J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2011年11月号

酒井穣のちょっぴり経営学 第10回 ファイナンス2 企業は資金をこう調達する!

前回は「ファイナンス1」として、会計とファイナンスの違い、そして「未来のお金を考える」というファイナンスの基本について確認し、その計算方法についても詳しく紹介した。今回は具体的に、企業の中のファイナンス活動――資金調達の仕方について追ってみていく。

酒井 穣(さかい じょう)
フリービット取締役(人事担当/長期戦略リサーチ担当)。慶應義塾大学理工学部卒。TiasNimbasビジネススクールMBA首席。商社勤務の後、オランダの精密械メーカーに転職。2006年にオランダでITベンチャーを創業しCFO就任。2009年4月に帰国し現職。近著に『これからの思考の教科書』(ビジネス社)、『「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト』(光文社)がある。人材育成メルマガ『人材育成を考える』(無料)を毎週発行している。http://www.mag2.com/m/0001127971.html

前回は、「会計」と「ファイナンス」の違いを説明し、お金の時間的価値(Time Value of Money)という概念について考えました。具体的には、「ファイナンス」は、過去のお金について考える「会計」とは異なり、未来のお金を考えるところに特徴があることについて触れました。今回はもっと具体的に、企業におけるファイナンスの活動について見て行きます。

ファイナンスと企業の成長

企業経営においては、経営者は、絶えまない企業価値の向上を狙っていきます。そのために、通常の経営では「いついつの時点で、どれぐらいの売上・利益規模になっている」という目標(予算)を立てます。これは将来のお金を考えることですから、こうした行為は当然、ファイナンスの範疇になります。経営者は、この目標を達成するためには、どういったことに、いくらのお金を投資すべきなのかを考えます。この時、投資に使えるお金が多ければ多いほどよいのですが、そうしたお金の調達にはコストがかかります(=資金調達コスト)。それらは具体的には、銀行からお金を借りる時の金利や、会社の株を買ってくれた株主に支払う配当金だったりします。ですから、投資に使うお金を自腹で出すのではなく「調達」する場合は、コストを抑える必要があるため、めいっぱい調達すれば良いというものではありません。必要な投資資金を、必要なタイミングで、最も安く調達するのが賢い経営なのです。企業はどのタイミングで、どのような資金調達の方法をすべきか、ということについては『企業ファイナンス入門講座』(保田隆明/著、ダイヤモンド社)という本の中で詳細に述べられています。この本の内容をベースに、以下、説明をしていきます。図表1を見てください。まず、設立後まもない企業は一般に倒産確率が高いため、銀行から「この会社にお金を貸しても大丈夫だ」という信用が得られないのが普通です。そこで資金調達は、リスクを取って大きな儲けを狙うベンチャー・キャピタル(VC)やエンジェルと呼ばれる個人投資家から行うことになります。運よくこの投資が成功し、企業価値が高まれば、銀行からの信頼が得られる段階に成長するでしょう。

個人の借金と企業の借金の違いは?

ところで、銀行から個人が借金する場合と、企業(法人)が借金する場合の違いをご存じでしょうか?これは意外と知らない人が多いのですが、とても重要なポイントです。個人の借金においては、定期的に借金の一部(元本)を返済しながら、借金を返済し終わるまで、ずっと金利を支払っていきます。ところが企業の借金においては、元本は返済せず、金利だけを支払っていくことが多いのです。なぜなら、銀行は金利で儲けており、究極的には、ずっとクライアントにお金を借り続けていてもらいたいからです。そうすれば、ずっと銀行に金利が入ってきます。しかし個人は、いつかは死ぬ運命にあります。収入が途絶えてしまい、借金を返すことができなくなることもあります。さらには、借金を返さないまま逃げてしまうかもしれません。こうしたことが起これば、銀行は金利が取れなくなるでしょう。ですから銀行は、相手が個人の場合は、少しずつでも借金の元本を取り戻すという戦略を取ります。対して企業は、基本的に死ぬということがありません(これを前提する考え方を「継続企業の前提(ゴーイングコンサーン)」という)。従業員や経営者が死んでも、その後を継ぐ人が現れ、企業としてはずっと継続していきます。もちろん、企業といえども、倒産して解散してしまうリスクもあります。が、企業はある程度の規模にまで成長すれば、そうしたリスクを低く抑えることができるようになります。よって銀行は、この規模にまで成長した企業に対しては、お金を貸しつつ、金利だけ徴収して、元本の返済は求めないという戦略を取るわけです。企業としても、銀行から借りられたお金は金利さえ返済しておけば、ずっと投資に使うことができるわけです。ですので、金利を支払う負担が大きくなり過ぎない限り、企業は銀行からお金を借りるのが普通です。

株式上場できるのは1,000社に1社!

そんなこんなで、株式上場にまでこぎつけるのは、なんと1,000社に1社といわれます。株式上場というのは要するに、会社の株式を多くの人に購入してもらう形で行われる資金調達です。そして、この段階で株に値段(株価)がつくので、企業価値は、発行されている株式数に、この株価をかけたものになります(この金額によっては、企業の経営権を取得できる)。

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