J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年08月号

OPINION1 世代ごとにアプローチを変えた活躍推進 「長く働ける」「ステップアップできる」仕組みを

ライフイベント後の女性のキャリアが問題になっている。
「寿退社」という言葉が死語となりつつある今日だが、女性たちの意欲や能力を、活かしきれていない企業も多い。
出産、育児による離職を食い止めると共に、チャレンジを促すためにどんな働きかけが必要なのか。
働く女性のための雑誌『日経ウーマン』の元編集長であり、女性活躍推進に詳しい日経BP社 日経BPヒット総合研究所長・執行役員 麓 幸子氏に聞いた。

麓 幸子(ふもと さちこ)氏
日経BP社 日経BPヒット総合研究所長・執行役員
1984年日経BP社入社。『日経ウーマン』の創刊に携わり、2006年同編集長、2012年よりビズライフ局長に就任。『日経ウーマン』『日経ヘルス』などの発行人を務める。2014年より現職。
内閣府委員、林野庁委員、経団連21世紀政策研究所研究委員などを歴任。筑波大学非常勤講師。著書多数。『なぜ、あの会社は女性管理職が順調に増えているのか』(日経BP社)がある。

[取材・文]=井上佐保子 [写真]=麓氏提供

世代によって異なる女性の意識

女性活躍を推進するうえで、まず押さえておかなければならないのは、同じ女性でも働くことに対する意識に違いがあることだ。私は、世代によって大きく2つの層に分かれると考えている(図1)。

1つは、35歳くらいから下の年齢層だ。この世代の女性の多くは、いわゆる「失われた20 年」と呼ばれる時代に育ったこともあり、入社時から「一生働く覚悟」ができている。夫が一家の大黒柱として働き、妻が専業主婦になるという生活は現実的でないとわかっており、非常に堅実だ。

もう1つはベテラン女性の層だ。こちらの世代は違う価値観を抱いていることが多い。もちろん人それぞれだが、キャリアの初期段階から「一生働く覚悟」を持っていた女性は多くないのではないか。周囲の支援や環境に恵まれ、運よく働き続けられたというワーキングママもいるだろう。これまで働き続けてきた女性が、必ずしも「覚悟」がある人ばかりとは限らない。

若年層向けの対策

このように大きく意識の違う2層の女性たちに共に活躍してもらうため、どのような施策を行うべきなのだろうか。

ライフイベント前の若年層に向けては、「会社で長く活躍してほしい」という期待を伝えることはもちろんだが、それ以上に重要なのは、30歳までの初期キャリアにおいて、仕事の有意味感を与えることだ。キャリアの初期段階で仕事を通じて「しびれるような経験」をし、昂揚感、達成感、充実感を味わう。そのうえで上司や先輩から、会社の存在意義や仕事の意味を教えてもらえば、女性は仕事の醍醐味を教えてくれた企業に感謝の気持ちを抱く。「この会社で働き続けて貢献したい」と考えるようになるのだ。

つまり、ライフイベント後もモチベーションを保ち続けられる人材に育てるには、初期キャリアが重要なのである。

何も難しいことではない。男女の区別なく処遇し、適切な職務を与え、期待を伝えたうえで、鍛えればよいのだ。先述したように、今の20代、30 代の多くの女性たちは、「一生働く覚悟」ができている。問題は、受け入れる企業のほうに覚悟ができていないことだ。「女性だから易しい仕事を与える」「女性だから補助的な業務をさせる」といった扱いをすると、「長く働きたい」と考える優秀な女性ほど、その企業を見限って辞めてしまうだろう。

ミドル層向けの対策

一方、すでに中期キャリアにいながらなかなか力を発揮できていない女性や、ベテランといっても管理職になるわけでもなく、モチベーションが停滞気味の女性にはどう働きかければよいか。

40 代以降の女性たちは、入社以来、特に期待もされず、目の前の仕事をこなしてきたという人も多いだろう。彼女たちを主戦力として見ず、企業側が意識して教育をしてこなかった結果ではなかろうか。

そこで、改めてミドル女性に向けた研修を実施してはどうだろう。会社や経営、自身の仕事の意義を理解し、目線を高められるような機会を提供するのだ。そうすることで、「自分に期待し投資してくれた会社に、こちらも貢献したい」という気持ちが芽生えるのではないか。

ヨコの課題―就業継続の対策

女性活躍支援には、大きく2つの側面がある。私はしばしば「ヨコの課題とタテの課題」という表現を使っている。

「ヨコの課題」は就業を継続しにくい企業の現実だ。つまり、女性のキャリアは、図1でいうと年齢(横軸)の幅が狭まりやすい。

マッキンゼーの調査(2012年実施)によれば、日本では新入社員の45%が女性である。彼女らがきちんと育成、登用されていれば、管理職の女性比率は少なくとも30%程度に達していいはずだ。しかし、現状はわずか11%。「最初の子どもが産まれた後、6 割の女性が会社を辞めてしまう」(厚生労働省調べ)というのが、今も昔も変わらない現実だからである。

もちろん、企業側は決して対策を打たなかったわけではない。出産・育児休業や短時間勤務など、制度面の整備を中心にさまざまな工夫をしてきた。実際、2008年の厚生労働省の調べでは、1000人以上の大企業では6割を超える人が出産後も継続して働いているなど、一定の成果が見られている。しかし、制度をつくったものの運用が困難で、女性の離職を食い止められずにいる企業は、中小企業を中心にまだまだ多い。

第1ステップとして企業に求められるのは、この「ヨコの課題」を克服して女性が就業継続できるようにし、女性全体の就業人数を増やすことだろう。

タテの課題―ステップアップ対策

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