J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2012年04月号

連載 酒井穣のちょっぴり経営学 第15回 企業活動を支える営業のサイエンス

営業力の強化は、人材育成の中でもメインのテーマといっても過言ではなく、「経営(学)」としても中心に添えられるべきものである。しかし、営業の背景は企業や業種によって異なり、「これさえやればいい!」というものでもない。では、どうすればよいのか。教育の着眼点を紹介する。

酒井 穣(さかい・じょう)氏
フリービット取締役(人事担当/長期戦略リサーチ担当)。慶應義塾大学理工学部卒。TiasNimbasビジネススクールMBA首席。商社勤務の後、オランダの精密械メーカーに転職。2006年にオランダでITベンチャーを創業しCFO就任。2009年4月に帰国し現職。近著に『これからの思考の教科書』(ビジネス社)、『「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト』(光文社)がある。人材育成メルマガ『人材育成を考える』(無料)を毎週発行している。
http://www.mag2.com/m/0001127971.html

人材育成担当者として、最もその存在意義を示しやすいのが「営業力の強化」でしょう。研修や人材開発プログラムを導入して、結果として売上が高まるということ以上に、教育効果を主張できるシーンはありません。しかし、ひとくちに営業といってもその内容は多岐にわたり、「これさえ押さえておけばOK」といった理論も存在しないのが実情です。

そこで頼りになるのが、いくら営業の背景が異なっていても、いかなる会社においても売れている、売れていないという「結果」ではなくて、なぜ売れているのか、なぜ売れていないのかといった「原因」を把握することが重要だという考え方です。今回は、そうした「原因」を発見する時の着眼点を紹介します。

着眼点1:営業担当者の時間分析

使っているのか」を理解することが、そもそもの原点です。そこに問題があれば「時間の使い方」について「あるべき姿」を設定しつつ、その普及と実現に努めれば、それなりに成果が出るのは明らかでしょう。

ここで「あるべき姿」は、企業によって異なるのが当然です。とにかくテレアポをしまくることが結果につながるケースもあれば、営業マニュアルの精緻化が結果につながるケースもあるでしょう。そんな中で、自社の「あるべき姿」を導き出す一番簡単な方法は、トップの成績をたたき出す営業担当者が、どのような時間の使い方をしているのかを知ることです。

あくまでも一般論としてですが、新規顧客の獲得のために時間を使っている営業担当者のほうが、中・長期的には優秀な成績を出しやすいといわれます。その理由は、新規顧客獲得の営業は、既存顧客への営業よりも難易度が高いからです。難しいことにトライしていると、営業としてのスキルが高まりやすいというわけです

着眼点2:パイプライン分析

次は「パイプライン分析」です。営業活動とは、潜在顧客を、実際に購入してくれる顧客に変えていくための一連の活動のことですが、これには、企業によって異なるさまざまなステップが考えられると思います。大まかに表現すれば、

①潜在顧客のターゲットリスト作成

②商材を購入してくれる可能性のある見込み顧客の確定

③最終提案の提示

④受注のクロージング

の4つのステップからできています。ステップを進めていくと、それぞれのステップで「脱落」が起こります。

たとえば①のターゲットに300社をピックアップしたとします。しかし、そのターゲット顧客に商材を説明したところ、結果として100社しか商材に興味を持ってくれなかったとすれば、②の見込み顧客は100社ということになり、ここで200社が「脱落」。さらに、興味を持ってくれた100社のうち、見積もりの提出など③の最終提案を行った結果、本当に社内稟議にかけてくれるのは10社に過ぎなかったとします。ここで90社の「脱落」が起こったことになります。そして、そのうち2社しか購入してくれなかったとすれば④のクロージングでは8社が「脱落」したことになるでしょう。これを図で示すと、図表1のようになります。

この分析を、自社の個々の商材について理解することは、とても大切です。なぜなら、営業活動のどこで「脱落」が起こっているのかを知らずに、業務プロセスの見直しや研修を含めた適切な対処ができるはずもないからです。

このケースであれば、たとえばターゲットにした潜在顧客が、見込み顧客になるのは300社のうち100社ですから、3社に1社(約33%)の計算になります。次に見込み顧客に対して、最終提案まで持ち込めたのが100社のうち10社ですから、10社に1社(10%)。そして最終提案をしてからクロージングできたのは10社に2社、つまり5社に1社(20%)。情報が足りない部分もありますが、このケースにおいて営業活動の足を引っ張っているのは「見込み顧客への最終提案の持っていき方」にありそうだ、などと分析できます。ここがわかれば、たとえば見込み顧客に対する最終提案の上手な営業担当者を講師として、ロールプレイング研修などを企画すれば、それなりに業績を上げることができそうですよね。

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