J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2010年11月号

調査データファイル 第105回 番外編 「平成21年 若年者雇用実態調査」から明らかになる 自分の能力を活かしたいと願いつつ、迷う若年者たち

就職氷河期以降の若者は、就職に対して、団塊の世代とは比べものにならないほどの困難を強いられている。
しかし、そんな厳しい環境に置かれたからこそ、没個性的な団塊世代とは異なり、一部に非常に高い職業能力を携えた人材も育っている。
若年層に前向きな職業観を与え、その能力を開発するには、企業と学校が協力して、これまでとは違うアプローチをとるべきである。

伊藤 実氏
労働政策研究・研修機構 特任研究員

こうも違う団塊世代と若年世代

筆者のような団塊世代から見ると、最近の若者は職業的なキャリア形成という点から、非常に不利な状況に置かれていて気の毒に思う。団塊世代が卒業を迎えた時代環境は日本経済が高度成長期にあったため、現在の就職難とは反対に人手不足だった。そのため、100社以上に履歴書を送ったり、事前に採用面接の訓練を受けたりといった現在の「就活」とは全く異なった就職活動を経験した。

そもそもリクルートスーツといった没個性的な定番スタイルなどなく、社会常識の範囲内で背広を用意した。ちなみに筆者はグレーの背広を着ていた記憶がある。そして、2~3社に履歴書を郵送し、2社の面接を受けただけで採用通知を受け取った。

結局、筆者は就職するのをやめて大学院に進学し、研究者の道を歩むことを選択し、大学院卒業後は、日本企業の経営や人事管理を調査研究するといったことを職業とした。研究対象となった、1980年代までの日本の経済や企業の成長力は目覚ましく、世界中から注目されていた。

日本企業のマネジメントスタイルもいわゆる“日本的経営”といわれたものが支配的で、企業間の取引慣行、人事管理・人材育成などは、長期的な観点から行っていた。したがって、新卒を定期採用し、時間をかけて企業内で人材を育成していくといったマネジメントが支配的であった。

こうしたマネジメントスタイルのプラス面は、結果的に企業成長と社員の昇進・昇給を同時に実現していった。社員は定年まで安心して働け、頑張れば昇進することができた。一丸となってモーレツに働き、将来に対する不安よりも、希望が圧倒的に支配的であった。マイナス面はといえば、没個性的なモーレツ社員を大量生産し、長時間労働や単身赴任といった、尋常ではない労働環境が蔓延したことである。

一方、日本の経済や企業の成長力が低下していった1990年以降、いわゆる就職氷河期に学校卒業を迎えた若年世代は、団塊世代と逆の環境に置かれ続けている。彼らには、将来に対する希望よりも不安が圧倒的に支配的なようである。しかも、就職難や企業内人材育成機能の弱体化によって、世代としての職業的なキャリア形成や能力向上が、かなり遅れているように感じられる。

ただし、悪いことばかりではない。没個性的な団塊世代とは異なり、一部に非常に高い職業能力を携えた人材が育っている。いわば、世代の形状が、団塊世代は一定レベル以上のところで固まりとなっているのに対して、若年世代は、団塊世代のような固まり部分が非常に薄く、団塊世代を突き抜けたハイレベルの人材から、職業的なキャリア形成に遅れてしまっている人材まで、細長い分布の形状をしているのではないかと思われる。理想的な世代形状にするには、職業能力やキャリア形成レベルが低い人材を一定レベル以上に引き上げて固まりになるようにするとともに、その固まりを突き抜けた優秀な人材の層を厚くすることである。

同じ若年者でも二極化が進む

若年世代の職業意識を調べた調査結果が最近公表された。厚生労働省「平成21年若年者雇用実態調査」である。事業所調査と個人調査の結果が公表されているが、個人調査に関して、いくつかの興味深い傾向が現れている。なお、同調査が集計対象とした若年労働者は、15~34歳の1万5124名である。

まず、職業能力の習得・向上に対する考え方を見ると、「必要と感じている」と回答した割合は83.5%となっており、全体的な学習意欲は高いようである。ただし、属性による差がかなり認められ、最終学歴と年齢階層による差が大きくなっている。

最終学歴に注目すると、高学歴層ほど学習意欲が高く、中卒(60.3%)、高卒(75.2%)に対して、大学卒、大学院卒の回答率は、それぞれ92.9%と96.9%と、かなり高くなっている。中卒と大学院卒では36.6ポイントの差が生じている。また年齢階層別に見ると、歳を重ねるほど学習意欲も高く、15~19歳(61.0%)、20~24歳(79.7%)、25~29歳(84.5%)、30~34歳(86.4%)。15~19歳と30~34歳では25.4ポイントの差が生じている。

このように、学習意欲には、最終学歴や年齢によってかなり大きな差が生じており、中卒や高卒グループや、年齢の若い階層で、学習意欲がそれほど高くないといった傾向が認められる。学校教育の早い段階から学習意欲の高いグループと低いグループに二極化され、それが職業生活の初期段階にも投影されてしまっているようである。企業が若年者を受け入れる前の、学校教育の段階で、学習意欲に関する人材の二極化がすでに始まっているといえよう。

さらに、職業能力の習得・向上を「必要と感じている」と回答した人が、その方法についてどのように考えているのかを見ると、「会社に頼らず自ら習得・向上させたい」(15.7%)や「会社が行う教育訓練で習得・向上させたい」(26.2%)とする人は少数派である。最も多いのは「会社が行う教育訓練と自らの両方で習得・向上させたい」(57.8%)で、全体の半数を上回っている(図表1)。

成果主義管理が導入され始めた1990年代後半以降、教育訓練やキャリア形成は会社依存ではなく、個々の社員が自立的に行うべきであるといった方針に転換する企業が増加した。しかし、キャリアアップに直結した社会的な職業教育訓練システムがそれほど整備されていない日本で、この転換を図るのは、かなり無理があったと筆者は見ている。やはり、会社と自身の両方で教育訓練・能力向上を達成していくというのが、現実的なやり方であろう。

ただのわがままではない若い社員の転職希望理由

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