J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2011年11月号

企業事例1 研修とOJTの繰り返しで 組織の要=課長職を鍛える

キヤノンシステムアンドサポートでは、昨年から既任課長職に対する教育プログラムをスタートさせた。同プログラムは、研修とOJT(現場での実務)を繰り返しながら、課長職として課の目標を設定し、目標を必達するための力、すなわち攻める力を身につけていくというもの。心構えや姿勢といった「守り」の教育になりがちな管理職教育を、「攻め」の教育へとシフトさせた同社の教育を紹介する。

倉持 嘉秀 総務人事本部 人材育成部 部長

キヤノンシステムアンドサポート
1980年設立。キヤノングループの販売関連会社の1つ。キヤノングループで製造する機器・ソリューションならびに他社製システム機器類のコンサルティングセールスとオフィスネットワーク構築およびサービス・サポートを行う。
資本金:45億6100万円、売上高:1036億円、社員数:5713名(2010年12月現在)

取材・文・写真/髙橋 美香

部下にも上司にも影響力がある課長職

「我々の仕事は、顧客を訪問し、製品・サービスを直接提供することを基軸とするビジネスです。競合他社との競争は、熾烈さを増す傾向にあります。そうした現場を舞台にビジネスを展開している我々のような業種では、リーダー、特に課長のマネジメント能力が、課の売り上げやメンバーのモチベーションに大きな影響を与えると考えています」自社における課長の役割の重要性をそう語るのが、総務人事本部人材育成部部長、倉持嘉秀氏だ。同社はキヤノングループの販売関連会社として1980年に設立。以来、キヤノンのDNAを受け継ぎながら、人づくりに力を入れてきた。今、最も力を入れているのが、平均年齢46歳(課長兼務の部長も含む)の既任の課長職の育成だ。あえて課長職育成にテコ入れすることを決めたのはなぜか。その背景について、倉持氏はこう話す。「当社にとって課長職は組織の要。課長次第で課員のモチベーションが決まるといっても過言ではありません。たとえば、課員は全く同じメンバーなのに、課長が変わったとたん、業績がアップすることもある。それだけ課長職というものが、現場において大きな存在だということは、以前から注目していました」課長の顔色を課員がうかがっているような組織では、コミュニケーションが滞り、あらゆる面で弊害が出てくる。課長が部下に与える影響は、計り知れないものがあるのだ。さらに課長には、“幹部候補生”という一面もある。ゆくゆくは、部長、そして役員として会社を牽引するためには、「こういうチーム・組織をつくりあげたい」というビジョンを描き、それを実行していく力が必要だ。「部下に対しては、『後始末は俺がやるから臆せずにどんどんやれ』と懐深く接し、自らは率先垂範で行動する。そうした課長の姿を見て、上司は自分の襟を正す……。行動や言動で、上司・部下の両方に対して大きな影響を与えることができるのが課長というポジション。それが、『課長=組織の要』たるゆえんなのです」(倉持氏、以下同)

“攻めの研修”で目標必達力をつける

課長職は、誰よりも仕事に対して前向きでハツラツとしていてほしい、そして、部下たちが憧れるような存在であってほしい。そうした思いに基づき、同社では、2010年11月から営業職の既任管理職向けの教育プログラム『ライン管理職変革プログラム』(図表1)を開始した。「以前、全職種の課長を対象にした研修を実施していました。内容は、コンプライアンス、労務・人事関連・人事評価といった、課長職として最低限押さえておくべき知識を身につける、いわば“守りの研修”でした。この研修が修了した時、さらに一歩踏み込んだ研修を行う時期が来たのではないかと考えました」そこで始めたのが、“攻めの研修”である『ライン管理職変革プログラム』だ。同研修は、課に求められている業績達成をめざし、数的根拠に基づいた戦略を練り上げる方法を学ぶ「新・課長研修」、「コーチング研修」、これまでの総まとめの「フォローアップ研修」の3部構成で、6カ月以上をかけて、学んでいく。これにより、会社方針に基づく利益体質構築のために、ロジカルな仕事のやり方を身につけることを目的とする。同プログラムには、2011年8月現在で約80名が受講している。「最初の2泊3日の研修(「新・課長研修」)では、自分の課に求められている売上目標を達成するためのシナリオを立てていきます。現在の業界における競合のシェアはどのくらいか、自社のシェアはどのくらいか、そしてそのシェアをどのように拡大していけばよいのか、ということを、数字的根拠を用いて1枚のA4のパワーポイントに図解していきます」営業職にとって目標の数字を達成することは、最大といっても過言ではない役割。だが、目標を達成するためにどうすればよいのかと問われると、「全力で頑張る」「新規顧客を徹底して開拓する」といった精神論に走ることも少なくない。また、上からおりてきた目標を数字に落とし込み、課員に示すことはできても、課長として、課をどのような組織につくり上げたいかといったビジョンを示したり、そのためにどのような育成が必要か、といったシナリオを構築できないケースも多い。「新・課長研修には、“科学的根拠に基づいた営業活動をめざす”というテーマがあります。今や営業はサイエンスだ、という捉え方さえある時代です。課長は、そうした科学的根拠を基に作成したパワーポイントを用いて、自分の考えや思いを部下に示す。そしてそれを課員と共有し、実践します。この研修は、そうしたOff-JTと職場でのOJTを繰り返しながら学んでいくものなのです」3日間の研修で作成したパワーポイントは、職場に戻ってから上司に提出。上司との話し合いを行い、より実態に即したものに修正していく。そして1カ月後、修正が加えられたパワーポイントを手に、一同はコーチング研修に臨むことになる。「このコーチング研修は、論理的に組み立ててきた戦略を、トップダウンで部下に伝えるのではなく、どうすれば部下のモチベーションを高めながら伝達することができるのかを考えていくものです。どんなに素晴らしい戦略を立てても、部下のやる気を引き出せなければ課長としての役割を遂行できたことにはなりませんから」

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