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人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第33回 「リトル・ダンサー」川西玲子氏 時事・映画評論家
「リトル・ダンサー」
2000年 イギリス 監督:スティーヴン・ダルドリー

1954年生まれ、メディア・エンタメ時評。中央大学大学院法学研究科修士課程修了(政治学修士)。シンクタンク勤務後、企業や自治体などで研修講師を務めつつ、コメンテーターとして活動。著書に『映画が語る昭和史』(武田ランダムハウスジャパン)、『戦前外地の高校野球 台湾・朝鮮・満洲に花開いた球児たちの夢』(彩流社)等。

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イギリス北部の炭鉱町を舞台にバレエダンサーをめざす少年の夢と家族愛を描いた感動作。主演のジェイミー・ベルは15 歳で英国アカデミー賞・主演男優賞を受賞。2005 年にはミュージカル化され5大陸で上演し、1000万人以上が観劇。
Film ©2000 Tiger Aspect Pictures (Billy Boy) Ltd. All rights reserved.

○家族愛だけではない
『リトル・ダンサー』は、イングランド北部の、さびれつつある炭鉱町から、少年がバレエダンサーをめざして飛翔していく物語である。2000年に公開されて世界中でヒットした。作品の質に対する評価も高く、演出家出身のスティーヴン・ダルドリー監督は第1作目にして、アカデミー賞の候補にもなった。
爽やかで感動的なラストが素晴らしい。そのためか、少年の夢を支える家族の愛と感動の物語だという印象がある。最近はどんなドラマや映画も、そういう括りで宣伝される。家族の愛と感動の物語は確かに、誰にでも受け入れられる普遍的なテーマだ。だがそれを強調し過ぎると、作品に対する見方が一面的になって、他の要素が抜け落ちてしまう。
実際、監督は『リトル・ダンサー』のテーマを、「共同体の再生」だと語っている。私はそこに感動した。当時、まだ40歳になるかどうかという若さだった監督が、ニューレイバー政策を推進するブレア政権下で、サッチャー政権時代に炭鉱町で何が起きていたかを描いたのである。
サッチャー政権下でイギリスは大きく変わった。弱者を含めた共同体の維持から、適者生存、競争原理の社会に変貌した。その変化が典型的に現れたのが炭鉱だ。イギリスの炭鉱には独特の文化があり、それが労働運動を支えていた。サッチャー政権はそれに闘いを挑んだのである。炭鉱町では、サッチャー政権の政策に反対するストライキが頻発していた。
○苦しい生活、輝かしい夢

時は1984年。炭鉱はストライキ中で、収入が入らないから生活は苦しい。街には未来も希望もない。母を亡くして父と兄の3人で暮らす11歳のビリーは、そういう中で暮らしていた。そして父に勧められて、ボクシング教室に通っている。だが負けてばかりだ。
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