。それが「間を取る」ということです。ただただ頑張るだけでは、人も企業も疲れ果て、いつか潰れてしまうでしょう。

【年輪】樹木が刻む年輪をよく見ると、幅が一定ではありません。幅の広い年は、盛んに成長したものの伸び過ぎて木が弱っているので、翌年は成長の度合いが小さくなります。また、幹の中心に近い、若い時期の年輪は幅が広いが、年とともに外に向かうにつれて、だんだん狭まってきます。

こうした年輪の模様は、度を超えた急激な成長や短期的な効率の追求は、人や企業には重い負担となり、体力を弱め、かえって大きな痛手となることを教えてくれます。人も企業もゆっくりと、しかし確実に年輪を刻んでいくのが自然な姿なのです。

「輪作」「転作」の勧め

【連作障害】毎年、同じ場所で同じ作物を栽培していると、地ち 力りょくが弱まり、発育不良や病虫害が起こりやすくなります。これを“連作障害”と言い、キュウリやジャガイモなどウリ科、ナス科の野菜に見られます。連作障害を防ぐには、いくつか方法があります。1つは“輪作”―畑を複数の区画に分け、種類の異なる作物を一定の順序で回していく―です。その他、土を掘り返して上層と下層を入れ替える“天地返し”、同じ土地にそれまでとは別の作物を植える“転作”などもあります。

連作障害は企業の中でも起こります。同じ職場で同じ仕事を続けていると、社員が視野狭窄に陥るだけでなく、組織のマンネリ化を招き、やる気を損ないかねません。つまり、職場の地力が低下してしまうのです。やはり人材も、輪作や転作のように、定期的なローテーション(配置転換や転勤)が必要です。

自然の中に潜む知を汲み取る

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