J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2011年12月号

Column 自ら決定し実行することが 内発的動機づけを高める鍵 ―脳科学から見る自己学習―

自ら学ぶ意欲と大きな関係がある、内発的動機づけ。これは、賞罰とは関係なく好奇心や関心によってもたらされる動機づけのことをいう。しかし、この内発的動機づけも、金銭的報酬が絡むことで大きな影響を受けるという研究がある。金銭的報酬は、自ら学ぼうとする意欲にどのような影響を与えるのか。脳科学の観点から内発的動機づけについて研究している玉川大学脳科学研究所 松元 健二 教授に聞いた。

松元 健二(まつもと けんじ)氏
玉川大学 脳科学研究所 脳科学研究センター 教授 博士(理学)
玉川大学脳科学研究所 脳科学研究センター教授。目的指向行動、意思決定、動機づけの脳内機構などを専門とする。1996年京都大学大学院理学研究科霊長類学専攻博士後期課程修了。理化学研究所・基礎科学特別研究員等を経て、2007年早稲田大学大学院先進理工学研究科・客員講師、カリフォルニア工科大学神経科学訪問研究員。玉川大学脳科学研究所・嘱託研究員、2008年同准教授、2011年現職。

自発性が損なわれるアンダーマイニング効果

脳科学は、心理学で示唆されたことを脳の観点から改めて研究するという特性を持つ。1990年代後半以降、MRI(機能的磁気共鳴画像法)などの医療機器が発達し、ヒトの脳の活動について詳細なデータが取れるようになり、脳科学は急速に進展をとげている。しかし、1970年代から内発的動機づけについての研究が行われてきた心理学と比べると、脳科学における研究の歴史は浅く、明らかになっていないことが多いといわざるを得ないのが現状だ。人のやる気と脳の活動の関係はまだ十分に解明されていないが、そのヒントとなる研究結果を出すことができた。それが、金銭的報酬が課題への自発的取り組み(内発的動機)を低下させることを証明する脳活動の様子を捉えた研究だ。課題の成績に応じて得られる金銭的報酬は、課題そのものに対するやる気(動機づけ)を高めると一般的にいわれている。その一方で、金銭的報酬は、課題への自発的取り組み(内発的動機づけ)を低下させる「アンダーマイニング効果」(図表1)を引き起こす要因になることも知られている。これまで内発的動機に基づいて課題に取り組むという状況を脳計測実験に持ち込むことが難しかったことから、アンダーマイニング効果の脳内機構は全くわかっていなかった。しかし、今回、自発的に楽しめる課題を開発したことで、金銭的報酬と人のやる気の関係を脳科学の観点から確認できた。

脳科学で実証された金銭報酬と脳活動の関係

実験は、大学生男女28名を、1.課題の成績に応じて報酬がもらえるという約束を事前にしたグループ(報酬群)と、2.報酬の約束をしないグループ(対照群)の2つに分けて実施した。自発的に取り組める課題を行ってもらい(図表2)、金銭報酬をもらう前と、もらった後での脳活動をMRIで計測した。報酬を受け取る前と後の脳活動を調べたところ、報酬群は報酬を受け取った後に脳活動が著しく低下したのに対し、対照群は脳活動が維持されていることがわかった(図表3)。これは、報酬群の人たちが金銭を得る目的で課題を行ったことで課題自体に対する魅力が失われたことを意味している。一方で対照群は、同様に金銭を得たものの、金銭を期待することなく課題自体を楽しんでいたため、課題に対する魅力は失われなかったということになるのだ。

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