J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2011年01月号

JMAM通信教育優秀企業賞 受賞企業事例報告 日産化学工業 変革を担うリーダーを育てる現場巻き込み型の自己学習制度

通信教育を人材育成に活用し、自ら学ぶ風土を醸成している企業に対し贈呈される「JMAM通信教育優秀企業賞」。2010年は7社が受賞したが、2010年11月号から3号にわたって受賞企業の取り組みを紹介している。日産化学工業は、25年にわたり自己啓発制度を教育の主軸とし、経営戦略と現場ニーズに沿った通信教育講座を開講、高い修了率を誇っている。

小野 順一氏
人事部
日産化学工業
1887年、日本初の化学肥料製造会社として創業。「精密有機合成」「微粒子制御」「機能性高分子」を基盤技術とし、化学品、農薬、医薬品分野などで製品開発・市場開発を推進している。世界に通用するブランド力を備えた「価値創造型企業」としての持続的成長をめざす。
資本金:189億4200万円、売上高1490億3600万円、従業員数:1710名(すべて2009年3月期)
取材/井戸沼 尚也、 文/石原 野恵、 写真/日産化学工業提供、石原 野恵

「価値創造企業」を担う次世代リーダーの育成

日産化学工業は、1887年に日本初の化学肥料製造会社として創業した。2010年からは、新たに6カ年の新中期経営計画「Vista2015」を掲げ、海外市場を見据えたさらなる躍進を図る。その第1ステージに当たる2010年度~2012年度の基本戦略の1つが「人材開発の推進」。次世代のリーダー育成を大きなテーマとして、各種教育の施策を講じている。

しかし同社にはそれ以前から、職場で人を育て、学習する風土が根付いていると、自身の経験を振り返って語るのは人事部の小野順一氏だ。

「歴代の社長からは、組織の根幹をなすのは人材であり、学ぶ場を提供することが会社の役目だというメッセージが打ち出されてきました。以前私は経理部に所属していたのですが、その頃から、通信教育の受講や、外部のセミナーへの参加など、学ぶ機会が多数ありました。たとえば新入社員研修も、まずはきちんと学習できる環境を用意するなど、昔から人を大切にし、育ててきた文化があると思います」(小野氏、以下同)

その背景には、同社の扱う素材、特に電子材料や機能性材料に関する技術が、日進月歩で発展していることがある。他社から新技術が1つ出れば、業界のシェアや収益は一転してしまいかねない。よって、常に新しい技術を開発し、次の柱となる事業を確立できる人材を育てていかなければならないのだ。

「当社の成長の原動力は研究開発です。したがって、社員1人ひとりの力を高めることが不可欠になってきます。特に、若手から中堅層が次世代の会社を牽引する人材として育っていかないと、グローバル時代の発展は見込めません」

戦略と現場のニーズ両方を見据えたコース選定

そうした人材を育てるために、同社の教育体系には、さまざまな場面で通信教育が組み込まれている。

とりわけ通信教育活用において着目すべき点は、テーマの選定方法だ。現場のニーズと経営戦略の両面を見据えてコースを選び、受講を促している。具体的に見てみよう。

●現場ニーズに適ったコース選定

25年にわたり継続している自己啓発通信教育制度では、「全社員推奨コース」の他、社歴やスキルに合わせた推奨コースを設定。資格関連コースも設置している(図表1)。

特に選択制の推奨コースは、現場のニーズに合致しているかどうかが選定時のポイントだ。

「各部門長に相談し、現場の声を聞きながら、コースを精査しています。人事部だけではすべての現場の実情や、どのようなテーマが求められているのかまで把握しきれません。“若手にはこの勉強をしてもらいたい”、“工場の技術者にはこの知識を”といったいろんな意見を広く聞きながらコースのラインナップを考えているんです」

こうして現場のニーズを拾い上げることが、受講率の向上にもつながっている。近年では、メンタルヘルスに関連する問題が世間で注目を集めていることもあり、各現場の部門長から、どのような予防策をとるべきかといった相談を受けることが増えた。そこでメンタルヘルス関連の対応の仕方など、基礎知識を学べる講座を導入したところ、管理職を中心に受講者が増加したという。

●経営戦略を見据えたコース選定

一方、同社では、会社の発展を担う次世代のリーダー育成に注力していることから、特に総合職についてはMBA知識の戦略的な習得を重視しており、MBAコースが昇格時の必修要件となっている(図表2)。

「これからのリーダーは、経営やマネジメントに関する幅広い知識が必須だと考えています。当社では研究職が従業員全体の25%を占めるのですが、研究職だとどうしても、自分の専門分野だけにとらわれてしまいがち。MBA知識の学習等を通して、世間一般の広い考え方に触れてほしいと思っています」

現在は、競争が厳しい中で新しい価値を生み出し続けることが求められており、研究職であってもずっと研究室にこもっていればよいという時代ではない。顧客と直接対応する中でニーズを見出し、対応しなくてはならない場面もある。そうした意味では、たとえばMBAの学習テーマの1つである「顧客満足創造(マーケティング)」についても、職種を問わず知っておく必要があると小野氏は述べた。

さらに、語学コースは1人2コースまで会社の補助を受けて受講可能となっている。

「この背景には、世界的な舞台で活躍できるグローバルリーダーとして成長してほしいという想いがあります。英語に限らず、中国語やフランス語なども必要になりますから」

会社としての意図と現場の声、この双方のバランスは、同社に限らず多くの企業で、複数の通信教育のラインナップを整備する担当者が悩む点ではないだろうか。この点について小野氏は次のように語る。「もちろん現場のニーズに応えることは大切です。とはいえ、やみくもに講座数だけを増やしても、かえって現場の混乱を招いてしまうのではないでしょうか。今の当社にはこういったスキルや能力が必要だからこの講座を案内します、という意図を現場に伝え、その時々に必要な学習内容を提供できるようにしていくことが重要だと考えています」

こうしたコース選定のあり方に加え、実際に通信教育を活用するうえで、同社が施している工夫は次の通りである。

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