J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2010年11月号

JMAM 通信教育優秀企業賞 表彰企業事例報告 日本通運 “他己啓発”から始まる自ら学ぶ職場づくり

通信教育を人材育成に活用し、自ら学ぶ風土を醸成している企業に対し授与される「JMAM 通信教育優秀企業賞」。
物流業界をリードする日本通運は、階層別教育・自己啓発の双方で通信教育を活用。
集合研修との連動や、通年での受講受付などの独自の試みを行い、学びへの気づきを1人でも多くの従業員が得られるよう促す取り組みによって受賞に至った。

池内研二
NITTSUグループユニバーシティ 次長
川口弘之
NITTSUグループユニバーシティ 課長

日本通運
1872年創業、1937年設立。陸・海・空での運送事業をはじめ、倉庫業など、物流にかかわるほとんどの分野で幅広く事業を展開。物流のIT 化にもいち早く取り組み、独自の情報システムや個別の顧客ニーズへの対応ノウハウによって、最適な物流サービスを提供する。
資本金:701億7500万円(2010年3月現在)、売上高:1兆5696億3300万円(連結、2010年3月現在)、従業員数:38984名、(個別、2010年3月現在)
取材・文/石原野恵 写真/日本通運提供、石原野恵

物流の原点に立ち返る自律型人材の育成

世界37 カ国、211 都市に382 拠点を持ち、独自の物流情報システムとノウハウで物流業界トップの実績を持つ日本通運。同社では創立70周年を迎えた2007 年より、人材育成体系の大幅な見直しを行ってきた。かねてから階層別研修と通信教育をブレンドして育成に活用してきた同社だが、今回、改めて通信教育を教育体系に組み込み、さらなる展開を図っている。

その背景には、近年の経営環境の変化に伴い、必要な物を必要な時に届けるという新たな戦略的管理システムのあり方が求められていることがある。高度化した物流システムをグローバルに展開するためには、それに対応できる人材の育成が必須であるとして、2010 年4 月、内部組織として『NITTSU グループユニバーシティ』(以下NGU)を設立。現在は、グループ全体としての教育体制の刷新・構築を推進している。

NGU の次長、池内研二氏は同社の人材育成について次のように語る。「日本国内に限らず広くグローバルに市場が拡大している中で、付加価値を生み出し、お客様のニーズに応え、信頼される存在であり続けることが私たちの使命。それには自律した個人の発想力や提案力、そしてやり抜く実行力が求められており、自律型人材の育成を方針に掲げて取り組みを推進してきました」(池内氏)

またこうした動きについて、「ある意味原点回帰だと思っているんです」と語るのは、同じくNGU 立ち上げメンバーの川口弘之氏だ。「もともと物流という仕事は、単に物を運ぶだけではない。たとえばおばあちゃんが孫のためにプレゼントを送る時、届けたいのは気持ちそのものです。物流の新たな潮流もありますが、その原点は人であり、人材は物流業にとって唯一の経営資源といっても過言ではありません。この原点に立ち返り、人材育成の各種施策を講じています」(川口氏)

経営計画と人材育成を結ぶ教育を求めて

さらに2010 年度より、同社は3カ年の中期経営計画として、「グローバルロジスティクス企業としての成長」「戦略的環境経営の推進」「経営基盤の強化」「CSR 経営の推進」という4 つの基本戦略を掲げている。「これまでの教育訓練計画は、単年度で完結するものがほとんどでした。しかし経営計画の実現には、人材育成との連携が不可欠。この経営計画と連動した長期的な教育訓練計画を構築し、推進していくのがNGU の大きな役目です」(池内氏)

この4つの基本戦略に基づいて教育訓練計画へと具体的に落とし込んでいった形が、階層別研修や部門別研修、通信教育を含めたNGU の人材育成フレームである(図表1)。

NGU の土台となるのが、ネット・キャンパスを含めた各地のキャンパス。2010 年5 月には、メインキャンパスである人財開発センター「NEX-TEC 芝浦」が竣工した。

これを土台として「ビジネスリーダーの育成」と「プロフェッショナル・スペシャリストの育成」の二本柱の教育方針を掲げ、具体的には、新入社員研修を皮切りに、各階層別研修や部門別研修を行っている。

これらの集合研修だけではなく、各階層に応じた通信教育を適宜組み入れて、効果的に活用していることが、今回同社の『通信教育優秀企業賞』受賞につながった(図表2)。

通信教育制度は一般的に、階層別・部門別教育を目的としたものと、自己啓発を目的としたものの2種類に大別されるが、そのうち階層別・部門別教育目的の通信教育は、受講を昇格の要件としていたり、一部必修とするなど、制度化されていることが多い。

同社では、入社すれば誰でも必ず一度は通信教育に触れるような仕組みがあるという。会社として求めるスキルや知識を、階層別の研修と連動した通信教育によって提供しているのである。

たとえば部長・課長職であれば、マネジメントのエッセンスを学ぶコースやMBA コースが昇格の条件になっている。また新入社員は全員、『必須知識コース』と各部門の専門に特化した『実務コース』を選択して受講する。専門に特化したコースは、同社内のそれぞれ専門のエキスパートが独自にテキストを作成している。通信教育が育成体系の中にしっかりと組み込まれているのだ。

そして必修の通信教育で肝心なのは、受講したコースをきちんと修了してもらうこと。そのためのフォローにも注力していることが特色である。「毎年管理職以下の全従業員を対象として、必須と知識と実務2 コースの総合得点を競う『業務コンテスト』を開催しています。成績優秀者には洋上研修への参加資格を与えたり、一定の得点に満たない場合には再履修をお願いし、所属する支店全体でフォローしてもらうなど、全社的に通信教育を使って学ぶ機会を設けているんです」(川口氏)

キャリア開発の主軸は通信教育による自主学習

さらに自己啓発目的の通信教育は、キャリア開発支援において、非常に大きな役割を担っている。「キャリア開発や自己啓発については、年齢や階層にかかわらず、そのつど必要なことを自発的に学んでいって欲しいと思います。そのためには、各種集合研修で、自らのスキルや知識、これまでの経験などを振り返り、さらに学びを深める必要性を実感してもらうことが重要だと考えています。そして社員自身が、学びたい、学ばなくてはいけないと実感して納得した時に、いつでも学習の機会を用意しておきたい。それを可能にするものとして、通信教育を提供しています」(池内氏)

自己啓発を目的とした通信教育の受講は強制ではない。にもかかわらず、ここ数年同社では受講生が3倍近く増加した。2007 年頃までは年間500 人に満たない受講者数だったのが、近年では半期で500 人を超え、年間では1000 人を優に超える従業員が受講しているという。

できるだけ多くの従業員に、通信教育で学ぶ機会を活用してもらうため、同社では独自の工夫を施している。以下、具体的に紹介する。

①自己啓発推奨コースを研修修了時に紹介

同社では、前述したような各種階層別研修の際に、推奨する通信教育コースの一覧を、1 枚の資料にまとめて配布している。「自分たちが受けている研修の内容と関連して、さらに学びたい、または足りない部分を補いたいと思った時に、どういったコースがいいのかを知ってもらうための資料です。これを配布するようになって、研修直後の申込みが増えました」(川口氏)

②受講申込みを年間通じて受付

適宜行われる階層別研修の修了後、すぐに通信教育を受講できるという流れを成立させるために、以前は年2 回に設定していた受講申込み期間を、基本的には年間通じていつでも受け付けるようにした。

あわせて、従来は各支店の管理部門が申込みを取りまとめていたのを、各個人がオンライン上で申込みできる仕組みを導入。タイミングを気にせず、各自がコースの内容を吟味し、学びたいと思った時にすぐ受講できる環境を整えているのだ。

③事業の流れと連動した開講時期

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