J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年07月号

Column1 学ぶ意欲とオープンな心 「マインドフル」な人との出会いがグローバル人材を育む

世界で活躍するビジネスパーソンに共通する、重要な資質がある。
「マインドフルであること」だ。
「多様な他者」と対峙し、コミュニケーション能力をフルに発揮するために不可欠な心構えという。
若手グローバル人材を育成するうえで、その模範となるべきまず中高年層が身につけておくべきマインドセットについて、船川淳志氏が語った。

船川 淳志( ふなかわ あつし) 氏
グローバルインパクト代表パートナー。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。東芝、アリコジャパンに勤務後、アメリカ国際経営大学院(サンダーバード校)にてMBA取得。組織コンサルタントとして活動する傍ら、以下の講師を歴任。サンダーバード日本校 客員教授(1999-2003)、NHK教育テレビ「実践・ビジネス英会話ーグローバルビジネス成功の秘訣」講師(2003-2004)、社団法人日本能率協会 主催「グローバルビジネスリーダープログラム」主任講師(2004-2007)、国際基督教大学大学院 Global Leadership Studies 非常勤講師(2011-)、早稲田大学大学院ETP 非常勤講師(2011-)。

MBAよりMB2Aが必要

私は企業研修や公開セミナーの参加者、コンサル案件で関与する人たち以外にも、仕事柄いろいろな方に会う。最近も、友人を介して、ある方に都内のホテルでのパワーブレックファーストをお願いした。国際基督教大学で行われた「TED※×ICU」 での彼のスピーチに感銘を受けたからだ。

大学在学中、ノーベル賞受賞で有名なムハマド・ユヌス氏が創設したグラミン銀行に飛び込み、バングラデシュでNPOを立ち上げ、その後、グーグルに入社した。彼の名前は三好大助。ネットで検索すると、その多方面での活躍ぶりがうかがえる。

お互い初対面。お会いしたその瞬間、私はひと目で、「合格! 凄い!」と判断した。ちなみに、昨今では私のこの一文だけ捉えて、「上から目線」と批判する野暮な人が年代に関係なく増えてきた。

私の意図はそんな話ではない。彼と私は、お互いの年齢差なんか関係なく、いろいろな話題で話が盛り上がった。ビュッフェテーブルから食べ物を取る暇すら惜しいと思われるほど、あっという間に2時間以上が過ぎた。

社会貢献を喧伝する知識人、著名人(むろん、コンサルタントも含めて)に会ってみると「がっかり」という人は少なくない。笑っているようでも目が笑っていない、あるいは生き生きとしていないのだ。表向きの仮面なのか、あるいは虚勢を張っているのか。よく観察すると、その理由が見えてくる。

日欧の橋渡し役として30年以上の実績を持つ今北純一氏も、このことを指摘されていた。「ナルシストたちは表情が暗いのでよくわかりますよ」と教えていただいた。それもそのはず。彼らにとっては、使命や目標よりも、「名前を売ること」「目立つこと」のほうが優先的だ。そして、社会貢献することで他者よりも優位に立ちたいという意識を抱いている。このように承認欲求が肥大化しているから、「残念な人」になってしまうのだろう。三好さんはその逆で、使命や目標を決して見失っていなかった。

かつて、ビジネススクールの講師を20年間近くやっていた私は、MBAよりMB2A、つまりMindful Brave & Bold Action(マインドフルで、勇気を持ち、大胆な行動をとること)の実践を強調している。MBAの授業で学ぶ知識は、もはやネットで身につけられる時代だからだ。

ここで言うマインドフルとは、いろいろなことに好奇心を持ち、一期一会を大事にし、自らの心的状況にも注意を払いながら、その場に応じた最適の行動ができる状態を指す。言い換えればラーニングフル(learningful)な状態であり、オープンマインド(openminded)であることだ(図1)。

ビジネスセンスや思考力、英語も含めたコミュニケーション能力、多文化の理解、リベラルアーツなど、グローバル人材が学ぶべきことは多い。スポーツも学問もビジネススキルも、「できた」と思った瞬間、成長が止まる。だからこそ、グローバル人材は、人生の最後の日まで学び続けていけるかが問われる。

現在、26歳の三好さんはMB2Aをハイレベルでやってきている人だ。そして、今も彼の興味が未来に向かっていることに私は大いに感銘を受けた。

疑心暗鬼に陥る若者たち

さて、皆さんの周りにどれだけマインドフルな人がいるだろうか?

マインドフルの反意語はマインドレスだ。人間である以上、精神活動が喪失すると困るのだが、absent minded 、つまり「心ここにあらず」という人のほうが多いのではないか。配慮の足りない人、気の利かない人、物事に対して無頓着な人、他者に対して無関心な人を探すのに苦労しない。こうした人はグローバル人材たりえない。

その意味で懸念されているのが、若い人たちのグローバルマインドセットの欠落だ。だが、本当にそうだろうか。「今時の若者は興味の範囲が半径90センチ」と言った人がいた。ちょうど、セルフィ(selfie:自分撮り)する際のカメラと自分の距離くらいである。「だから、今時の若者の間で自己チュー(selfish)が増えた!」という人がいたら、ちょっと待ってほしい。

加えて、「今時の若者」は、古代エジプトのパピルスに書かれて以来、数千年間も使われている常套句だ。江戸時代の剣術道場の日誌にも、「今時の若者は我慢がなく、掃除もいやがる」といった記述があるようだ。私の世代も、入社時は「モラトリアム世代」などと言われた。趣味よりも会社の仕事に埋没できない人間は、大人になるのを怖がっているだけ、と揶揄されたものだ。当然、当時若造の私は「このオッサン、何言ってんの?」と思っていたが。

ついでに、中高年層からよく指摘される、若者のマナーやモラル、そしてモラール(意欲)の低下については、私はあえて、「では、あなたはどうなのでしょうか」と問いたい。

確かに、若い人たちが傷つきやすいという話はよく聞く。下手にやる気を見せると仲間外れにされることも多いらしい。実際、研修でも、挨拶やアイコンタクトをしない、“いじられ”ないようじっとしている、といった参加者がこの数年、目立ってきた。ただし、マナーについては若者から高齢者まで総じて低下していると見ている。世代間で“日本社会の劣化”について責任のなすり合いをしても何も生まれない。

誌面の都合上、簡単にとどめておくが、終戦後、10年目の1955 ~1990年までの35年間、日本は高度成長期を経験した。それから「失われた20年」を経て25年目を迎えた現在、日本は「思考停止の高度不信社会」の様相が顕著になってきた、と見ている。「高度疑心暗鬼社会」と言ってもよい。

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