J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年01月号

KEYWORD 5 ポスト2016採用

就職活動解禁日が後ろ倒しになる2016年春。
これによって、企業や学生にはどんな対応が迫られるのか。
早期の準備、インターンシップの充実などがポイントとなるが、これは実は採用活動の枠を超え、企業にはグローバル競争下での戦略変更を、学生側にはキャリアの早期選択という、本質的な変化を同時にもたらす。
就職や働き方について、企業と学生双方に対しさまざまな支援を行う小島貴子氏が「ポスト2016採用」の全貌を指し示す。

小島貴子(こじま たかこ)氏
東洋大学 グローバル・キャリア教育センター 副センター長 理工学部 生体医工学科 准教授
専門はキャリアデベロップメント。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に勤務するも、出産のため退職。7年後、埼玉県庁に入庁し、職業訓練指導員に。2007年立教大学大学院ビジネスデザイン研究科特任准教授を経て、2011年より現職。著書は『学生のためのキャリアレッスン』(日本能率協会マネジメントセンター)、『働く意味』(幻冬舎)、『就渇時代の歩き方』(主婦と生活社)、『がんばる中高年実践就職塾』(共著、メディアファクトリー)他多数。

[取材・文]=道添進 [写真]=編集部

学生と企業に起こる変化

ご存じの通り、2016 年春採用から、就職活動の解禁時期が大きく後ろ倒しとなる。経団連の加盟企業およそ300社は、その解禁時期を今の大学3年生の12月から翌年3月にシフトする。また、面接など選考の解禁も、現在の大学4年生の4月から8月に遅らせる。これは安倍晋三政権の「学生が学業に専念できる環境を整えるべき」という考えを踏まえた動きだ。

この期間短縮によって、いったいどのような影響が出てくるのか、企業も大学も今、注視しているところだろう。予測としては、知名度が高い大企業に応募が集中するのではないか、4万人以上もの未就職卒業者が出るのではないかという声も挙がっている。

しかし私は、学生にとっては、企業をより真剣に見極める転機になると見ている。短期的な雇用条件だけではなく、ビジョンなどをよく把握して就職先を選べるようになる。また、社会がどのような仕組みとなっているのかを理解したり、自身のキャリアをどう形成していくのかを熟考する時間も持てるかもしれない。

そして企業にとっては、選考期間の圧縮はコストと時間の削減になるのだが、それだけにとどまらない。日本だけでなく世界から優れた人材を長期的に吟味するなど、採用のあり方を変えていく契機になる。

実は長期化する採用活動

後ろ倒しといっても、実際は選考活動が圧縮されただけで採用(就職)活動そのものが短くなるわけではない。むしろ学生は、すでに述べたように今よりも早い時期から自分で業界や企業の検討を始めることになる。

企業は、選考期間が短くなれば当然ながら、業界のライバル企業と選考日を今以上に重ねるだろう。よって、学生は従来のように、落ちては別の会社を受けることを繰り返すのではなく、最初から本命企業に的を絞った活動をする必要がある。企業側も、ほしい人材像をより明確にしなくてはならない。とりわけ重要度を増すのがインターンシップだ。Webエントリーしてきた学生をふるいにかけ、業務を体験させるインターンは、まさに採用の前哨戦と位置づけられる。

大学2年からインターン

そのインターンシップも、ここにきて大きく様変わりをしている。大学2年生から受け付けている企業が、このところ急増しているのだ。見どころがある学生には3年生、4年生になっても続けて参加してもらうことで、成長を確かめることができる。

インターンシップでは、学生も企業もお互いにリアルな実態を見ることができる。企業は、会社説明会などで見せる“きれいごと”ではない実態を見せることになり、学生も現場では、いわゆる「就職人格」を装うことはできない。お互いが素で向かい合うわけだ。また、会社側にとっては人事だけでなく、かかわった社員たちが多面的に、学生を評価できる機会になる。

今、入社1年未満の離職率は12.7%に上っている(厚生労働省

「新規学校卒業就職者の在職期間別離職状況」)。内定取り消しと共に、早期退職は企業にとって大きな損失だ。「こんなはずではなかった!」というリアリティショック(理想と現実とのギャップから受ける衝撃)を軽減するためにも、双方にとってインターンシップを重ねる意義は大きい。

2割の尖った人材の奪い合い

企業が今ほしがっている人材像は、端的に言うなら「手のかからない新人」「自分で考えて動ける人材」だ。

労働政策研究・研修機構統括研究員の濱口桂一郎氏は、日本の雇用を「メンバーシップ型雇用」とし、欧米の「ジョブ型雇用」と区別している。日本の就職とはあくまで組織のメンバーとなるということであって、入社する側は仕事そのものを選択しているのではない。したがって、入社後に会社が人材育成を行い配属するというのが従来の雇用の姿だった。

しかし、刻々と社会が変化していく現在、教育に時間をかける余裕はどんどんなくなっている。人材育成の初期の期間やコストをかけなくても、できるだけ早く職能を身につけられそうな学生がほしいというのが企業の本音だろう。

そうした背景があって、企業は「ターゲット大学」あるいは「ターゲット学生」をこれまで以上に絞っている。対象となる大学や学生は企業の考え方によってまちまちだが、共通するのは、教養とクリエイティブな感覚とリーダーシップを併せ持っていることだ。自分で考え、自分で道を切り拓いていくことのできる自立した人材を求めているのである。

日本の集団教育からは依存傾向が強く、みんなと一緒に言われたことをやる学生に育ちがちだ。これに対し、企業がほしがる「尖った」学生は上澄みの2割と言われ、この限られた人材を奪い合う形になっている。

グローバル就活時代

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