J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年04月号

TOPIC 「アトリエMALL」プロジェクトレポート 越境アクションラーニングで得られる学びとは ~若手ビジネスパーソンたちの挑戦 <前編>~

中原淳氏(東京大学准教授)が代表理事を務める一般社団法人 経営学習研究所(MALL)は2014年、異なる組織に所属する若手企業人が体験を通して学べる機会として、越境型アクションラーニング・プロジェクト「アトリエMALL」を
立ち上げ、約半年にわたり実施した。
そのプロジェクトでは何が起き、何が彼ら彼女らの学びとなったのか――2号にわたってレポートする。

取材・文/井上佐保子 写真/編集部

「学びの場づくり」を学ぶ

志ある若手ビジネスパーソン集まれ!異業種越境型プロジェクト「アトリエMALL」始動!「あなた」がラーニングイベントをデザインしてみませんか?

2014年7月、アトリエMALLは、経営学習研究所(以下MALL)の代表理事である中原淳氏(東京大学准教授)のこんな呼びかけからスタートしたプロジェクトである。MALLとは2011年に「これからの人材育成を面白くする」ことを目的に、研究者、実務家の理事8名によって設立された団体だ。設立以来、人材育成に関する数々の実験的なイベントを企画・実施してきた。

2014年は、若手企業人が体験を通して学べる機会として、「さまざまな企業に所属する参加者が会社の枠を『越境』し、人材育成イベントの企画・実施を通して『学びの場づくり』を学ぶ越境型アクションラーニングプロジェクトとして『アトリエMALL』」を企画したのだ。

募集対象は25歳以上39歳以下のビジネスパーソン。8月のキックオフミーティングの後、2チームに分かれ、チームごとにイベントを企画。11月21日と26日にそれぞれイベントを自主開催することをめざした。

プロジェクトに応募するには、1000字程度で応募動機をまとめる必要があった。多数の応募者から選ばれたのは精鋭13名だ。

この越境プロジェクトは何を生み出し、彼ら彼女らはどんなことで何を学んだのだろうか。今号では、イベント開催日までの様子・概要を時系列に紹介する。

【キックオフ】8月6日

19時、アトリエ・メンバーに選ばれた13名がいよいよ顔を合わす。メンバーの所属企業はIT企業、金融、メーカー、広告代理店……とさまざまだ。職種は人事や人材育成部門の人が多いものの、そうでない人もおり、多彩な顔ぶれである。

まずはじめに理事の田中潤氏(ぐるなび執行役員)から趣旨が説明される。「MALLの設立趣旨は、単にイベントの開催ではなく、学びの輪を広げること。皆さんと面白いことを企画して、学びの輪が広がっていくことを期待したい」と話した。続いて、同じく理事の長岡健氏(法政大学教授)は、以下のようにエールを送った。

「この取り組みにはあまり制約がない。しかし、“何をやってもいい自由”というのは、実は“何も決められない不安”と隣り合わせでもある。企業人にとってそれを、組織を離れて考えられるのは貴重な機会。ぜひ、越境しているからこその、予定調和的でないイベントを企画してください」

初めてのミーティング

その後13名は、予め分けられたAチーム6名、Bチーム7名に分かれ、チームごとのミーティングへ。それぞれのやり方で、早速プロジェクトが始まった。

Aチームは、自己紹介を交えながらも、勤務地や自宅の場所、ライフスタイル、集まりやすい曜日や場所、SNSの利用状況など、打ち合わせや連絡の方法などを中心に話を進めた。てきぱきと実務的な雰囲気である。職場も働く時間もライフスタイルも何もかも違うメンバーと、どのように進めていくかを話しながら、互いの理解を深めようとしていた。

一方、Bチームは、自己紹介と共に各々の応募動機について和やかな雰囲気で語り合った。「ワークショップをどう捉えている?」「やる気を失っている人を元気づけたい」など、と価値観を共有することに重点を置きながら、互いの理解を深めていたようだ。

その後は、9月24日の企画審査会までに、お互いの企画をまとめる必要があったが、どちらのチームも忙しい仕事の合間を縫って、ミーティングを何度も重ね、SNSでもやり取りをしながら企画を固めていった。休日も返上である。

なお、Aチームには理事の田中潤氏、Bチームには理事の板谷和代氏(日本航空 教育・研修グループ長)がそれぞれ“担任”となり、アドバイザー、サポート役となり見守った。

【企画審査会】9月24日

●Aチーム(ほしぐみ)企画発表

いよいよ企画を審査される日。Aチームはチーム名を「ほしぐみ」とし、子どもの創造性を高めるワークショップを行う石井希代子氏を招き、実際の保育園を会場に、さまざまな企業から集めた産業廃材を使った大人向けワークショップを行うイベントを企画したと発表した。石井氏は地域ぐるみで教育環境づくりを行うイタリアの「レッジョ・エミリア・アプローチ」を滞在研究した幼児教育実践家だ。

なぜこの企画になったのか。メンバーで企画を検討する中、「学びの未来を変えたい」「学びをもっとオープンでソーシャルなものにしたい」という思いを共有したが、それを具現化していこうとする中、メンバーの1人が興味を持っていた石井氏の試みを紹介。全員で石井氏を訪ねてワークショップを体験し、個人の感性が研ぎ澄まされるような「今までにないワクワク感」を感じたことから、このテーマと内容が決まったという。

●Bチーム(S-park)の企画発表

他方、Bチームはチーム名を「S-park」とし、鬼ごっこなど子どもの頃の「遊び」を創作するワークショップを通し、人材育成について考え、何かを変えるきっかけをつかむ、という企画を発表した。

Bチーム内では、長い時間をかけて互いの思いを共有するうち、「個人の課題、組織の課題など、現状を変えたいと思いながらも、変えられないでいる人に変えるきっかけを与えたい」ということにチームの意思がまとまった。そして「『遊び』に夢中になっていた子どもの頃のように『遊び』に真剣に取り組むことで、変わるきっかけを取り戻せるのではないか」というアイデアを、企画案にしたという。

企画が承認されず

ところが、理事らによる企画審査の結果は「両チームとも承認ならず」。Aチームに関しては、「ゲスト、会場の保育園、廃材、レッジョ・エミリアなど、いろいろと要素やメッセージを盛り込み過ぎでは」といった指摘。Bチームに関しては「遊びというテーマの掘り下げ方が浅い」「参加者の目線で、イベントを通して何を伝えたいのかを明確に」など、どちらにも厳しい指摘がなされ、当初「運営検討会」を予定していた10月22日を、再度の企画審査会とすることになった。

【リベンジ企画審査会】10月22日

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