J.H.倶楽部

無断転載ならびに複製を禁じます。なお内容は取材・掲載当時の情報です。

月刊 人材教育 2010年11月号

ベンチャー列伝 第22回 市場価値の高い人材は挑戦と支援によって育つ

顧客企業の抱える課題を解決するのが、アウトソーシング事業を担うエスプールのミッション。人材育成を同社のコア・コンピタンスと位置付け、柔軟な人事制度を設けたり、新規事業へのチャレンジを可能にする施策を講じるなど、社員の能力向上支援を充実させている。

エスプール 代表取締役会長 兼 社長 浦上壮平(うらかみ・そうへい)
1966年兵庫県生まれ。芝浦工業大学卒業。在学中から友人と商品企画、マーケティングなどの会社を設立した後、家庭教師派遣会社にCOO のポジションで就任。その頃、多くの若者が目標を失ってフリーターとなっていく様子を見て、彼らを受け止める“場”をつくろうと決意し、1999年にエスプールを設立、現在に至る。

エスプール
1999年設立。物流アウトソーシング、セールスプロモーションなどのアウトソーシング事業を中心に、関連会社を含め、人材サービス、システムサービス社員研修等々を提供。戦略的アウトソーシングによって企業の変革を支援している。2006年大証ヘラクレス上場。売上高:58億万円(2009年11月期実績、連結)、従業員数:300 名(2010年5月現在、連結)
取材・構成/福田敦之、写真/石原野恵

プロ集団によるアウトソーシング事業

1999 年に創業されたエスプールは、人材派遣事業をはじめとして、物流、セールスプロモーションなどのアウトソーシングを請け負い、事業を拡大してきた。そもそもなぜアウトソーシングを手掛けるようになったのか。創業者である代表取締役会長兼社長の浦上壮平氏はこう語る。

「エスプールを創業した頃は就職氷河期で、大学を出ても就職できない人たちが多くいました。私が当時勤めていた家庭教師派遣会社でも、アルバイトとして在籍していた優秀な学生がフリーターになり、その後も仕事にモチベーションを持てず、フラストレーションを溜めてしまうという状況に直面してきました。彼らがやりがいを感じ、成長できる仕事を与えたいと思ったのが設立理由の1 つです」(浦上氏、以下同)

そう考えて行き着いた事業がアウトソーシングだった。アウトソーシングには、大きく分けて2 つの形態がある。1 つは、専門特化したプロ集団を形成し、顧客企業が必要とする機能を提供すること。創業当時の主力事業である人材派遣業はそれに当たる。派遣は、“雇用リスクのアウトソーシング”といえるもの。企業にとって人を雇用する責任は重く、社会保険の加入、福利厚生費といった諸々の手続きなども発生する。それを同社が一手に引き受ければ、顧客企業の負担は軽減されることになる。

2つめは、多くの会社が共通で行っている作業を、集約して代行することで、企業のコスト削減を実現するもの。たとえば近年同社で大きく成長している物流アウトソーシング業務がその一例だ。インターネット通販や販売促進キャンペーンなどで、企業が個人に荷物を送る機会が急増したものの、大々的な物流システム投資ができなかったり、物流コストを削減したいという企業も多い。そこでエスプールが物流倉庫を保有し、物流システムを導入して、発送代行業務をはじめとした一連の物流業務を数十社から受託し、一括管理する。数十社の発送をまとめて管理することで配送会社と料金交渉できるようになるなど、スケールメリットによって顧客に低コストで高付加価値なサービスを提供できる。

「いずれにせよ、当社が扱っている業態は、そもそもプロの人材を集めにくいニッチな分野です。だからこそ、当社が人材を教育してノウハウを確立し、プロ集団をつくることが、お客様の課題解決に直結します。そのため、創業当初から人材を当社のコア・コンピタンスとして、育成に力を入れてきました」

帰属意識を高め将来への希望を生む

通常“派遣”というと、時間給でしか評価されず、責任もさほど重くないといったイメージがある。しかし同社では、スタッフのスキルを適正に評価し、派遣やアルバイトからの社員登用を積極的に推進してきた。

「アウトソーシングの現場では、経験があり、臨機応変に現場を仕切れる人が重宝されます。そうした人を活かすため、現場でスキルを積み重ねてきた人に、社員になってもらうようにしました」

また、派遣スタッフの評価方法にも同社の特徴がある。

「グループ型の派遣という形で大勢のスタッフを顧客企業に派遣する場合、きちんとした組織の形態をとります。リーダーシップを持った人を配置して、リーダーを中心に仕事を遂行します。その際、給与を労働時間だけではなく、成果によっても換算する仕組みを導入しました。成果が良ければその分評価される。働く人も会社も、お互いにやる気が出る仕組みを構築してきたのです」

さらに、チーム意識やモチベーションは“プロ”として欠かせない要素だ。アウトソーシングの場合、社員がそれぞれの顧客企業で仕事をすることがある。そうなると、自社への帰属意識が薄くなりがち。また、“やらされ仕事”だという感覚を持つと、モチベーションも低下してしまう。そこで重要なのは、会社側がいかに動機づけるか。たとえば同社のSE は、顧客企業で勤務する傍ら、新しいサービスを開発する「フューチャーラボ」という取り組みに参加できる。

「フューチャーラボとは、自分たちで新サービスを生み出す研究開発の場です。顧客が望むシステムを自主的に開発し、Web 上でマーケティングを行う。収益の見込みが立てば本格的に商品化していきます。単に客先で仕事をするだけではなく、自分で商品を開発する楽しみがあることで、仕事への充足感が得られ、会社への帰属意識も高まるのです」

優秀な人材を集めても、金銭のつながりだけでは弱い。社員が楽しいと感じない限り、働いても将来がないと感じてしまう。そうならないために、将来に希望を持てる仕組みをつくっているのだ。

「とにかくやれ」では今の若手はついてこない

このような同社の人材マネジメントは、浦上氏がエスプールを起業する以前、家庭教師派遣会社時代の経験が基盤となっている。

「若者とどう付き合っていけばいいのかを、この時代に学びました。家庭教師としてアルバイトで働く学生は、社会人と違い、仕事が嫌ならすぐに辞めてしまう。金銭だけでは働く動機として不十分なのです」

当時、浦上氏は30 歳前後。20 歳前後の学生とは10 歳ほど年齢の差があった。その感覚の差異の原因は、受けた教育の違いにあると浦上氏は分析する。浦上氏が教育を受けた時代には、絶対的な上下関係が存在していた。「子どものうちは大人に相手にされない」「父親や学校の先輩は絶対的な存在」「女性は男性より弱いもの」……これらの“昔ながら”の価値観は、世代が異なる若者には通用しない。今の若手は、男女は平等で、子どもにも人格があり、自分の意見をいってよいという前提で教育を受けている。そのため、理屈っぽいところがあり、道理が通らないと納得せず、行動もしない。「いいから、とにかくやれ」では誰もついてこない。

「何を教えるにしても、その背景と理由を説明することが重要なんです。この点が、今の若い人たちと私の時代との大きな違い。では、どちらがいいかというと、それは今のほうが断然いい。今、スポーツ界を中心に、世界に通用する人材が輩出していることを見ても明らかです。かつて、学生と直接触れ合う中でこうした世代間の違いを強く認識したからこそ、彼らが理解し、納得できるようなマネジメントを心がけてきました」

若手も部長も常に挑戦する気概を

こちらはJ.H.倶楽部会員限定記事です。
ご入会後、続きをお読みいただけます。

残り:2,557文字

/

全文:5,113文字

【入会・年会費無料】

J.H.倶楽部は人事の仕事に役立つ特典が満載です!

  1. 総数2000本以上の人事の実務に役立つ記事(※)が閲覧可能
    ※専門誌『Learning Design』(旧『人材教育』)の記事
  2. 新サービス・お役立ち情報(調査報告書・ホワイトペーパーなど)の先行案内
  3. 会員限定セミナーへのご招待/講演動画・配布資料の閲覧
  4. 興味関心に沿った必読記事を、メールマガジンでお知らせ!