J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2010年11月号

アンケートから見る「基本能力不足」 基本能力不足が最も顕著な世代 5割弱が中堅・管理職と回答

基本能力不足というと若手ばかりが注目される。
だが、基本能力が不足しているのは、本当に若手だけだろうか?そして「基本能力」とは、具体的に何を意味するのか?
それらを明らかにし、企業における基本能力不足の実態を把握するために弊誌ではアンケートを実施した。
本稿ではその内容を紹介する。

田中 愛子氏
知事本局 政策部 政策担当課長
古川 宏之氏
総務局 人事部 人材育成担当課長
東京都
1999年より石原慎太郎氏が第14代知事を務める。猪瀬直樹氏の副知事任命は2007年。
都職員:約16万5000人(2010年4月1日定数、知事部局、公営企業、行政委員会、議会、学校、警察、消防の人員総数)
取材・文/木村 美幸、写真/真嶋 和隆

9~11月号の特集を通じて、基本能力の重要性を全階層に対して訴えてきた。そこで、連続特集最後となる本稿では、企業の基本能力に関する実態把握のために実施した「基本能力不足と教育施策の実態に関するアンケート」結果を紹介し、まとめとしたい。

アンケートでは、「読む」、「書く」、「考える」だけでなく「話す」、「聴く(聞く)」も基本能力に含み、さらに、若手(入社3年目)、中堅(入社4~12年目)、管理職(13年目以降)の階層ごとに質問を設定した。

アンケートの構成は、【Ⅰ】全体的な基本能力不足について、【Ⅱ】基本能力不足を感じる具体的場面について、【Ⅲ】教育施策について、の3部とし、各階層における基本能力低下の実態把握をめざした。

なお、回答者は66名で、回答者の属する企業の規模・業種による有意な差は見られなかった。そのため、ここでは詳細は割愛する。

【Ⅰ】基本能力全般基本能力の不足は3~10年前から実感が70%

まず、階層ごとに基本能力の不足を感じるかどうかを聞いたところ、「非常に感じる」と「それなりに感じる」を合わせると、若手は99%、中堅は86%に上った。管理職についても、49%が問題を感じていることがわかった(図表1)。

「基本能力の不足が最も顕著だと感じる階層」(図表2)については、若手は54%と過半数を占めたものの、中堅が31%、管理職が15%とそれぞれの基本能力の不足を、若手以上に深刻に捉える人材開発部担当者がいることが示唆された。

また、基本能力の不足を感じ始めた時期について尋ねたところ、「ここ1、2年前から」が15%、「3~10年前から」が70%、「10年以上前から」が15%、「基本能力の不足は感じない」が0%であった。

ゆとり教育を受けた世代が、新入社員として入社し始めたのが4年前の2006年。アンケート結果からは、それ以前から基本能力不足を感じる教育担当者が多くいたことがわかる。10年前はちょうど、職場や家庭へパソコンやインターネットの普及が進んだ頃である。これらの普及でコミュニケーションの方法が変わったことなどが、基本能力の不足と関係があると言えるかもしれない。

【Ⅱ】能力不足を感じる具体的場面相手の立場に立てず噛み合わない職場が浮き彫りに

ここからは、それぞれの基本能力の不足を感じる具体的場面について紹介していく。

「読む力」(図表3)、「書く力」(図表4)、「考える力」(図表5)については、複数選択と自由記述、「話す力」と「聴く(聞く)力」については自由記述のみでアンケートを行った。

「読む力」のA「日本語の意味をきちんと理解できない」、B「メールやマニュアルなど、文書による指示をきちんと理解できない」、「書く力」のA「誤字脱字や文法の間違いなどが多い文章をよく見る」、D「社外に出すメールなどで、ビジネスマナーができていない」といった、日本語やビジネスマナーに関わることは、若手が顕著に高い。逆に言えば、こうしたスキルは、経験を積むことで解決していくことと言えるかもしれない。

一方で、「読む力」のC「書籍など、仕事上必要な資料の要点を的確につかめない」、「書く力」のC「何を言いたいのかがはっきりしないメモやメールを書いている」、「考える力」のB「深く考慮せず、思ったままに行動する」などは、中堅・管理職であれば、できて当然のことだが、中堅(回答数27、28、23)、管理職(16、20、5)ともに問題があることが明らかになった。

また、「書く力」のF「書いているものに読み手に対する配慮が感じられない」は、若手(45)、中堅(40)、管理職(32)となっており、どの階層でも問題視されていることがわかる。

これらから、経験を積むことで自然と身につけられるスキルと、意識的に訓練しないといつまで経ってもできないものの両方があることが見てとれた。

また、「考える力」(図表5)も含めて見てみると、階層により、期待する基本能力が変化することがわかる。

たとえば、中堅の基本能力不足を最も挙げた人が多かった項目が全部で5点ある。「読む力」のD「企画の意図や背景などの、文脈がつかめない」、「考える力」のC「仕事のやり方を見直したり、新しい企画立案の際に発想力が乏しい」、E「多角的に考え、いくつかの選択肢をベースにした決断ができない」、F「難問でも何とかしようと最後まで考え抜く力がない」、G「幅広く、長期的な視点で考えていない」などである。仕事に慣れ、任される仕事の責任が大きくなる中堅に対して、物事を表面的に理解するのではなく、多角的に考え、仕事に取り組むことを求めていることがよくわかる。

「話す力」と「聴く(聞く)力」については、自由記述から抜粋して紹介しよう。

まず、「話す力」について。若手に対して最も多かったのは、何がいいたいのかわからないということ。特にホウレンソウなど、仕事の基本的な場面で問題を感じる担当者が多いようだった。また、敬語が使えないなど、言葉遣いに関する問題点も挙げられた。

中堅に対しても、何が言いたいかわからないといった意見が見られたが、若手と異なるのは、「意見が明瞭でない」、「短時間での口頭報告ができない」など、話す内容だけでなく、話し方に言及する意見が多かったことである。

管理職については、部下に対してどう話すか、ということが問題に挙がった。「部下を委縮させる」、「自己主張は強いが、部下から引き出すことができない」などの意見が見られた。「挨拶ができない」という意見があったことも明記しておきたい。

全体を通して言えることは、どの階層も自分の主張を話すことに精一杯で、相手の理解度に合わせて話したり、わかりやすく話すことができないということだ。

次に「聴く(聞く)力」である。若手は主に「指示のポイントをつかめない」という意見が多かった。そのうえ、「わからないことがあっても質問できない」ため、結果として「指示とは違う行動を行う」ことが多いとされた。

中堅は、「思い込み」があり、「上司の思いを汲み取れない」など、ここでも中堅に期待される役割を果たせていないことが示唆された。

管理職については「部下の話を最後まで聞かない」が最多。「過去の常識」が頭にあり、偏った聞き方をしてしまったり、「すぐに自分の意見を言ってしまう」ことがその原因として考えられる。

全体として、傾聴意識が欠け、自分の意見を言うことに終始していることが問題になっていることがわかった。また、対話ではなく「一問一答式」の問答になっているなど、お互いの立場を理解して、対話ができていない職場の状況が浮き彫りになった。

【Ⅲ】教育施策実施状況

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