J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2013年03月号

TOPIC 書籍『プレイフル・ラーニング』発売記念イベント 「Toyful Meetup」レポート 「問い」を持ち寄り、語り合い、探究する 人々が能動的にかかわる学びの場づくり

2012年12月8、9日、奈良県吉野にて書籍『プレイフル・ラーニング』(三省堂)の発売を記念して、
同書の著者、同志社女子大学上田信行教授と東京大学中原淳准教授が主催する
ワークショップイベント「Toyful Meetup(トイフル・ミートアップ)」が開催された。
同イベントには「大人の学びの場づくり」のヒントを求め、
企業の人材育成担当者や教育、人材育成に関心の高い社会人、学生総勢100名が集まった。
泊りがけで行われた濃密な2日間のイベントをレポートする。

取材・文/井上佐保子、写真提供/曽和具之

2012年12月8 日正午、普段はひっそり静かな近鉄吉野線の終点吉野駅には大勢の人の姿があった。「Toy(遊)とToi(良質の問い)に満ち溢れた2日間をつくりませんか?」こんな呼びかけに応えて、Toyful Meetupに集まった大勢の参加者たちだ。

日本に「ワークショップ」という言葉を普及させ、数々のワークショップの実践で知られる上田氏と、企業における実証的な人材育成研究を進める一方、ラーニングバーを始め、数々の新しい学びの場づくりをプロデュースする中原氏が仕掛ける学びのイベントということで、関東、近畿地方からも4、5時間かけ多くの参加者がやってきた。その中には、神戸大学、金井壽宏教授の顔も見える。

初日の会場は、宿泊場所でもある旅館「竹林院」の大広間。最初のセッションは、誰かとペアになり色紙やカラフルな布やモールなどを使った「名札づくり」。思い思いに手を動かすうち、「すてきな名札ですね。お名前はなんとお読みするんですか」などと自然にコミュニケーションが生まれ、いつの間にか参加者同士が打ち解けてしまう、上田氏ならではの仕かけだ。

13時過ぎ、ほとんどの参加者が揃ったところで、同志社女子大、上田ゼミの学生たち指導のもと、音楽に合わせてダンスの練習が始まった。初めは踊ることに戸惑う参加者も多かったが、徐々に硬い雰囲気もほぐれ、自然と笑顔も生まれ、リラックスした雰囲気に。

「ダンスや音楽は、場を温める最高のツール。ダンスが難しくても、身体を少し動かすだけで堅苦しい雰囲気が一気に和みます」(上田氏)

ディープに話して頭をディープに動かす

上田氏はオープニングで、今回実施する学びのスタイルを概説した。「今日は、Learning3.0に挑戦します。Learning1.0 は、座ってレクチャーを聞くスタイル。それも大事ですが、それだけでは頭が働かず、硬直的な学びになってしまう。そこで、身体を使って、表現して…といったワークショップ型の学びLearning2.0が生まれました。しかし、本来は頭を動かすために身体を動かしていたはずでしたが、身体を動かすことだけがフォーカスされるようになってきた傾向もあります。そこで今回は、とことん頭を動かすLearning3.0に挑戦します。山深い吉野でたくさん話をして頭をディープに動かしてください!」

続いて中原氏が今回のイベントのテーマについてこう話した。「テーマは、『Toyful Meetup(問いや探究に満ちた集まり)』です。企業では“問題や課題”について話し出すと、とかくネガティブになりがちですが、それを“いかに楽しみつつ深めるか”を実験する場と考えてください。Meetup にはダイナミックにインフォーマルに集合する、といった意味がある。つまり祭です。祭は近代まで、見るものではなく、参加するものでした。職場でもどんな場でも観客化した瞬間、やらされ感が漂い、それが問題を生んでいる気がします。そこで今日は、みんなで問いを持ち寄り、全員が乗れる船をつくり、その場でじっくり考えていきたいと思っています」

さらに、両氏に共感して参加した金井氏が「仕事柄こうした場は主催側にいるほうが多いので、今回は一参加者であるということが非常に楽しいです。今回の『Toyful』というテーマ、とても秀逸ですね。私はいい教育者もいいマネジャーも答えを教える人ではなく、『問い』の出し方が絶妙にうまい人だと思っていて、ゼミの中でも、問いかけることが私の仕事です。『Toyful』という言葉、大事にしたいですね」とコメントした。

本を対話のツールに「一行一会」

つづいて、昨年12月に発刊した書籍『プレイフル・ラーニング』(上田信行・中原淳著

三省堂)のお披露目会が始まった。この本は40年にわたる上田氏の実践研究と学習研究の歴史、そしてこれからの学びについて書かれている。

1人1冊手渡され、始まったのは「一行一会」。本の中から選んだ1行を栞型の紙に書き、それを近くの数人でシェアして語り合うワークショップだ。さらに、その数人で「問い」を導き出し、著者の2人に直接質問をぶつけた。「参加者が没頭できる活動をどうデザインするか」という問いに、上田氏は「個人ではなく環境に目を向け、夢中になれる環境をどうつくるかを考えます。たとえば、空間のしつらえを工夫したり、風船やレゴブロックなど、ツールやオブジェクトを効果的に用いれば、ポップで挑発的な学びの場をつくり出せます。また、参加者について知ることも重要です。僕が実践していることでいえば、全体を見渡し、参加者の中で『ノリが悪そう』『ちょっと苦手』という人には、先にこちらから話しかけ、味方にしておきます。これも環境づくりのコツの1つです。あと大人の場合は、はじめにその会の意味づけを話しておくことも大事ですね」と話した。さらに中原氏は「まずは参加者が持っている心理的障壁を下げてあげること。今回は名札づくりがその役割を果たしました。また、参加者がどんな興味関心を持っているのかを明らかにし、それに合わせてプログラムを臨機応変に変えていく勇気を持つことも大切です」と答えた。

会議にイノベーションを!?新しい会議を発明する

休憩をはさみ、今度は2日目に行うToyful Meetupメインセッションを準備するワークが始まった。メインセッションのテーマは「明日の会議をデザインする」だ。多くの職場で日常的に行われる“話し合いの場”である会議。ワールドカフェなど、新しい話し合いのメソッドも出てきてはいるが、会議のスタイルというのはどの会社でもほぼ変わらない。「みなさんにはグループ毎に、『問い』を深め、話し合うための会議メソッドを考え発表していただきたいと思います。誰かの作った方法ではなく、自分が作った方法で話し合う、いわば、実践会議学です」と中原氏。

さらに上田氏が続ける。「明日は、活動の場をネオミュージアム※に移します。ネオミュージアムにはスタジオや茶室、テラスなどさまざまな場所があります。いつもの会議を会議室でなくレストランでやったら、話の内容も変わってきますよね。その場所の特性を生かした方法を考えてください」「 Toyful Meetup」の大きな特徴は、参加者自らが活動を作りあげる参加型イベントであることだ。参加者は数名ずつ16グループに分かれて活動を開始。ほとんどが初対面だったが、各グループとも「会議って、会議室で、苦虫をつぶしたような顔で意思決定するっていうイメージ」「新しい発想が生まれる会議ってどんな会議だろう?」などと、活発な話し合いが続いた。

「問い」を持ち寄る「Toyful30」

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