J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2012年02月号

論壇 4つの「場」アプローチで実現する社員が“動機づく”職場

組織を変えるには、そこで活動する人々の意識に働きかけ、動機づける「場」をつくり出すことが不可欠だ。組織のために、仲間のために貢献する自発的行動の動機を、いかに育てていくか。「場のマネジメント」を4つの側面から整理することが、“意識改革”から“組織改革”を実現する第一歩となる。

才木 利恵子(さいき・りえこ)氏
日本能率協会コンサルティング 経営戦略本部
1961 年生まれ。東京大学経済学部経営学科卒業後、デベロッパーでマーチャンダイザーとして勤務したのち、日本能率協会コンサルティングに入社。「経済の基盤はミクロの個人消費」という信念で、「店舗という個人消費の最前線」である小売業・サービス業のCS 向上、店舗販売力強化のコンサルティングを進めている。主な著書に、『市場から何が読めるか』日本能率協会マネジメントセンター(共著)など。

第1章 なぜ我が社の「場づくり」はうまくいかないのか

●経営にとっての「場づくり」とは何か

厳しい経営環境の中で変革を推進する企業にとって、社員の意識変革は不可欠である。戦略・組織・業務システム・人事管理システム・人材育成システムなどの経営システムを変えても、「危機感がない」「当事者意識が足りない」「一体感がない」といった社員の意識面での問題が変革を阻むからだ。

昨今、マネジメントの専門誌などでは「場づくり」による企業の意識変革事例が多く取り上げられている。たとえば、社内運動会、お祭り、創立記念パーティなどの社内行事や、サンキューカード制度(各従業員が自由に感謝メールを仲間に送り、それをもらうとポイントが貯まり各種ギフトに交換できる)、社長の全国キャラバン・現場の第一線とのランチミーティングといった事例であるこうした「場づくり」が、組織間連携強化、成果主義の浸透、新たな事業領域・付加価値創造を狙う経営計画などを実現するための組織活性化策として取り組まれている。「場」の重要性は、伊丹敬之氏の『場のマネジメント』(NTT出版/刊、1999年1月)などで提唱されている。伊丹氏は、経営からの働きかけは、目に見える「経営の手段」(戦略・組織構造・管理システム・インセンティブシステム・経営理念等の経営システム)によって行われるがそれが「意思決定」や「心理的エネルギー」となり事業行動につながるには、「場」というプロセスが不可欠であるとの考えを示している。

多くの経営者が企業の組織改革を目標にしているが、改革を“絵に描いた餅”に終わらせないためには、社員を巻き込む「場づくり」が重視されなければならないのである。

ところが、「場づくりをしているのに自社ではうまくいっていない」という担当者の悩みも多く聞かれる。その要因の多くは、「場づくり」自体が目的化してしまい、「場」に求める成果が間違っていること、組織の状況に「場」が合っていないこと、職制の行動につなげる道筋がないこと、などである。目標にしているが、改革を“絵に描いた餅”に終わらせないためには、社員を巻き込む「場づくり」が重視されなければならないのである。

ところが、「場づくりをしているのに自社ではうまくいっていない」という担当者の悩みも多く聞かれる。その要因の多くは、「場づくり」自体が目的化してしまい、「場」に求める成果が間違っていること、組織の状況に「場」が合っていないこと、職制の行動につなげる道筋がないこと、などである。

第2章 組織活性化の目的を再確認しよう

●「自分のため≒仲間のため≒会社のため」の貢献意欲の実現

組織活性化の目的は、従業員の行動を自律的なものに変える意識改革だ。私たちは、従業員が「自分のため≒仲間のため≒会社のため」という意識を持ち、仲間および会社への貢献意欲が高い状態に変わる必要があると考えている。

以前、欧米の有識者たちが競って研究した日本企業の強みも、そこにあったといえる。旧日本型人材マネジメントシステムでは、終身雇用・年功序列という人事管理システムと、企業内組合・小集団活動・マルチ教育(さまざまな部門をローテーションで回り育っていく)でつくられる「場」が、「自分のため≒仲間のため≒会社のため」という貢献意欲の醸成に役立っていた。また、現在も、従業員のモチベーションが高いといわれる企業では、仲間との一体感を醸成する施策や、会社への誇り・共感を高める施策などで貢献意欲を高める努力をしている。

●活性化の経営成果とは?

従業員の貢献意欲の高まりが行動となり、結果につながる。しかし、結果を急ぎ過ぎる取り組みは、失敗することも多い。

ダニエル・キム氏(MIT教授)による「組織の成功循環モデル」(図表1)では、行動や結果の質を高める前に、組織内の人間関係の質と、思考の質を高めるステップが必要だとされている。人間関係が良好で、お互いに認め合っているチームでは、対話を通してアイデアや助け合いの思考が生まれる。

その結果、新たな挑戦や支え合い、売上向上などの成果が表れると、さらにチームの関係性・思考の質が高まるという好循環につながる。

組織活性化は、最終的には行動や結果の質向上を狙うものである。しかしそのための施策に取り組む中では、関係の質・思考の質の高まりをしっかりと評価することも重要なのである。

第3章 組織活性化のための「場」は4つに分けられる

私たちは、組織活性化のための「場」を、以下の2軸で捉えている。

軸1:高める意欲の種類「会社への貢献意欲」か「働く仲間への貢献意欲」か。

軸2:変革のレベル

「気運をつくる」か「行動をつくる」か。すると、図表2のように「場」は4つに分類できる。

①人的ネットワークの場…仲間への貢献意欲の気運づくり(図表2の第2の場)

職制とは異なる人間関係をつくり、従業員間のネットワーク拡大や相互理解促進をめざす場。旧日本型HRMでは福利厚生を中心に運動会・社員旅行・クラブ活動・宴会などの「第2の場」がつくられていた。

②経営コミュニケーションの場…会社への貢献意欲の気運づくり(第4の場)

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