J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2011年11月号

論壇1 ~カギは「発揮すると活力の出る強み」~ 強みで高い成果をつくり出す時代の到来

社員一人ひとりの弱みを克服するよりも、強みを活かしたほうが早く高い成果を上げられることは認知されてきた。しかし、実際に社員一人ひとりの強みを活かしている組織はまだ多くないように見受けられる。そこで、強みを活かした個人・強みを活かした組織についてのポジティブ心理学者の考察、強みに対する考え方、その視点と応用について、事例も含めて解説を試みたい。一人ひとりがイキイキと働き、高い生産性を上げる組織づくりに、「強み」は重要な推進力になるのである。

渡辺 誠(わたなべ まこと)
一般社団法人 ポジティブイノベーションセンター 代表理事 サクセスポイント 代表取締役
ニックネームはMax Watanabe。中央大学卒業後、富士ゼロックスへ入社。サウスカロライナ大学へ留学。2006年に人材開発・組織開発に携わるサクセスポイント株式会社を設立し、日本で初めてポジティブ心理学を導入。2008年には一般社団法人ポジティブイノベーションセンターを設立。ポジティブ心理学の応用を研究している。2011年、強みを計測するアセスメントRealise2を日本に導入。

なぜ、「強み」が重要なのか

スポーツの競技を思い起こしてほしい。たとえば水泳。自由形・平泳ぎ・背泳・バタフライの4種があるが、あなたはどの競技に出場するだろうか。バタフライが得意ならバタフライ競技に参加するだろうし、得意でない種目に好んで参加することはあるまい。ボクシングも柔道も同じ。自分が最も得意な技で戦いに臨むのが、競技の世界では当たり前である。では、企業はどう戦うのだろうか。弱みを克服してオールラウンドに戦うのか?それとも、強みを活かし、そこに集中して戦うのだろうか?ピーター・ドラッカーは、強みで戦うことを提唱した。多くの企業が「選択と集中」を合言葉に、強みである事業にリソースを集中してきた。強みに集中したほうが、より高い成果を上げられることが経験的にわかっていったからである。そして、ドラッカーが強みについて強調して語っているのは事業だけではない。組織の一人ひとりの強みについても、さまざまな本で繰り返し述べている。

●成果をあげるためには利用できる限りの強み、すなわち同僚の強み、上司の強み、自分自身の強みを使わねばならない。

●強みこそが機会である。強みを活かすことが組織の特有の目的である。

●人間それぞれが持っている弱みを克服することはできない。しかし、組織は人の弱みを意味ないものにしてくれる。

(P.F.ドラッカー『(新訳)経営者の条件』1995年 ダイヤモンド社 P.96

皆さんの会社では、社員一人ひとりが、自分の強みを意識して戦っているだろうか。それとも弱みを克服することに力を入れているだろうか。いや、その前に、強みを自覚しているだろうか。意識はしていたとしても、実際に強みを発揮しているだろうか。本当に強みを意識した働き方を取り入れている企業はまだ多くないだろう。

ポジティブ心理学者の強み研究

ポジティブ心理学という学問がある。誰もがWell-being――「より良い生き方」をするために、心理学を役立てようという科学的な研究だ。そして、ポジティブ心理学では「強み」の研究が盛んに行われている。

強みを使う効果

強みを発揮して仕事をすると、どのようなことが起きるのだろうか?英国のポジティブ心理学者であるアレックス・リンレイをはじめ、何人ものポジティブ心理学者が調査した。その結果、強みを発揮すると、次のような効果があることがわかった。

●目標を達成しやすい

●仕事で高い成果を出す

●エネルギーとバイタリティが出る

●能力開発の効果も高く成長が速い

●自信がつく

●ストレスが少ない

●困難に打ち勝つ力が強くなる

●エンゲージメントが高くなる

組織の中にこのような人が多く溢れたら、高い成果を上げる集団になるに違いない。上記の結果は、いくつもの統計に基づいた手法で証明された結果である。統計で証明されていることは、繰り返し利用できる可能性が高い。良い成果、高い成果を我々の組織でも上げられるのだ。成果をより出したい人、働きがいを持つ人、そんな人を増やしたいなら、検討してみる価値がある。心の病に悩む人を出さないためにも大きな期待ができる。

強みはハイパフォーマンス組織をつくる

実際に、このような人が組織の中に満ちるとどんな組織になるのだろうか。これに関してもリンレイなどのポジティブ心理学者の調査結果がある(図表1)。強みを使う一人ひとりの小さな変化が、組織の大きな変化をもたらす。強みベースの組織はこの図にあるような大きな変化をつくり出すのである。それは、経営者、管理者、人事の誰もがほしい成果だ。

強みとは

ここで改めて「強み」について考えてみよう。どのようなことを強みというのだろうか?先述のリンレイは強みを次のように定義している。「強みとは、人の最大限の力を引き出し、高い成果をもたらすものであり、すでに存在する特有の振る舞い・考え方・感じ方である」強みはどんな現れ方をするのか。

●強みについて話すと力が入る

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