J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年08月号

人材教育最前線 プロフェッショナル編 企業の発展を支えるのは 社員一人ひとりの感動を伴う気づき

「自らの気づきによって得られた学びこそが本当の成長につながる」。
NECネッツエスアイ執行役員の坂梨恒明氏が人材育成施策を企画するうえで重視するのは、一方的に知識を詰め込む教育にしないこと。自発的に考え、“ そうか!”という感動をもって得られた学びこそが身につくと考えるからだ。チームでも、1つの目的を達成する場を設定すれば、自然と課題は何かを考え、解決するための工夫が生まれる……。そうした機会をどれだけ与えられるかという「個の能力を企業発展の力に変える育成」を追求している。

執行役員(人事、CSR・広報、法務)
坂梨 恒明(Komei Sakanashi) 氏
1981年日本電気入社。日本電気総合経営研修所、日本電気アイシーマイコンシステムなどを経て、1995 年日本電気 人事教育部人事課長、1999 年東北日本電気 総務部長に。その後、日本電気にてビジネスユニットの人事統括マネジャーおよび人事部長を歴任し、2013年NECネッツエスアイ 執行役員に就任。
NECネッツエスアイ
通信インフラの設置工事を行う会社として1953年に設立。現在はネットワークを核にICTシステムに関する企画・コンサルティングから設計・構築、システムの保守・運用までトータルに提供。官庁・自治体や通信事業者、企業まで幅広い分野で通信ネットワーク/コミュニケーションを支える。
資本金:131億2200万円(2015年3月31日現在)、連結売上高:2922 億円(2015年3月期)、連結従業員数:7260名(2015年3月31日現在)
取材・文/髙橋真弓 写真/編集部

コスト意識を養う研修

坂梨恒明氏が企業内教育に携わったのは、NECに入社して3年目のことだ。入社後、コンピューターやプリンターを製造する府中事業場に配属され、最初の2年は給与計算業務に就いていた。そこから教育担当へと変わったのだが、初仕事は製造職の若手社員を対象とした教育の企画だった。

当時から“いい品質で安く速くつくる”ことが、モノづくりにおいて大事なことだと坂梨氏は考えていた。それを若い社員たちにどうやって浸透させるか、日々思案した。そして、思いついたのが模型飛行機づくりだった。チームに分かれ、紙と木材を材料にゴム動力でプロペラを回す模型飛行機をつくり、製作の効率化でコスト削減を体感させるプログラムだ。作業時間をきちんと計り、工数も算出、材料費と人件費からコストを計算させた。完成後は事業場内にある体育館で飛行距離を計測した。

「モノづくりにおけるコスト意識を高め、メーカーのコストパフォーマンスを追求する製品づくりを体感させたかったのです」

本格的に人材育成の道へ

教育担当1年目ですでに、創造性を発揮しオリジナルな研修を企画・実行した坂梨氏。翌年NECグループ各社向けの研修を開発・実施する日本電気総合経営研修所に異動した。ここから本格的に育成・教育の道へと進むことになる。

同研修所では2年半にわたり教育の企画、実施、運営に携わったが、中でも記憶に残っているのは部長研修だという。10人の経営幹部の講話を聴くプログラムと、コンピューターを使った経営シミュレーションを行う1週間の研修だった。

「事務局として研修をオブザーブすることで、私自身とても勉強になりました。特に講話で聞いた経営幹部の英知は今でも役立っています。入社4年にして経営幹部の生の講話を聞くという機会はなかなかありません。教育担当っていい仕事だな、と思いましたね」

一方で、NECの人事担当役員でもあった、当時の日本電気総合経営研修所の社長、江頭年男氏からは、「経営は人が全て」であり、「NECグループは人を大切にする企業でありたい」と言い聞かされていた。この言葉に影響を受け、坂梨氏は「人は学ぶことで成長し、成長した人が企業の発展を支えるのだ」と信じるようになった。まさに人材育成の重要性に気づき、興味と関心が芽生えた時期だった。

感動が伴う“気づき”

坂梨氏は、「“なるほど、そうか!”という感動と共に得た気づきだけが脳裏に刻み込まれ、身になる」と考えている。これを教育の現場で初めて実感したのが女性事務職研修だ。1986年から4 年間、玉川事業場で採用・教育を担当していた頃の話である。

当時は男女雇用機会均等法が施行され、ローカル採用である女性事務職社員の能力向上が教育テーマとなっていた。

「アシスタント業務をこなす役割だった女性たちに、意識と役割を変えてもらい、自主的にかつ創造的な仕事を始めてもらうことで組織力が格段に上がります。そうした意識改革と、その活躍の場を実際につくっていくことが課題でした」

1泊2日の合宿で、まず今の仕事を振り返り、振り返った中で自分の力を発揮できる部分はどこか、あるいはもっと活躍したいと思う部分は何かをグループディスカッションで話し合ってもらった。

「あるべき論を詰め込むような、型にはめた研修ではなく、議論をし、互いが励まし合いながら自らの意識を高めるための情報交換をする場づくりを意識しました」

研修中に、女性たちが目を輝かせて気づき合う様子に確実な手ごたえを感じた。

「意識が高まり、いきいきとした姿は、女性の活躍する時代を予見させるものでした」

「型にはめず、自分たちで考えるチャンスや機会を与える」という考え方は今にも通じている。人から一方的に知識を詰め込まれても身につくものは少ない。だからこそ、自発的な気づきを生み出す機会をどれだけ仕込めるかがポイントだという。

被災地での新人の学び

気づきを促す研修は、形は異なるが現在もNECネッツエスアイで行われている。東日本大震災被災地である南三陸でのボランティアを兼ねた新人研修がその1つだ。2012 年より毎年実施しており、今年はNECネッツエスアイグループで約130 名にのぼる新入社員が参加した。

そもそもNECの通信工事を担う組織として設立された同社には、伝統的に現場での学びを重視する風土がある。入社直後から「現地・現物・現実」で学ぶことを叩き込まれるが、被災地ボランティアもその一環として行われている。

「社員たちは被災の爪痕を目の当たりにし、現実から多くを学びます。ボランティアを通じて、人の役に立つ仕事とは何か、仕事のやりがいとは何か、また仕事を通して社会に貢献するとはどういうことかを感じ、考えるのです」

行きの電車の中では修学旅行のように騒いでいた新入社員たちも、帰りの電車の中では、インフラ事業を担う立場として「自分たちに何ができるか」などを真顔で語り合うようになるという。

組織融合の推進人

坂梨氏のキャリアに話を戻せば、1995 年、NECの人事課長として管理職になって以降、人材開発の業務からしばらく遠ざかる。しかし2006 年に行われた大規模な改組によりネットワーク系の事業本部4部門が統合されると、3600人規模のビジネスユニットの人事責任者となった。

だが旧事業本部ごとに異なる文化が存在し、融合は思うように進まず、シナジーも生まれない─。そんな状況を打破するために取り組んだのが、旧部門間の壁を取り払い、新ビジネスユニットの求心力を高める組織開発だった。

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