J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2013年03月号

論壇 グローバル化への学習意欲と効果が高まらないのには理由がある 本当に効くグローバル研修の 具体的アプローチとは


坂本 欣也氏(さかもと・きんや)
グローバル人財育成・組織開発のコンサルティングおよび教育活動において、20年の経験を持つ。製造、総合保険、重工業、製薬、航空他
多数の企業にて導入の実績有。グローバルビジネスでの実績をもとに、アメリカ・中国・インドで現地法人社員向け教育に携わり、日本人社員との融合研修を担当。日本国内においては、「日本企業は多文化組織」をコンセプトに、日本人同士の異文化コミュニケーション(部門、役職、世代、個人間など)の切り口から、人と組織の活性化を多数手がけている。

1一人の人間として「グローバル」と向き合う

国内市場の縮小が見込まれる中、企業にとってのグローバル化は待ったなしの状況であり、グローバル化に対応できる「人材の育成」「組織のグローバル化」は重要な経営課題となっている。私は1992 年から20 年間グローバル人材育成の現場で仕事をしているが、グローバル人材育成(当時は「国際人育成」)はその当時からずっと経営課題の1つとしていわれ続けてきた。もっといえば、日本人の国際感覚や英語力についての課題は、開国を迫られ世界と向き合うようになった明治維新から始まる永遠のテーマともいえるのではないだろうか。

しかしながら、この積年の課題が企業の経営課題リストから一向に外されないばかりか、人事担当者から「教育を実施しても、なかなか効果が上がらない」「グローバル化や英語への意識が高まらない」という焦りが込められた言葉が、最近さらに多くなってきているのを感じる。そして、そもそも「なぜ効果が上がらないのか?」の原因がつかめない。ゆえに具体策として「何をすれば良いのかわからない」という根本的悩みが解消されていないことも感じる。

筆者は、グローバル化に対するマインドセット、モチベーションアップを目的としたプログラムを開発、実施してきた。このプログラムは、単なる異文化への気づきやコミュニケーション力を高めるものではなく、「自分自身が一人の人間として、いかにグローバル化と向き合うのか、いかに人々と団結し個々の能力が発揮される組織をつくり、グローバル社会に貢献していくのか」を、自己や他者と対話する中で深く考える。いわば自らの「グローバル・ビジョン」をつくり上げ、自己力と実践力を鍛える、新しい形のプログラムである。

私がこのプログラムでお伝えするメインメッセージ、そして私自身の「ビジョン」は以下の通りである。「 今日本の社会が、日本の組織が、日本人同士が、『異文化化』してきている。その結果、事業部間、部署間、役職間、世代間、個人間の連携やコミュニケーションがとりづらくなっている。これではグローバルに出ていく前に足元が危うい状態だ。また現実にグローバル化の見えない阻害要因にもなっている。今こそ、日本人同士がコミュニケーションを良好化し、一致団結し元気にならねばならない。それがグローバルで成功する、強い組織を創る基礎となる」―本稿では、その実際の教育やコンサルティングの現場で聞こえてきた生々しい声を紹介しながら、企業におけるグローバル人材育成が困難とされる根本原因とその解決方法を探っていきたい。

2効果の上がらない根本原因とは

①グローバルが他人事

第一の原因は、研修参加者がグローバル化や英語学習に対しての必要性や緊急性を「自分事」として感じておらず、「他人事」のような感覚で捉えていることである。つまり、グローバルを自分に直接関係のない遠くの世界の話として捉えている。グローバル企業といわれている大手企業でも、英語や異文化と直近で接して仕事をしている人は一部に限られており、大半は日常業務をするうえでその必要性はほぼ無いというケースが多い。そんな環境の中、上司や人事部に指名されて英語研修に連れて来られても、実感が湧かない。「何のために英語を勉強するのか?」は頭ではわかっているが、腹落ちできておらず、ただ研修に出てきているだけという受講者も少なくない。明確な目的意識をつけないまま、教育を施している結果といえる。

②ゴールイメージが不明確

第二の原因は、効果が上がった状態の理想のゴールイメージが明確化、統一化されていないことである。理想のグローバル人材、グローバル組織の状態が、バランスの取れた状態でイメージできていない場合が多い。単純化すると「狭くて高い」イメージが主流である。「狭さ」とは、「グローバル人材=英語ができる人」というマインドセット、思考の枠で捉えていること。このように捉える方がいまだに多いと、教育やコンサルティングの現場で感じる。そして「高さ」とは、グローバル人材を過度に凄いもの、自分には到達できない特別な領域だと、不必要にハードルを上げていること。この「狭くて高い」幻想イメージ、そしてゴールイメージ自体が不明確でモヤモヤしていることが、「自分にはできない」と初めからやる気を削ぎ落している原因にもなっている。例えるなら、雲のかかった高い山への登山のようなものである。

③組織風土づくりの不足

第三の原因は、人材育成に対して、グローバル化に組織を挙げて取り組むという「組織風土づくり」が伴っていないことである。せっかく研修で個人のモチベーションや能力が上がっても、日常に戻ると熱が冷め忘れてしまうことが多い。特に語学学習は、この傾向が強く三日坊主になりやすい。それに陥らせないためには、啓発し合える仲間、応援してもらえる仲間が必要となる。

まず頼りになる仲間は、同じ研修を受けることとなる参加者同士。もう1つが、職場組織の仲間である。つまり個人での取り組みではなく、組織的取り組みに巻き込んでいくことがカギとなる。しかし、効果が上がらないケースでは、組織的な取り組みになっておらず、個人の責任や活動範囲にとどまっている場合が多い。

3グローバル化を推進する具体的教育アプローチ

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