J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年07月号

Column2 ~日本ラグビー界のリーダーに聞く ~ 世界で勝てる選手の要件と育て方

多くの日本人スポーツ選手が海外で活躍するようになって久しい。
スポーツの世界、それも国際的な舞台で日本人が結果を残すためには、どんなマインドセットが必要なのか。若い頃から育成できることとは。
自身も現役時代、海外でプレーした経験を持ち、現在はラグビー界の人事や次世代の選手の育成を担う、岩渕健輔氏に聞いた。

岩渕 健輔 氏
日本ラグビーフットボール協会 日本代表ジェネラルマネージャー
1975年、東京都生まれ。小学生の時にラグビーをはじめ、青山学院大学在学中に日本代表初選出。卒業後の1998 年、神戸製鋼入社後、ケンブリッジ大学に入学。2000年に退社・卒業しイングランドプレミアシップのサラセンズ入団。その後サニックスやフランスのコロミエ、7人制日本代表の選手兼コーチなどを経て、2009年に日本協会入り。
2012年より現職。現役時代のポジションはスタンドオフ。日本代表としてテストマッチ通算20試合に出場。

[取材・文]=Top Communication [写真]=日本ラグビーフットボール協会提供、菊池壯太

ラグビー界のダイバーシティ

私は2012年から、日本ラグビーフットボール協会で日本代表チームのジェネラルマネージャー(GM)を務めています。2016年のリオ五輪から正式競技となる7人制(※)と女子のチームも含め、全ての「日本代表チーム」の強化に関する編成と人事を任されています。

日本のラグビー界はこれからの数年間、非常に重要な期間を迎えます。

15人制のほうは、今年9月にRWC(ラグビーワールドカップ、以下略)のイングランド大会が開催され、4年後の2019年には、アジア初となるRWCがこの日本にやってきます。7人制は2016年のリオ五輪を経て、2020年の東京五輪へとつながっていきます。

こうした中、現在の日本代表チームのスタッフには、オーストラリア人のヘッドコーチ(監督)をはじめ、イギリス人やフランス人がいて、選手にはニュージーランド、オーストラリア、トンガの出身者がいます。まさにダイバーシティであり、彼らを交えた「日本代表」が世界を相手に戦っているのです。

多くのスポーツでは、その国の国籍を取得しないと代表チームに入れませんが、ラグビーの場合、その国で3年間プレーするなど一定の条件を満たせば代表チームの一員になることが認められています。ニュージーランドやイングランドといった強豪チームでも、その国のネイティブではない選手が活躍していることも多いのです。

多様な背景を持つさまざまな国の出身者が、母国ではない国の代表として誇りを持って戦う。これがラグビーの魅力の1つでもあります。

まずはコミュニケーション

そして、野球やサッカーのように、ラグビーでも日本人選手が数年前から海外で活躍するようになりました。

「スーパーラグビー」という、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカのクラブチームが戦う南半球のリーグでは、2015年のシーズンは6人の日本人選手がプレーしていますが、試合にコンスタントに出られなくて苦労している選手が多いのが現状です。単純に実力だけではなく、人間関係にも問題があるのです。

ラグビーというスポーツは、1チーム15名、計30名の選手がピッチ上で1つのボールをめぐって争うスポーツですが、野球などと異なり、チームメートにボールを回してもらうことで初めて選手は活躍できます。しかし、海外のチームでは特に、周りの選手たちとしっかり信頼関係が築けていないと、ボールを回してさえもらえないのです。

信頼を得るためには、プレー以前に、周囲とコミュニケーションをとらなくてはなりません。ミーティングや練習の最中、あるいはクラブハウスで仲間と食事をとる時などに、積極的に関わろうとしたり、ラグビーに対する自分の考えをはっきり表明したりすることです。人間関係、信頼関係はそこから築かれますから、それなしにどれだけ練習しても、試合でボールは回ってきません。

日本人の場合、言葉の障壁があるとよく言われますが、たとえカタコトでも、わかってもらおうとすれば気持ちは必ず伝わります。野球(ブルージェイズ)で活躍中の川﨑宗則選手がいい例です。必死にチームに溶け込もうとしている姿勢が伝わってきます。

本来のコミュニケーションは、語学力とは別次元です。最初にそこを突破できるかどうかが、海外で活躍できる最低の条件なのです。

日本の「和」と無責任

日本人選手が自分をアピールできないのは、育った環境や文化の違いもあるでしょう。

私が現役時代にイングランドやフランスでプレーして思ったのは、海外では「個」を非常に重視するということでした。だからといって、わがままというわけではありません。メンバーはみんな育ってきた環境や社会背景が違うので、考え方が異なって当然なのです。それを前提にラグビーチームも社会も構成されています。

一方、日本では、個よりも組織やチームが優先されがちです。しかし、それを前面に押し出し過ぎて、個々のプレーヤーが無責任になっているようにも感じます。チームの歯車になるだけで満足し、本当に勝つために自分が責任を持って貢献するという気持ちが乏しいように思うのです。

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