J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年05月号

人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第31回 「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」川西玲子氏 時事・映画評論家

「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」
2012年 米国 監督:アン・リー

川西 玲子(かわにし・れいこ)氏
1954年生まれ、メディア・エンタメ時評。中央大学大学院法学研究科修士課程修了(政治学修士)。シンクタンク勤務後、企業や自治体などで研修講師を務めつつ、コメンテーターとして活動。著書に『映画が語る昭和史』(武田ランダムハウスジャパン)、『戦前外地の高校野球 台湾・朝鮮・満洲に花開いた球児たちの夢』(彩流社)等。


『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』
DVD 発売中  ¥1,419+税
20 世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン
権威ある文学賞ブッカー賞に輝いた、映像化が困難といわれた世界的ベストセラー小説『パイの物語』を映画化したもの。
2013 年、アカデミー賞で4 部門(監督賞・撮影賞・視覚効果賞・作曲賞)を受賞。
©2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

不思議な映画である。もし誰かと一緒に観たら、その後で「あの場面はどういう意味なのか」「あのラストをどう思うか」と、語り合わずにはいられないだろう。私はこの、「語り合わずにはいられない」ということを、いい映画の必須条件だと思っている。本も歌もそうだが、対話を促すということこそ、文化の持つ偉大な力である。ただ「泣けた」というだけでは、何かが足りない。

この映画は、難破した船に乗っていた少年が虎と漂流するという、興味深い小説の映画化である。予告編で、CGを多用した華やかな映像が流れたこともあり、3D冒険映画だと思って観に行った人が多かったようだ。その結果「いい意味で期待を裏切られた」「それだけの映画じゃなかった」という驚きの声が、ネットにあふれた。

ひとことで言えば、この映画は神と生命と運命についての哲学的な寓話である。冒頭、主人公が少年時代の宗教遍歴を語るくだりは、この分野に疎い日本人には少しわかりにくい。だがこの部分が後に、重要な意味を持つのである。

○虎の目に映るのは

インドのフランス領という、珍しい地域の富裕層に生まれた主人公のパイは、17歳の時に一家でカナダに移住することになった。それまで営んでいた動物園をたたみ、カナダで売るために動物も積み込んで、一家は船で旅立つ。だが航海途上に大嵐が襲ってきて、少年は家族で1人だけ助かる。そして最終的に、虎と2人きり(?)で漂流することになるのである。

この虎はリチャード・パーカーという、人間のような名前を持っている。手違いで、そういう名前になってしまったのだ。そのリチャード・パーカーと漂流することになったパイは、大海原で生き残るため、あらん限りの智慧を絞る。救命ボートに積まれていたビスケットを食べ、生き残るための手引書を読み、リチャード・パーカーに襲われないよう、距離を取ったり格闘したりしながら漂流を続けるのだ。

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