J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年05月号

CASE 2 テルモ トップダウンからボトムアップへ 自由闊達にものが言える組織風土改革と健康経営

医療機器や医薬品、栄養補助食品等の製造・販売を行うテルモは、2009年頃から風土改革に取り組んできたが、近年ではその取り組みをトップダウンから、ボトムアップへとシフト。
特に“自由闊達にものを言える” 組織への取り組みに注力している。

山本晃史氏 人事部 部長代理
小原 史紗子氏 人事部 人事企画チーム
テルモ
1921年9月設立。「医療を通じて社会に貢献する」という企業理念のもとに、医療機器・医薬品の製造販売を世界160カ国以上で行う。
資本金:387億円、連結売上高:4674億円( 2014年3月期)、連結従業員数:1万9333名(2014年9月末現在)

[取材・文]=木村美幸 [写真]=テルモ提供、編集部

● 背景1 個人の成果からチーム力重視へ

テルモが、1990 年代半ばから実践していた能力成果主義を見直し“、個人の成果”から“チームの成果”へと焦点を移したのは2009 年のこと。まずはその背景について、人事部の山本晃史部長代理に伺った。

「個人の成果にフォーカスすることで、一人ひとりが主体性を持って仕事に取り組むようになりました。しかしその一方で“チーム力で何事にも取り組む、という意識が薄れてきたのでは”という問題意識が生まれていたのです」

近年、医療の発達に伴い、市場では医薬品と医療機器を組み合わせた製品まで登場してきている。そんな状況下で新たなイノベーションを生み出すには、技術や製品ごとに分かれているさまざまな部署のメンバーが、組織の壁を越えて連携しながら各々の技術を融合させていく必要があった。

そこでスタートしたのが、問題解決のための組織横断的なプロジェクトチームを誰でも自由に編成してよい、としたチーム制度だった。

「もちろん、それまでも目的に応じて組織横断プロジェクトが発足することはありましたが、特に優秀な人材は上司が囲い込んでしまい出さない、という状況が起きていました」

そこで、制度を推進していくにあたっては、組織とは本来、ミッションの達成や課題解決のために必要な人材が集うものであり、その基本に立ち戻ろうというメッセージを、専門部署の推進室が中心となり、ことあるごとに発信していったという。

「すると、どの部署のリーダーもナンバーワン人材を気持ちよく出してくれるようになったんです」

チーム制の成功例には、ある工場の生産技術の担当者の声かけで、研究開発部門からマーケティング部門まで多彩な人材が集まり、医薬品では本来難しい包装のコストダウンを実現したといったものがある。他にも、多くの成果を上げ、成功例も発表イベント等を通じて全社で共有された。

● 背景2 次のステージへ

しかし、そのチーム制度は2011年秋に終了することになる。

「意識改革としては十分功を奏し、風通しのよい組織の土台をつくり上げたと思います。何かあれば組織横断的なチームを自発的に立ち上げることは、現在も当たり前のように行われています。

ただ、この制度は強烈なトップダウンで始まったものでした。それに全社で従うことは、結局のところ“指示待ち”なのではないか。もっと現場主体で考えていこう、ということになったのです」

こうして2011年より、中尾浩治氏の会長就任を機に新たな組織風土改革が始まった。めざすは“自由闊達に何でも話せる働きがいのある職場”で、その改革の柱は以下の4つである。

①上から変わる

②基本をしっかり(小さな積み重ね)

③多様性受容(ダイバーシティ推進)

④健康経営

具体的な取り組みを順に見ていこう。

● 具体策1 リーダーの評価を全社に公開

①上から変わる

風土改革を実現するためには、トップが変わらなければならない─この1つめの柱に関しては、とりわけ大胆な試みが行われている。

●部長職以上の360度評価の公開

2011年以降、毎年1回実施しているのが部長以上対象の360度評価だ。会長・社長も含む。結果は人事考課には反映されないが、社内イントラネットを通じて全社員に公開されている。

「ご覧のように(図1)、項目によってよい・悪いがはっきりと出るわけですが、そのこと自体よりも“自分は周囲や部下からこんなふうに見られているのか”というギャップに気づくことが大事だと思っています」

このアンケートには、“やってほしいこと”“やめてほしいこと”を書く自由記述欄もある。

「『目的のない会議はやめてください』『腕を組んで人の話を聞くのは不愉快です』『ちゃんと挨拶を返してほしい』など、かなりストレートな記述もあります。これらも一部はイントラネットで公開しますし、本人には全てフィードバックしています」

●自由闊達と本質議論に係る宣誓書(図2)

「これは2013 年に、リーダークラスの者全てに書かせたものです」

職場で、建設的な意見を言い合える雰囲気を醸成することを、書面で約束させているのである。

●働きがいアンケート

「働きがいアンケート」は年に1回、全社員が回答するものだ。「私の職場はチームワークが強い」「経営方針がしっかり伝えられている」等の設問があり(図3)、この結果もまた、部署ごとにまとめたうえで、自由記述の一部と共にイントラネットで公開している。

「組織の雰囲気や風土はリーダーによるところが大きいため、リーダーにフィードバックを行っています」

これも“自由闊達にものが言える風土をつくろう”という取り組みのため、回答は完全無記名。オンラインで行われた回答は外部専門家が分析・集計するため、人事部のスタッフすら、誰がどの回答をしたのかはわからない仕組みになっている。だからこそ、誰もが上司や組織に対する本音を明らかにできる。

「働きがいアンケート」の利点について、人事部 人事企画チームの小原史紗子氏によれば、結果が出た後は、「部門によって程度の差こそあれ、『今年はこの項目を改善していきましょう』『では、具体的に何から手をつけよう?』といった話し合いが行われている」とのこと。

また、前出の山本氏も「例えば“職場の整理整頓ができているか”という設問のポイントが他の部署に比べて明らかに低く出れば、リーダーのマネジメントに問題があるのか、部署に与えられているスペースが狭過ぎるのかといった具合に、次の打ち手を考えることができる」と語る。

実際に、初回の働きがいアンケート結果が下位に入ったある部門のマネジャーは、非常にショックを受け、マネジメントの改善に挑戦。人事部の助言も取り入れながら“部門長が仕事を抱えるのではなく、現場のリーダーへ権限を委譲する”というマネジメントスタイルをとるようにしたところ、翌年のアンケートでは評価が大幅にアップしたという。

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