J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2011年01月号

企業事例② ヤクルト本社 異文化を理解する「国際塾」で世界に通用する人材を育成

乳酸菌飲料でお馴染みのヤクルト。
日本を代表するグローバル企業の1つであり、世界32の国と地域で事業を展開している。
同社が、社員の国際性を高めるために行っている教育の1つに「国際塾」がある。
同社ではグローバル人材に必要な要件を「異文化を理解してより良い解決策を導くこと」としている。
そんな「世界で通用する力」を養成するための同社の人づくりを紹介する。

松宮 淳氏
人材開発センター 所長
鶴貝 高之氏
人材開発センター 担当次長
ヤクルト本社
1935年創業。乳酸菌飲料「ヤクルト」をはじめ、化粧品、医薬品など健康に関する商品を幅広く開発・販売する。コーポレート・スローガンに「人も地球も健康に」を掲げ、2010年11月現在、32の国と地域で事業を展開。「ヤクルトレディ」と呼ばれる女性を起用した独自の販売方法は、世界の女性たちの雇用創出にも貢献している。
資本金:311億1765万円(2010年3月期)、売上高:2907億円(連結)(2010年3月期)、従業員数(出向、常勤嘱託を含む):2872名(2010年3月末現在。単体)
取材・文・写真/高橋 美香

創業時からの目標海外への展開

「人類の健康と世界平和のために」。これは、ヤクルトの創始者であり、京都帝国大学(現:京都大学)で微生物を研究していた代田稔氏が掲げた理念だ。この言葉からも読み取れる通り、同社では事業がスタートした戦前から世界を視野に入れて、事業を行ってきた。

2010年に創業75年を迎えた同社は、同年11月現在、実に世界32の国と地域で幅広く事業を展開するグローバル企業の1つとして認知されている。

もちろん、グローバル人材育成にも力を入れている。その1つが、グローバルな感覚を社員に身につけてもらうために実施している「国際塾」という教育プログラムだ。

同社がそうしたグローバル教育に特に力を入れるようになったのは2003年。全社の社員教育を担う「人材開発センター」を設立し、全社的に教育内容を見直した時だったという。

人材開発センター所長の松宮淳氏は、国際塾の開始の背景を次のように話した。

「もともと“海外”と名の付くものは、採用や資材の売り込みに至るまで、国際事業本部に集約されていました。中には人事部や資材調達の部門が応対するべき事案もありました。海外進出が活発になるにつれて、国際事業本部だけでは海外に関する業務に対応しきれなくなってきたのです。そのうえ、海外に派遣される社員と国内の間接部門の社員の両方が、高い国際意識で仕事をできるように育てていくことが求められるようになったというのが、国際塾発足のきっかけです」

海外へ派遣される社員への教育には力を入れている企業が多い中、間接部門の社員に対しても国際感覚を高めるための教育を行うという国際塾とは、どのようなものなのか。次で詳しく見ていきたい。

国際塾での学びの要「異文化理解」

同社がグローバル人材に必要な要件としているのが、異文化を理解してより良い解決策を導ける力を持っているということ。

そうした前提に立ち、国際塾では、AコースとBコースの2つのカリキュラムを用意している。

Aコースは将来的に海外派遣を希望する人を対象、Bコースは、間接部門の職種を対象とした内容だ(図表1)。

毎年4月に入塾を希望する社員を公募し、希望者の中から、国際塾で学ぶための一定の基準をクリアしているかを見定めて、選抜する。選抜基準について、人材開発センターの鶴貝高之氏は次のように語る。

「最近当社では海外での勤務を希望する社員が増えていますが、その中心は、若い世代。ですが、海外に派遣される社員は、現地でマネジメントをしたり、経営的な視点を持って仕事をしたりすることが求められます。単に語学が堪能なだけでは務まりません。そのため、日本国内でヤクルトの仕事の経験を十分に積んでいることが海外派遣要員には必須。そうした理由から、塾生は主に入社7年以上の社員を中心に選抜するようにしています」

国際塾の講義は、毎年7月から12月まで、全6回開講。各カリキュラムは、1泊2日、または2泊3日の合宿で行われる。

Aコースと呼ばれる、将来的に海外で働く可能性のある職種を対象にしたカリキュラムでは、2週間の海外研修が組み込まれている。これまで、マレーシア、中国、インドネシアなどで実習を行ってきた。

「実際に海外派遣されている先輩社員たちの仕事に同行し、現地での仕事を体験してもらいます。店舗への納品に同行したり、現地のヤクルトレディと一緒に販売したり。仕事を体験することで、海外で働くために必要な能力は何か、そして今の自分には何が足りないのかが明確になって、努力すべきものが見えてきた、といった声も聞かれています。現地で働く先輩社員と直接交流する機会もあり、限られた日程の中で多くの刺激を受けてきているようです」(鶴貝氏)

Bコースの間接部門の職種の社員は、国際業務を遂行する上で必要な英語力の強化がメイン。海外からの電話の対応の仕方、ビジネス文書の書き方、会議運営のしかたなど、国内業務に必要なスキルを身につけていくという。

2010年は、両コース合わせて16名の社員が国際塾で学んだ。

なお、同社では国際塾の他に、自己啓発を支援するために、英語学習支援として同社外国人社員を講師としたビジネス英語セミナーを実施するなどの学習機会を提供している。

異文化理解を裏付ける徹底した自前主義

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