J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年02月号

OPINION 1 仕事は「やりたいこと」の道具 一人ひとりの働きがいの源泉を探り個別に応える時代

働きがいの源泉は“ワーク” だけにあるのではない。
家庭や趣味など仕事以外の領域まで広げて、“ライフ”の視点から働きがいを考えることが重要だ。
一人ひとりで異なる働きがいを個別にサポートすることが、仕事に対する意欲や会社への帰属意識を高めることにつながるはずだ。

守島基博(もりしま もとひろ)氏
慶應義塾大学大学院社会学研究科社会学専攻修士課程修了。
米国イリノイ大学大学院産業労使関係研究所博士課程修了、組織行動論・人的資源管理論でPh.D.を取得し、カナダ・サイモン・フレーザー大学経営学部助教授。
慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授を経て、現職。
主な著書に『人材マネジメント入門』(日本経済新聞出版社)、『会社の元気は人事がつくる』(共著、経団連出版)など。
[取材・文]=増田忠英 [写真]=編集部

働きがいは「仕事の外」にもある

働きがいは「仕事の外」にもあるチャレンジングな仕事に働きがいを感じる人はいるだろうが、一方で「仕事は定時で終えて、家に帰って子どもと遊びたい」「週末はサーフィンをして過ごしたい」「社会貢献活動をしたい」など、仕事以外のことをより大切にする人たちが確実に増えてきている。

また、ビジネスを取り巻く環境が厳しくなり、以前に比べて、面白い仕事やチャレンジングな仕事が提供されにくくなっているのも現実だ。したがって、これからは従来のように仕事を中心とした働きがいだけではなく、「本人がやりたいこと」や「大切にしていること」を、仕事を通じてどう実現できるかを模索する必要がある。手段や道具としての働きがいを考えるべき時代なのだ。

働きがいは今や十人十色。企業は社員一人ひとりの働きがいを探り、マネジメントすることが求められる。例えば、その人の大切にしていることが週末のバードウォッチングであれば、金曜日までに仕事をきちんと終えられるよう、仕事の段取りを組んでもらう。会社もそれをサポートする、といったこ

働きがいは従来、「面白い仕事」「達成感のある仕事」「チャレンジングな仕事」「成長できる仕事」など、あくまでも仕事を通じて得られるものとして捉えられてきた。しかし、働くことに対する価値観が多様化する中で、働きがいそのものも多様化しており、従来のように仕事を通じた働きがいを提供するだけでは十分とは言えなくなってきている。

もちろん、これからも面白い仕事やとである。

こうした対応を行ううえで最も重要なのは、現場の上司だ。上司が本人の働きがいを理解し、実現できるよう、支援することが求められる。

「ライフ」に罪悪感を持つ日本人

従業員の働きがいに個別に対応する際、重要になるのが「ワークライフバランス」だ。

従来は、ワークの比重があまりにも大きかったために、ライフの比重を高めることがワークライフバランスの主要テーマだった。しかし、本来、ワークはライフの一部だ。ワークを通じて、いかにライフを充実したものにするかがワークライフバランスの本質である。

よくあるのは、過度にライフを重視し、ワークをライフから排除してしまうこと。育児中の社員が復職できなくなる、といったケースはその典型例だろう。出産・育児を機に一時的にライフだけを重視した結果、ワークに戻ってこられなくなる人は少なくない。

例えば、「子どもが3歳になるまでは育児に専念したい」ということであれば、企業はそれを認める。その一方で、「育児休業を終えたら、会社に戻って、活躍してほしいので、休業期間中に勉強してもらいたい」という希望を伝え、そのために必要なサポートを行う。働く人にとっても、ワークは自己実現の重要な要素なので、ライフの中にワークを上手に組み込むことが必要である。

このように、企業と個人の双方がワークとライフを重視し、Win・Winの関係を築けるような「心理的契約(互いの信頼関係に基づいた暗黙の了解)」を結ぶことがポイントとなる。

日本の企業で働く人たちは、ワークを他の活動よりも一段上の“使命”のように捉える傾向があり、ライフを重視することに、ある種の罪悪感を抱きがちだ。罪悪感は捨て、ワークはライフを充実させる手段、と考えればよい。ライフを重視することが、同時にワークも重視することでもあれば、会社に申し訳ないという気持ちも和らぐだろう。

そのためには、意識の改革と同時に、制度の改革も必要になる。例えば、昨今話題の、働き方の柔軟性についてもそうだ。「就業時間内の柔軟性」が取り上げられがちだが、「就業時間外の柔軟性」も会社の事情に左右されることが多い。

就業時間は企業のものであっても、それ以外の時間は本来、働く人のものだ。だから、就業時間以外の時間をどう使うかは、働く人たちが決めるべきものである。もし企業が就業時間外にも働いてほしいと望むのなら、働く人にきちんとオファーを出さねばならない。そして、働くかどうかを決める主導権はあくまで働く人が持つべきだ── 全て当たり前のことのようだが、実際にはなかなか実現していないのではないか。個人や現場に任せずに、制度面でしっかりサポートすべきだろう。

ワークライフバランスの先進的な制度を導入している企業に、クレディセゾンがある。同社では、社員が育児などで短時間勤務を希望する場合は、総合職のまま、地域限定などの雇用区分上の変更を認めるようにしている。さらに注目したいのが、一定の条件を満たせば、その後いつでも元の状態に復帰できる、という仕組みがある点である。

多くの日本企業では、短時間勤務や育児休業を取得した場合、時間の制限があることについて、フルタイムで働く周囲の社員に対して罪悪感を抱きがちだ。しかし、同社のように雇用区分を工夫すれば、こうした問題の緩和策が見つかるかもしれない。

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