J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2011年11月号

企業事例3 マネジメント力を育て 変化をリードできる管理職を育てる

激化する競争の中では、実務を実直にこなす能力を磨くだけでは勝ち残ることはできない――そのことを痛感し、変化をリードできるマネジメント層の育成に乗り出した大阪製鐵。もともと真面目に学習する風土が醸成されていた同社が、マネジメント層に何を求めているのか、求めることをどのように学んでもらおうとしているかを紹介する。

調 和郎 常務取締役CLO 兼 生産技術部長 兼 購買・外注管理部長
西山 隆一 総務部 人事労働グループリーダー

大阪製鐵
1978年設立。新日本製鐵グループの中核電路メーカとして、山形鋼、溝形鋼、丸鋼から軽軌条、エレベータガイドレールなどの鋼材二次加工製品まで、多岐にわたる製品群をさまざまな産業分野に供給。東証1部、大証1部上場。
資本金:87億6933万7500円、連結売上高:704億8300万円、単体売上高:595億3200万円(いずれも2011年3月期)、連結社員数:706名、単体社員数:432名(2010年3月31日現在)

取材・文/赤堀 たか子、写真/本誌編集部

全管理職を対象に研修を実施マネジメント力を強化

新日本製鐵グループの中核電炉メーカー、大阪製鐵(大阪市中央区)が、教育体系の構築に乗り出したのは、2009年である。同年、教育専門の担当役員であるCLO(=Chief LearningOffi cer)を新設するとともに、階層別教育、スキル・専門知識の教育からなる教育体系を構築した。これに基づき、2010年には、新任・既任の全管理職者を対象に、「シニアマネジャー研修」などの管理職研修を実施。全社のマネジメント能力の底上げを目標としている。同社では、それまで教育の中心は昇格者を対象とした社長の訓話や安全教育などだった。真面目で堅実な社風もあり、日々の業務をこなすにはOJTで十分だったともいえる。そもそも非常に競争が厳しい電炉業界にあって、同社では業務の効率化が進められ、より少ない人員で運営できる体制が構築された。そのため、人材の採用も、退職者が出た際にそれを補う形で都度行う程度。時には、10年近く新卒者を採用しない時期もあり、ベテラン社員のすぐ下は10歳以上離れた若手ということもあった。そうした背景もあり、昇格者研修といっても、3年に一度の実施になることもあったという。それでいて、「事務用品1つ買う場合でも、本当に必要かどうかを考えます。接待費などは1000円単位で社長自らチェックします」(調氏)というほど徹底したコスト管理体質や真面目で実直に業務をこなす風土は着実に受け継がれていた。また、役員がそれぞれ仕事とは直接関係のないテーマを選び、持ち回りで研究結果を全社員の前で発表するなど、率先垂範で学びの重要性を伝えていた。「発表したテーマには、『五重塔はなぜ倒れないか』、『鉄鋼業の歴史』といった業務とは直接関係のないテーマが選ばれました。仕事に関するものばかりだと、知らないうちに守りに入り、視野も狭くなります。仕事と直接関係ないことをあえてテーマにすることで、幅広い知識を主体的に学ぶ重要性を社員に訴えたかったのです」(調氏)このように地道に学ぶ風土があった同社が、改めてマネジメント能力強化に乗り出したのはなぜか?「社員は皆、真面目で実務能力は高いのです。ですが、ともすると日々の業務をこなすだけで満足してしまう傾向があり、このままではいわゆる『タコ壷』化してしまうという危機感がありました。他部門と協業して新たな付加価値を生み出したり、自ら仕事を設計する力が今後当社のカギになると考えたのです」(調氏)

役割意識を明確にし組織運営の意識づけを

こうして構築された教育体系(図表)の中で、マネジメント層向けに実施されたのが、参事(課長・グループリーダー)を対象にした「シニアマネジャー研修」と、「コーチング・リーダーシップ研修」である。「シニアマネジャー研修」では、ケーススタディを通して、管理職に求められるマネジメント力やリーダーシップのあり方を学ぶ。受講者からは、「漠然としか理解していなかった管理職としての役割が研修で明確になり、自分のやるべきことがはっきりした」といった声が聞かれた。注目すべきは、研修の1~2カ月後に行うフォローアップである。受講者全員が、社長はじめ役員の前で、“研修での気づきが自身の仕事にどう活かされているのか”、“管理職として組織を実際にどう運営していくのか”を発表するのだ。そして、その場で直接社長・CLOからフィードバックをもらうことになる。「トップのコメントの中には、かなり厳しいものもありますが、このプレゼン機会が受講者に良い緊張感を与えているようです。また、これまで同世代と能力を“比較”し、競争することがあまりありませんでした。他の受講者の前で発表し、評価されることで、他の人を意識し、競争心を持ってほしいという意図もあります」(調氏)部門を超えて受講者が集まることで、受講者からは、「部門の違うメンバーと集まって会社の将来について考える機会を持ち、自分たちが将来の方向性を決めていかなければと感じた」「これまでは、自部門のことばかりを考えていたが、研修により、会社全体という視点を持つことの大切さを実感した」といった感想があったという。

育成責任の所在を明確にする

マネジメント層の重要な役割の1つとして、人材育成がある。この意識を根づかせるものとして行われたのが「コーチング・リーダーシップ研修」だ。

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