J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2011年11月号

Opinion 3 学ぶ上司に部下はついてくる―― 人間力のあるリーダーとなるために

スキルなどの左脳的能力に偏るな、今、管理職に本当に求められているのは部下の心をつかむ“右脳的能力”だ――こう話すのは、ビジネスアドバイザーでビジネス書著者の古川裕倫氏。その力は、日常のあらゆる機会を無駄にせず、学ぶことによって身につくという。23年にわたる商社マン生活を通し、つかんだ「先人・先輩の教えを後世に順送りする知恵」とは。

古川 裕倫(ふるかわ・ひろのり)氏
多久案 代表
1954年生まれ。早稲田大学商学部卒業。1977年、三井物産入社。エネルギー本部、情報産業本部、業務部投資総括室などを経験。うち10年間はロサンゼルス・ニューヨークに勤務。2000年ホリプロ取締役執行役員、2007年に多久案を設立。現在同社代表および日本駐車場開発株式会社社外取締役、情報技術開発株式会社社外取締役。著書に『20代でリーダーになる人の「人を動かす技術」』(日本能率協会マネジメントセンター)、『20代に知っておくべき失敗を成功に変える生き方』(プレジデント社)、『一生働く覚悟を決めた女性たちへ』(扶桑社)、『「ついて行きたいと」思われる大きな器のリーダーになれ!』(ファーストプレス)など多数。

取材・文/西川 敦子、写真/本誌編集部

「本番力」を教えてくれた英語のできない上司

学ばない上司を部下は信じない。出身大学や聞きかじりの情報などで簡単にだまされたりしないのである。「自分はわかっている」と学ばない上司は尊敬されない。謙虚に学び続け、自らの能力を高める人間にこそ、部下はついていくものだ。愚直に学ぶ姿勢がその人にあれば、人はついくる。自分のリーダーシップに自信がない人は、まず学ぶといい。学ぶ人には皆、敬意を払うからだ。だが上司が学んでいるか、そうでないか――部下は意外に上司をよく見ているものだ。だから、上司はどんなに忙しくても自分磨きを怠らないほうがいい。人はいくつになっても学ぶことができる。では具体的に何を学び、どんな能力を身につけるべきなのか。語学や資格の勉強はもちろん必要だが、それだけではリーダーとしては不十分である。リーダーシップに必要な能力には左脳的能力――すなわち知識やスキルといった能力以外に、右脳的能力――人間力がある。もちろん、人事評価の対象となるのは圧倒的に前者だ。だが私は、本当に重要なのは後者ではないかと考える。よい例が坂本龍馬だ。彼には3つの右脳的能力があった。ひとつは「志の高さ」。彼の原動力とは決して私利私欲ではなかったはず。「日本のため」という高い理想があったからこそ、大政奉還という偉業を成し遂げることができた。さらに、鉄道も飛行機もない時代に江戸、京、長崎と忙しなく飛び回っていたわけだから、「行動力」も相当なものだったに違いない。もうひとつは「人を惹きつける力」である。当時、30歳過ぎとまだ若く、一介の下級武士であったにもかかわらず、越前福井藩藩主・松平春嶽、勝海舟といった大物を次々と味方につけていった。よほどの魅力の持ち主だったに違いない。私自身、図抜けた右脳的能力を持つ上司に出会ったことが何度かある。総合商社時代、米国勤務をしていた30歳前後のことだ。ある時、その上司は商談のため、東京の本社から私の赴任先に出張してきた。取引先に訪問する時、「通訳しろ」と言われて冗談だと思ったものだ。ところが、通訳としてその場に立ち会ってみて驚いた。なんと上司が話した英語は最初の挨拶だけ。あとはとうとう最後まで日本語で通したのである。にもかかわらず、商談終了後、交渉相手は上司を大絶賛した。なぜか。上司が相手の目をしっかりと見て、身振り手振りで気持ちを伝えていたからだ。その人柄、真心がちゃんと相手の心に届いていたのである。これには正直、唸ってしまった。「ビジネスの場で真に問われるのは仕事力や人間力なのだ」ということを、彼は身をもって教えてくれたのである。

「右脳的能力」は仕事で磨け

右脳的能力は全ての管理職に必要な資質である。悪天候の山中でグループが遭難状態にある時、肩書きが上の人についていこうという人はいない。頼りにするのはやはり人間力のあるリーダーだ。右脳的能力とは具体的に何を指すのか。図表1を見てほしい。リストを見るとわかるが、どれも当たり前のことのようでいて、なかなかできないことばかりでは。しかも語学や資格の勉強のように、暗記して身につけることもできない。日々の仕事で実践していくしかないのだ。大体ビジネスパーソンは1日のほとんどの時間を仕事で拘束されているわけだから、職場で学ばない手はない。阪急東宝グループ(現・阪急阪神東宝グループ)の創業者、故・小林一三氏は「下足番を命じられたら、日本一の下足番になってみろ。そうしたら、誰も君を下足番にしておかぬ」といったそうだが、まさにその通り。まずは日本一の管理職をめざすつもりで頑張ってほしい。右脳的能力を高めるために最初にぜひ取り組んでいただきたいのが「笑顔を自分のものにすること」である。いい笑顔ができない上司のもとでは部下が伸びない。笑顔は学ぶものじゃないだろう、などといわないでほしい。いつも気難しくて眉間にしわを寄せている上司がいたとしよう。おかげで部下はみんなビクビクして、安心して仕事ができない。一人が恐る恐る上司に声をかけた。「あのう、何か難しい問題でも抱えていらっしゃるのでしょうか」。すると上司は「ああ、問題だらけだよ」とぶっきらぼうに返事をした。その横をほがらかな笑顔を浮かべ、通り過ぎた人物がいる。「やあ、みんなおはよう」。見ればなんと社長だ。さて、上司と社長、いったいどちらの悩みが大きいだろう――。もちろん、社長の悩みの方がずっと大きいに決まっている。だが、笑顔でいなければ社員の士気が上がらないことを知っているからこそ、悩みを決して面に出したりしないのだ。勘違いされやすいのだが、いい笑顔とは、多くの場合、天性のものではない。意識してつくるものである。左脳型人間を自認する人も、笑顔なら頑張れば極められるはずだ。街で人の心を明るくする笑顔に出会ったら、じっくりと観察しよう。そして1日何度でも鏡を覗き、チェックしながら練習してほしい。

「上司力」は斜め上のメンターから学べ

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